養生テープがブランコに乗っている
訪れたのは神田にあるダイヤテックス株式会社。会議室に通されると、既にたくさんの養生テープがスタンバイしていた。
そもそも僕がダイヤテックス社を知ったのは、たまたまXに流れてきたポストを見かけたのがきっかけだった。
養生テープがブランコに乗っている……?
どういうことかと思ったら、養生テープのLINEスタンプを出しているという。えっ?養生テープのLINEスタンプ……?
調べてみると、ダイヤテックス社の養生テープ「パイオランテープ」は、ポリエチレンクロス養生テープの国内市場ではトップシェアとのこと。こんなに親しみやすいトップがあろうか。
というわけで、改めて養生テープのことを教えてください!と取材を申し込んだところ、SNS担当の方にお話を聞けることになったのだった。
そもそも「養生テープ」という存在を知ったのは、大人になってからの気がするのだ。
子どものころ実家にあったテープといえば、ガムテープやセロハンテープ、布テープ、ビニールテープといったところ。養生テープが一般家庭にまで浸透したのって、最近じゃないですか……?
担当者さん そうですね。パイオランテープも以前は「建築現場などでプロが使う専門資材」という立ち位置でした。ホームセンターで一般の方が手に取りやすくなったのは、ここ10年ぐらいではないでしょうか。
「数年前の台風がひとつのきっかけだと思います」と担当者さんはいう。
2018年から2020年にかけて、3年連続で大型の台風が本州に接近・上陸したことがあった。大阪で強風が吹いて車が横転したり、千葉県一帯が停電したりしたときだ。
そのときテレビのニュースで、「窓ガラスに養生テープを貼ると、強風でガラスが割れたときに破片が飛び散らず、あとでテープを剥がすのも楽」と紹介されたのだそう。
担当者さん テレビで取り上げられたことでホームセンターから養生テープが消え、出荷数量が一時的に増えました。それまで、養生テープは「塗装」などの棚に置かれていたんですが、これをきっかけにテープ棚に占める養生テープの割合が多くなっていったイメージですね。
手で切れるし、貼ってもキレイに剥がせる。そんな養生テープの便利さが、台風をきっかけに世間に“見つかった“。
現在、ダイヤテックス社の養生テープ製品の年間出荷量は、50mm幅に換算すると地球12周分もの長さになるという。約48万キロ。果てしない。
養生テープを貼ってはいけない場所
養生テープはその名の通り、「養生」に使われるテープだ。
日本国語大辞典の「養生」の項には、「運搬や作業の際に、内装を汚損しないように、完成部分を布や紙、ベニヤ板などで覆って保護すること」とある。
一時的に保護するために使われるので、貼ったあときれいに剥がれることが大事。でも他のテープは剥がすとだいたいベタベタしちゃうもの。この違いはどこにあるんですか?
担当者さん 一般的なクラフトテープや布テープは「ゴム系粘着剤」が使われます。ゴム系粘着剤のテープは初期粘着力が高いので、ベタベタしてしまうんです。養生テープは「アクリル系粘着剤」なんですよ。
初期粘着力が高いゴム系は、凸凹面でもよく貼り付く一方、ベタベタ感も強い。
対して、アクリル系は初期粘着力がそれほど高くないが、耐熱性や耐候性に優れているので、屋外や高温環境での使用に適しているそう。
ということはアクリル系の養生テープのほうが、外で使うのに向いているってことなんですね! バンバン貼っていきましょう!
……と思うが、担当者さんは「だからといって万能ってわけでもないんですよ」と言う。
担当者さん たとえば先ほど「台風のときガラス窓に貼る」という話がありましたよね。養生テープは紫外線で粘着剤が劣化しやすいので、貼りっぱなしにすると、剥がしたときに糊が残ってしまうんです。
「来週も台風が来るみたいだし」と貼りっぱなしにしておくと、台風一過の元気な太陽が養生テープに紫外線をバンバン当ててしまうのだ。面倒くさがらずに毎回剥がしたほうがいい。
他に貼ってはいけない場所はありますか?と聞いてみると、これが結構あるのだ。
・大理石
・無垢材
・壁紙 ……etc
たとえば塗装されていない木材(無垢材)は、粘着剤が染みこんでしまうので、テープを剥がそうとすると木ごと剥がれてしまうそう。
きれいに剥がれるからと気軽に貼ってしまいそうになるが、注意したほうがいいところもあるんですね。
すべての原点は「細い糸」
ここでお知らせなのだけど、そもそもダイヤテックス社は養生テープ専門の会社ではない。
会社は1962年(昭和37年)創業で、養生テープを事業化したのは1988年(昭和63年)と、だいぶ後になってから。
では本来は何の会社なのかというと、事業の根幹にあるのは樹脂製の細い糸(フラットヤーン)である。
このフラットヤーンをスタート地点にして、農業資材などの製造販売を手がけており、養生テープはあくまでその一部なのだ。以前はブルーシートや人工芝なども作っていたという。
養生テープは、フラットヤーンをタテ糸ヨコ糸としてシートを織り、それをラミネート加工したものに粘着剤を塗って作っている。
元が細い糸だから、手で簡単に切れるわけだ。「当社の養生テープはタテ糸とヨコ糸の太さを変えてあるので、幅方向には切れても、縦方向には切れにくい仕様です」と担当者さん。そうなんだ!
担当者さん 当社はフラットヤーンの製造工場を国内に持っており、織ったり、ラミネート加工をしたり、糊付けをしたりする工場も、すべてひとつの敷地内にあります。養生テープについても、糸から一貫生産をしているのが強みですね。
工場ではテープ幅のカットまで行っているので、こんな幅広な養生テープも短期間で出荷できてしまう。
担当者さん テープ幅は最大1000mmまで対応しています。ご要望があれば、1mm単位でカットすることも可能ですよ。幅が狭いものは仮止めに、広いものはマンホールやグレーチングなどの養生に使われていますね。

