もはや遠い記憶
インターネットを徘徊していて、偶然に気になるものを見つけました。
「牛レバーハム」という聞き慣れない名前の商品なんですが、その見た目がもう完全に、懐かしの「レバ刺し」なんです。
かつては焼肉店や居酒屋などで普通に食べることのできた、牛や豚のレバ刺し。食品衛生法に基づき、2012年から牛、2015年から豚の、生食用として販売や提供が禁止され、幻の存在となりました。
僕も大好きだったので、当時はその状況に絶望していたのですが、考えてみれば、そもそも食中毒などの危険性が高めの食材。当然といえば当然だなと思うようになり、いまやすっかりその存在を忘れてしまっていたくらいです。
ところが! その生レバーハムの写真を見た時に、どきりとしたんですよね。うわ、そうそう、こんなだった、レバ刺しって。そして同時に、ごくりと鳴ったんですよね。のどが。
サイトの説明を読み、間違いなく安全な商品であるらしいことを確認し、さっそく購入してみました。
手作りハムの老舗が手がけた商品
さて、いきなり情報量が増えてしまって面目ないですが、牛レバーハムの他にも気になる商品があったので、通販サイトのラインナップのなかから、4種類を買ってみました。なかには、同じく販売提供が禁止されている「牛ユッケ」を再現した商品までありますよね。
製造販売しているのは、手作りハム専門の老舗「Meフードシステム」。その製品のなかに「さしみ〜と」というブランドがあり、どれも食肉加工品でありながら、“生肉感”があるのが特徴のよう。
さしみ〜との詳細を公式サイトから引用すると、
「さしみ~と」とは、限りなく生に近い触感を持った製品で、塩と亜硝酸のみを 使った添加物一切無しのハム製品の総称です。
「さしみーと」のレバーは2段階の殺菌工程を踏んだ、安心・安全に食べられる加熱 食肉製品です。
第1の工程は、手作りハムの技術である「塩せき」でレバーを加工。独特の臭みが消え、ハム特有の「コシ」が生まれます。
さらに、厚生労働省が定めた低温殺菌(中心温度63度30分間加熱)を施します。
この2段階の工程により、歯ごたえを保ったまま安全性とうまみを最大限に高める ことが可能となりました。
ということになるようです。
端的に言えば「信頼と実績のある専門業者が、安全性をじゅうぶんに考慮して作った、基準をクリアした商品」ということでしょうか。
レバー&ユッケ晩酌
ではでは、ひととおり前置きは終わりましたので、実際に味見していってみましょう!
まずは当然「牛レバーハム」から。内容量は50gで、販売価格は税込み819円。
解凍したものをまな板の上に出してみると……
え!? これ、ハムなの? ど、どう見てもレバ刺しなんですけど……合法の品とわかっていても、なんだかドキドキするんですけど……。いいんだよね? 食べちゃって。いいって書いてあったもんね。何度も何度も確認したもんね。しかし、いや〜、なんだか手が震えるぞ。
おずおずと包丁を当ててみると、そのサクッとした手ごたえに、一気に記憶がよみがえります。そうだったそうだった! まだ食べてないけど思い出した。新鮮な牛のレバ刺しって、まずこのサクッと軽快な食感があって、それから徐々に口のなかでとろけていくんだった。
さて、せっかくなので今日は、とことん悪い遊びをしてしまいましょう。レバーと一緒に、ユッケも開けちゃえ!
内容量は、肉が50gにたれが15g。価格は819円。これまた、見た目はユッケとしか言いようがありません……。
では、いよいよ牛レバ&ユッケ晩酌といきますか〜。
ごらんください。この、とても令和の日本とは思えない卓上の光景。くれぐれも、合法ですからね?
まずはレバーから。
ゆっくりと口へ運び、さくりとした歯ごたえを感じた後、もぐもぐもぐと味わってみる。その瞬間、10年以上ぶりの感覚が、脳内にぶわぁっと広がります。あ、これもう、完全にレバ刺しだ! これだこれだ、あのころ食べてた!
あえて脂肪の多すぎない、豊かな牧草で育ったオーストラリア牛にこだわったという牛レバーはとろりと甘く、そして、くさみではなくて牛レバー独特のクセというか風味がある。それが、あまりにも懐かしうまい。
これ、もはや“擬似タイムマシーン”ですよ。すかさずビールをぐいっとやったら、なんだかセンチメンタルな気持ちにすらなってきてしまいました。
ユッケはまぁ、牛肉をレアに調理することによって、似たものは作れますからね。レバーほどの懐かしさはないんですが、それにしてもうまい。
こっちも完全に、味はユッケそのものです。
さて、ここからが本番とも言えるゾーン。レバ刺しといえば究極は「ごま油&塩」じゃないですか。あんなに合う食材と味つけの組み合わせって、なかなかないってレベルですよね。そこで、お皿に残ったレバーにごま油と塩を思いきってかけてしまいましょう。
泣く子も黙るこの光景。そうそう、ごま油をまとったレバーの表面の塩が、時間の経過とともに少しずつ溶けだして、その融合感といったらないんだよな。
こちらも、うやうやしくいただいてみると……もはや、なにも言葉を発したくないっす…… 僕は今、夢でも見てるんでしょうか……。