ラムネのボトルでサワーを飲む
どう感じるか分からないものを飲み比べたが、絶対においしいと分かるものもひとつだけ飲んでいた。絶対においしいから。
予想通りすごくおいしい。甘酸っぱさがラムネを想起させる味わいで、みんな普通のラムネを飲む中で一人だけ隠れてお酒を飲んでる気持ちになった。
子どもとプールに行った帰り道、お祭りの屋台が出ているのを見た。大きな水を張った桶にラムネが浮かんでおり、子どもが飲みたがった。
通りかかっただけの屋台なので、何となく消極的だった僕は「スーパーでサイダー買った方が安いよ」とあしらおうとしたが、どうしても飲みたいと言って聞かなかった。
「今日のおやつ、ラムネってことでいいの?」と聞いたら「構わない」と言う。
そこまで言い合って、ラムネの独特の魅力に合点がいった。
同じ甘い炭酸水でも、ラムネの入れ物で飲むとおいしいのだ。実際、満足そうに飲んでいた。
あの入れ物で、他の飲み物の魅力も引き出してもらおう。
とりあえず、僕もラムネを飲んでみる。
ガラスのビンの印象があるけど、お店や屋台で見かけるのはプラスチックのボトルだ。中にはちゃんとビー玉が入っている。
炭酸の刺激の爽やかさが最大になるような、ちょうどいい量が流れてきた。実際の温度より冷たく感じたかもしれない。
これより少ないと物足りないし、多いと野暮、という感じがする。
グビグビ飲むのとは違う良さがある。おいしいな。
子どもが「ビー玉取るから捨てないでおいて」と言うからとってある。
では、そのボトルに別の飲み物を入れてみよう。
洗って乾かしておいたものに、じょうごで水を入れる。
「カラン」と飲む。
ちょうどいい太さの水が、喉に流れ込んできた。川の上流みたいな静かな流れがボトルから口、喉にかけて出来上がってサラサラと流れている感じ。
飲み終えて「カラン」と鳴るのがししおどしみたいだった。川の上流に小屋があって、川の流れを使ったししおどしがあるのだ。小屋でピザを焼こう。川のおいしい水を使った生地のピザ。
何だっけ。水だ。
おいしかった。炭酸が無いのも気にならない。
このボトル、一定の量流れてくる特徴が分かってきたが、その量がエナジードリンクを飲むにはちょっと多い。
だからすごく濃いし「飲まされている」感じがする。自分の意思でチビチビ飲むより目が覚めるのだ。水の時と全然違う。
飲み終えてビー玉が「カラン」と鳴るのも、覚醒させる処理が完了した合図みたいで怖い。催眠術の逆、覚醒術である。何度も繰り返すとビー玉の音だけで覚醒するようになる。そしてビー玉工場で夜通し働かされるのだ。
覚醒した頭でこんなどうでもいいことを考えた。覚醒しているのに暇。
これがすごくおいしかった。流れてくる液体の量が、アイスコーヒーに合っている。
冷たく感じるのも嬉しい。口にあまり触れずに喉まで流れてくるからかな、とこの時気がついた。
ストローで飲むのとも違うのだ。ペットボトルに口を付けずに、上を向いて流し込むような飲み方があるけど、あれを無理なくやっているような感じ。舌の根本と喉で感じるコーヒーの苦味とコクがあった。
友達とコンビニに行って、人が買った変な味のコーラを「ちょっとちょうだい」と言って飲む時だ。昔、シソの味のコーラとかありましたね。
ここまでやると予想できるようになってくる。そう、たくさん流れてきて「ッカ〜!」となり、すごく酔う。
チビチビ飲みたいのにある程度傾けないとビー玉が動かず、酒が「んだー」と喉に流れてくる。飲まされる酒だ。アルコールハラスメントボトル。
メモに「カラン、だってさ」と書いてあった。飲んだ刺激に対する音にしては間抜けに聞こえておもしろかったのだ。
お祭りでお酒が配られて、みんなでグイッと飲むような時、こんな喉の感触だったかもなと思い出した。
お湯を沸かしてパックで出汁をとる。少し冷まして洗ったボトルに入れた。
なんて安心感。
水を飲んだ時は川の上流だと思ったが、あったかい出汁はきれいな温泉がトロトロ流れているみたいだった。
出汁を飲む時って味を感じようと一生懸命になるが、このボトルで飲むと味より流れの感触が前に来て「あるだけでなんかいいですね」という気持ちになる。温泉なんてあればあるだけでいいですからね。
ホテルにチェックインする時、温泉があることを初めて知って戸惑いながら喜ぶやつだ。「あって困るもんじゃないから」「あればあるだけ嬉しいから」そう、それだ。
他の飲み物より流れが体の隅々まで通っているのを感じた。コーヒーやお酒を飲んだ後だから「染みた」のかもしれない。とにかくすごく良かった。
味の濃淡や刺激の有無が様々な飲み物を飲んだが、どれもおもしろくておいしかった。
一定の量がダーっと喉まで流れてくるので、普段よりも口の奥の方で色んなことを感じるようだった。
そして川の上流とかホテルの温泉とか、鬱陶しいくらい情景を思い描くようになる。ラムネっていう飲み物が「夏休み」や「幼少期」という情景とセットで脳にインプットされているからだろう。
飲み物を変えると情景も変わる。
どう感じるか分からないものを飲み比べたが、絶対においしいと分かるものもひとつだけ飲んでいた。絶対においしいから。
予想通りすごくおいしい。甘酸っぱさがラムネを想起させる味わいで、みんな普通のラムネを飲む中で一人だけ隠れてお酒を飲んでる気持ちになった。
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