静岡はさかな
静岡県に住んでから、なんだか魚が美味いなと思っていた。
刺身はけっきょく東京が美味い、みたいな話はもういいのだ。こちらは日常的にスーパーでてきとうな刺身を買ってきたとき、それを食べて目がカッ!と開くかどうかの話をしているのである。
静岡では開く。開かない場合もあるが、それはこちら側の体調や気分が乗っていないときだ。
そんな魚の美味い静岡の象徴ともいえる場所が焼津にある。焼津さかなセンターである。
さかなセンターは焼津をぶらぶらしている時にたまたま見つけた。
焼津市は僕の住む静岡市の隣で、原付で30分くらいで来ることができる。このくらいの距離の遠征が、僕はそもそも好きなのである。
さあ「さかなセンター」である。外観はすこしうらぶれた工場のようにも見えるのだが、臆せずに入ってほしい。
中はさながらテーマパークだ。
ディズニーランドにいる犬とかリスとか、ネズミもそうだが、あれら動物たちを全部さかなに変えると焼津さかなセンターになると思ってほしい。
かなりわかりにくいたとえをした自覚はあるが、ここで引き下がる気もディズニーファンに謝る気もない。本来の意味でのディズニーシーがここにある。
どうだろう、場内をすこし歩くだけで網膜に焼きついた刺身の残像が消えないだろう。
ゲームセンターが主にさかな
いったんクールダウンするため、場内のゲームセンターに立ち寄ったらこれまたとんでもなかった。
すべてのゲームでテーマが魚。取れる商品がなにしろぜんぶ魚なのだ。さすがさかなセンター、徹底している。
先にディズニーを例に挙げて反感を買ったが、あれは夢の国を完全な形で作り上げたいわばフィクションである。対して焼津さかなセンターは、魚だけが集まった魚の施設なので、これはつまり竜宮城そのものなのである。
ゲームセンターで一息ついたらさかなセンターに戻ってきてほしい。目の前には「まぐろ街道」と書かれた大通りが待ち構えている。
まぐろ街道にはもちろんまぐろが売られまくっている。買って帰ろうか悩んだが、一人で食べきれる感じでもないので、人が集まる時に必ずまた来ようと誓って自分を制した。
その場でも食べられます
ただ、さかなセンターは買い物だけではなく、その場で食べられるお店もたくさんある。
こちらまぐろ食堂もそのうちの一つ。
まぐろ食堂はかなりオープンな店構えで、ラティスで囲った範囲がいちおう店内ですよといった様子だった。椅子はなく立ち食い形式。注文は入口にある注文票に記入して自分でレジまで持って行く。
サービスのお茶を飲みながら(このお茶がまた「さすが静岡!」という美味さなのだ)場内の喧噪を浴びつつ待っていると、僕の番号が呼ばれた。注文したのは天然のミナミマグロの大トロにぎりである。
僕はどちらかというと魚より肉、肉より野菜な食生活を送っているのだが、そんな人生を根本からやり直したくなる体験だった。
この大トロ、口に入れるとしゃりがふわっとほどけ、そのあとにトロがねっとりと溶ける。なんだこの甘さ。トロがどうしてトロと呼ばれるのか、はじめて身をもってわかったような気がした。
さかなセンターでさかな友だちに会う
目がさかな(ハート)になったままさかなセンターを出ると、僕の原付のとなりにピカピカのカブがとまっていた。走行距離は僕のとほとんど同じなのに、僕のサビたカブとは大違いなのだ。どんな人が乗っているんだろうと思っていたら、まぐろを持ったおとうさんがやってきた。
「にいちゃん、カブ磨いてやってくれや」
すみません!
「おれの見てこれ、かっこいいよな!」
おとうさんはカブを3台所有し、毎日のように乗り換えては磨き上げているのだとか。
「500キロでオイル替えるよ。G2(たぶんいいオイル)」
それはやばいっすね!
そのまま意気投合して一緒にもう一度さかなセンターにもどり、カブの話を挟みながら二人でまぐろ街道を通ってまた一周してきた。おとうさんのおすすめは僕が買おうか迷って買わなかったかつおのなまり節。
「こうやってちょびちょび削ってよ、富士屋(スーパー)に売ってるマヨネーズ付けて食べてみて。たまらんぜ。」
おとうさん、話すときに顔がむちゃくちゃ近いのだが、それがまったく嫌な感じしない。おとうさんとは来週、おなじ場所で会うことになっているので、それまでにカブを磨いておかないといけない。
さかなセンターは、いい
焼津さかなセンターはいい。前に行ったUSJ、あれは楽しかったな、とたまに思い出すことがあるのだけれど、この感じでいくと焼津さかなセンターもそうなる可能性が高い。
いや、来週も行くから思い出ではなく日常になるのだろうか。どちらにせよまた行くのが楽しみです。


