東京地下鉄の全路線に乗って東京を塗りつぶす
去年書かせて頂いた記事「綾瀬市の全地区を歩いたら見えてきたこと」において使用した、テクテクライフという街区塗りつぶしアプリを現在も続けている。
私は旅行が好きということもあり、行った場所の記録がてら日本各地の街区を塗りつぶしては悦に浸っている。
綾瀬市はすべて歩いて塗ったのだが、さすがに徒歩のみだと時間がかかりすぎる。鉄道やバスなどの公共交通機関、自転車や自家用車などで塗っているユーザーが大半だろう。実際、アプリ内には鉄道の利用を推奨するかのように駅のスタンプラリー機能がある。
というワケで現在、私は主にカブ(原付)と鉄道で塗り進めているのだが、そこで考えた。縦横無尽に張り巡らされている東京地下鉄の全路線に乗れば、東京の中心部を一気に塗りつぶすことができるのではないだろうか。
……ちょっとまて、GPSを利用するのに地下鉄とはどういうことだ?と疑問に思われる方がいるかもしれない。GPSは衛星の信号を受信して位置を割り出すものだ。地下では信号を受信することができない。
しかしながらスマホのGPSは衛星の信号のみならず、携帯電波の基地局やWi-Fiアクセスポイントの位置情報を組み合わせて使用している。それでも地下では正確な位置を特定することは難しく、場合によっては基地局などの位置情報に引っ張られ、スマホのGPSは“あらぶる”のである。
地下鉄だとGPSの位置情報があらぶるこの特性を利用し、東京地下鉄の全路線に乗ることであわよくば線路から離れた街区まで丸ごと塗ってしまおうという魂胆である。
実際に訪れた場所でないのに塗るなどけしからんという人もいるかもしれないが、私はこのようなウラ技的テクニックも積極的に利用する派だ。なりふり構わずやっていかないと、いつまでたっても塗り進めることなどできやしない。それだけ日本は広いのだ。
始発で出発したものの終電までに終わらず
東京の地下鉄は東京メトロが9路線、都営地下鉄が4路線の計13路線である。おあつらえ向きに東京メトロと都営地下鉄の両方に乗ることができる一日乗車券が販売されているので、これを利用した。
乗り継ぐルートは次の通りである。私は神奈川県中央部の綾瀬市に住んでいるので、東急田園都市線で行ける渋谷を始点、小田急線で帰れる代々木上原を終点とした。
- 副都心線 渋谷→和光市→池袋
- 丸ノ内線 池袋→荻窪→方南町→中野坂上
- 大江戸線 中野坂上→光が丘→<環状一周>→新宿
- 新宿線 新宿→本八幡→住吉
- 半蔵門線 住吉→押上→渋谷
- 銀座線 渋谷→浅草
- 浅草瀬 浅草→押上→西馬込→三田
- 三田線 三田→西高島平→目黒
- 南北線 目黒→赤羽岩淵→飯田橋
- 東西線 飯田橋→西船橋→中野→飯田橋
- 有楽町線 飯田橋→池袋→新木場→有楽町
- 日比谷線 日比谷(有楽町)→中目黒→北千住
- 千代田線 北千住→北綾瀬→代々木上原
改めて見ると、端から端まで往復する路線やほぼ往復の路線もあり、あまり効率が良いとはいえないルートである。東京地下鉄の全制覇に挑戦する際には、より効率的なルートを考えていただきたい。
さて、当日は5時前に家を出て始発に乗り、渋谷に着いたのは6時半過ぎであった。早速、副都心線に乗って和光市駅に到着したのだが、私は「せっかく来たのだから」とわざわざ駅を出てコンビニで飲み物を買っていた。さらには間違えて東武東上線に乗ろうとして時間をロスしたものの、私はまだまだ余裕だろうとタカをくくっていた。
「あれ、ひょっとして思っていた以上に時間がかかる?」と気づいたのは、副都心線に続いて丸ノ内線と大江戸線を乗り終え、新宿線で本八幡駅に着いた頃だ。
東京地下鉄というと東京の中心部にまとまっているイメージがあったのだが、副都心線・有楽町線の和光市駅や新宿線の本八幡駅のように、都外や郊外まで伸びている路線が思いのほか多いのだ。
本八幡の時点で既に12時半を過ぎており、6時間経ってもまだ4路線しか乗れておらず、とても夕方までには終わりそうにないと少し焦り始めていた。……が、まだ終電までには終わるだろうと思っていた。
極めて複雑に張り巡らされた東京地下鉄は、乗り換えのルートも複雑だ。駅によってはホーム間の距離が長かったり、迷路のような通路を進んでいくこともあって時間がかかった。
私の終電は小田急線の新宿23時34分発である。これは時間がヤバそうだと路線検索アプリで調べたところ、既に残りの路線すべてに乗ることは不可能だということが判明。
予定だと11路線目の有楽町線は飯田橋→池袋→新木場→有楽町であったが、飯田橋→新木場→池袋に変更して新宿から帰宅の途についた。残り2路線を乗らずして無念の敗退である。
帰ってから調べてみると、東京地下鉄13路線の総延長は約300km。東京から西へ行けば名古屋の手前、北へ行けば仙台の手前という距離である。さらに駅間の距離が短い上に、ほぼ各駅停車なのだから、そりゃ時間がかかって当然というものだ。体感的にはローカル線で大阪へ行くよりずっと疲れた。
なお、前提として終点駅では改札を出ずに即折り返しに乗る、乗り換え駅では迷わずスムーズに、という条件のもと今回のルートを検証すると、渋谷駅6時41分発で代々木上原駅23時10分着と、理論上では終電にもなんとか間に合う計算であった。
東京地下鉄の全路線を乗るには、私のような東京まで1時間以上かかる人間にとっては宿泊も覚悟しないとキツいスケジュール、都民であっても丸一日がかりの大仕事である。
東京を塗りまくれたことは満足
残念ながら私は一日で11路線までしか乗ることはできなかったものの、当初の目的であった東京の街区をできるだけ塗りつぶすという目的は達成できた。GPSが思っていた以上にあらぶってくれたのだ。
通常は立ち入ることができない皇居であるが、その周囲を数多くの地下鉄が通っている。全路線に乗ればGPSのあらぶりで塗ることができるだろうと期待していただけに、予想通りの結果でニンマリである。
副都心線は特に地下深くを通る路線のため、GPSがまったく機能していない(代わりにあさっての場所が塗られていた)。まぁ、これも予想通りではある。
しかしながら3路線で通ったはずの日本橋駅周辺がまるでエアポケットのように塗り残されているのは意外であった。
まったくもって、地下鉄におけるGPSの挙動は不思議なものである。