「サッカーの服?」
この格好を子どもに見せてみた。
筆者(トルー):どう?
子ども:サッカー?
トルー:いや、何もしない
子ども:サッカーの服?
トルー:ううん。普段着だよ
子ども:ただの服? なんかスポーツっぽいけど
トルー:スポーツっぽいよね
子ども:私も今日、長い靴下履いたよ
トルー:ああ、履いてたね!
子ども:一緒じゃん
このように、子ども目線からでもスポーツっぽいし、長い靴下にも目が行くことが分かった。
以前、テレビでバレーボールを見ていたら選手のユニフォームに「イモトのWiFi」と書いてあってポカンとしてしまったことがある。
それがサービス名で、スポンサーだからロゴが入っているのだ、と頭では理解できても、バレーボールと関係のないことが書いてある違和感がおもしろかった。
よく見ると、代表選手のユニフォームには色んなロゴが入っている。むしろスポーツと無関係に思えるマークや言葉こそが、ユニフォームを代表選手っぽくしているんじゃないか。
スポーツらしくない、ダメな心の声でユニフォームを作ってみよう。代表選手になるだろうか。それともただのダメな人になるだろうか。
例えばこちら。
代表選手が絶対に言わないであろう言葉。一周回って「(コートに)帰りたい」っていうポジティブな意味合いでなら言うかもしれない。
違うぞ。家だ。コートはしんどい。家に帰りたいんだ。家に帰って何をするでもなく横になりたいんだ。
斜体にして躍動感を付けて、線の太さも大げさにしてメリハリをつけた。ロゴっぽいと思う。
帰りたさがスポーティーになった。クラウチングスタートで帰りそう。
こんな感じでスポーツマンらしくないダメな心の声をロゴにしていった。
集まるとダメさが際立ってきた。「しっかりしろ!」と背中を叩きたくなる。
気に入っているロゴは、右下のkaeritaiと、左真ん中のSABORIです。頭文字のアルファベットを使うと企業のロゴっぽくなる。最初に紹介した「帰りたい」も好きだ。
こういうのって、スポンサー料によってロゴの場所が決まるのだろう。今回は目立って欲しいロゴを良い場所に貼った。気持ちの強さがスポンサー料だ。
できたユニフォームがこちらである。
遠目にはスポンサーがたくさんいるユニフォームに見えるが、寄るとただダメなことが書いてある。このダメな人はなぜ仁王立ちしているんだ。
これを着た自分を見て「服が自分の意思を超えた」と思った。サボりたいのは本当だが、何もここまでサボりたくはない。
ちょっと寄り道するぐらいのサボりで良かったのだ。この人はもう、何を言っても家から出てこなさそうだ。「yatterareruka」とか、そんなこと言うなよ、と思う。
服にある文字のパワーはすごい。全身からメッセージが流れっぱなしだ。閉める蛇口が見つからない。
なぜなら僕はスポーツ選手ではないからだ。「サボりたい気持ちを服に貼った、代表選手っぽい何者か」なのだ。
スポーツをするのは違う、ということだけははっきりしているが、代わりにすることが見つからない。
立派なサボりだ。しかし代表選手っぽいので、自分のプレーを確認したり、体づくりのために栄養補給しているように見える。
振り返ると、公園をゆっくり散歩しているご婦人二人組がいて、手にはアイスのパルムの箱を持っていた。とても暑い日で、箱の中がすごく心配になったが声は掛けられなかった。
激しい練習の、束の間の休憩に見える。プレーができる芝や天候への感謝の気持ちも読み取れる。
でも違うんだ。眠いから寝たんだ。なんの練習もしていない。
徐々に自分が、大勢のサボりたい気持ちを一身に背負っているような気持ちになり、そのプレッシャーに耐えられなくなり慌てて片付けて家に帰った。
ダメな心の声でも代表選手のようなユニフォームは作れる。それどころか、ダメな心の代表としての自覚まで芽生える。
この格好を子どもに見せてみた。
筆者(トルー):どう?
子ども:サッカー?
トルー:いや、何もしない
子ども:サッカーの服?
トルー:ううん。普段着だよ
子ども:ただの服? なんかスポーツっぽいけど
トルー:スポーツっぽいよね
子ども:私も今日、長い靴下履いたよ
トルー:ああ、履いてたね!
子ども:一緒じゃん
このように、子ども目線からでもスポーツっぽいし、長い靴下にも目が行くことが分かった。
ささやかなおまけ
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