街中の養生テープ
担当者さんは「街中では常にパイオランテープを探しています」という。軽トラの荷台、ハイエースの助手席、イベント会場の立入禁止エリア。見つけたときは「うちのだな」と嬉しくなるそう。
生活に溶け込んだ物たちに、温かな「親目線」を投げかける人がいる。つい忘れそうになるけど、どの生活用品にも作っている人がいるんですよね。
取材協力:ダイヤテックス株式会社
使われる糸の本数や糊の種類、色などを変えることで、ダイヤテックス社の養生テープにはさまざまなラインナップも生まれている。
なかでも「こんなものが!」と驚いたのが、真ん中だけ糊が塗られていないテープ。
実はこれ、「ケーブルを固定するためのテープ」なのだ。
担当者さん ケーブル表面に使われる塩化ビニール(塩ビ)は、テープの粘着剤と相性が良くないんです。ケーブルにテープを直接貼ると、塩ビに含まれる可塑剤が粘着剤を柔らかくしてしまい、ケーブルに粘着剤が残ってしまうんですね。
このベタベタ、実はイベント設営などではよく知られた現象らしく、一部の現場では100mm幅テープの裏面中央に50mm幅テープを貼り合わせて、お手製の「ケーブル用のトンネル」が作られていたそう。
「それなら最初からそういうの作ればいいじゃん」という発想である。これならケーブルに粘着剤がつかないし、テープで固定した後も中のケーブルを動かせる。一石二鳥。
糸から養生テープを作り、そこからつや消し加工のものを作り、さらにそこからケーブル固定用やクロマキー撮影用のものを作る。
横展開に次ぐ横展開で製品が生まれている技術力があってこそできることだろう。
パイオランテープにはテープの内部(紙管)に「パイオラン」のロゴがプリントされている。
で、実は2024年夏頃から「パイオラン」のロゴの一部が「パイオニャン」になっているレアものが潜んでいるという。
星形のピノ、ハート型のプチプチ、そしてパイオニャンである。担当者さん自ら「やりたい」といって実現したそう。「会社が変わったことを始めたら、だいたい私発信ですね(笑)」と笑う。
担当者さん SNSを見ていると「緑のテープ=パイオラン」だと思われている方を多く見かけます。それって結局、私たちのマーケティングが足りていないと思ったんですね。
もともと養生テープは現場で「知る人ぞ知る」存在だった。それが台風をきっかけに広く一般に知られるようになった。
そうなるとマーケティングの方針も変えざるを得ない。現にホームセンターにはプライベートブランドを含め、たくさんの養生テープが棚に並んでいる。競合製品と差別化をしないといけないのだ。
品質には自信があるが、どれも同じ緑色の養生テープに見えてしまい、売り場で実際に手に取ってもらうのは難しい。そのような状況のなか、見た目でブランドを認知してもらうにはどうしたら……と考えた結果が「パイオニャン」だったそう。ただ「面白いから」じゃないんですね、
担当者さん ロゴに「パイオニャン」が紛れている、というレア要素を入れたら、ブランド名に注目してもらえるんじゃないかと思ったんです。実際にXで「見つけた!」という報告も届いていますね。ただ弱点もあって、パッケージの大部分が透明なので、購入前の店頭でも探そうと思えば探せるんです(苦笑)
SNS関連は担当者さん1人で切り盛りしているそうで、試行錯誤の末に何度かバズった結果、現在Xには約6万人のフォロワーがいる。
#今年の漢字 #パイオランドミノ pic.twitter.com/qMe12f6bPt
— パイオランテープ【公式】 (@PYOLANTAPE_DTX) December 12, 2025
定期的に行っている「パイオランドミノ」。今年の漢字もこの通り。
担当者さん 最初にバズったとき、企業アカウントのお手本にしていたシャープさんからコメントが来たときは震えましたね。
正直という、モーターと養生テープで演奏する、才能しかないアートデュオにお話を聞いた方がいいと思います https://t.co/Bkr7rlej5h
— SHARP シャープ株式会社 (@SHARP_JP) January 17, 2023
これがそのときのポスト。というか、「モーターと養生テープで演奏する」ってどういうこと? なにかの例え……? と思って見てみたら、本当にそのままの意味だった。
担当者さん 正直さんからは直接DMをもらったこともあるんです。「養生テープで演奏するので1000mm幅を購入したい」と。幅1メートルとなると1人では引っ張れないので、どうするのかなと思ったら、機械で巻き取ってましたね。
正直明日もある!見逃すな👀
— 山城大督 (@yamashirodaisuk) June 11, 2022
ロームシアター京都 @RT_Kyoto
Sound Around 002https://t.co/M1a0Pb4WME pic.twitter.com/qKxmarJxXq
耳を澄ますとギリギリ……と独特の音がする。
養生テープを取材に来たら、思わぬパフォーマンスを知った。世界はまだまだ広いですね……。
担当者さんは「街中では常にパイオランテープを探しています」という。軽トラの荷台、ハイエースの助手席、イベント会場の立入禁止エリア。見つけたときは「うちのだな」と嬉しくなるそう。
生活に溶け込んだ物たちに、温かな「親目線」を投げかける人がいる。つい忘れそうになるけど、どの生活用品にも作っている人がいるんですよね。
取材協力:ダイヤテックス株式会社
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