特集 2026年1月21日

地球12周分の養生テープを1年で出荷する会社に養生テープのこと全部聞く

養生テープ、皆さんのご家庭にもひとつあるんじゃないかと思うのだ。

貼って剥がせて手で切れる。とても便利である。でも養生テープって、子どものころ家にあったっけ……?

もしかして養生テープは最近ブレイクしたんじゃないか。そもそもどうして貼って剥がせて手で切れるのか。国内トップシェアの会社に聞いてきました。

1975年宮城県生まれ。元SEでフリーライターというインドア経歴だが、人前でしゃべる場面で緊張しない生態を持つ。主な賞罰はケータイ大喜利レジェンド。路線図が好き。(動画インタビュー)

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養生テープがブランコに乗っている

訪れたのは神田にあるダイヤテックス株式会社。会議室に通されると、既にたくさんの養生テープがスタンバイしていた。

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それぞれの詳細については後ほど詳しくお伝えします。

そもそも僕がダイヤテックス社を知ったのは、たまたまXに流れてきたポストを見かけたのがきっかけだった。


養生テープがブランコに乗っている……? 

どういうことかと思ったら、養生テープのLINEスタンプを出しているという。えっ?養生テープのLINEスタンプ……?

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その名も「パイオランしか勝たん」 。第2弾も出ている。
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買いました。

調べてみると、ダイヤテックス社の養生テープ「パイオランテープ」は、ポリエチレンクロス養生テープの国内市場ではトップシェアとのこと。こんなに親しみやすいトップがあろうか。

というわけで、改めて養生テープのことを教えてください!と取材を申し込んだところ、SNS担当の方にお話を聞けることになったのだった。

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パワポまでご用意いただいて恐縮です(担当者さんはお姿も年齢も性別も非公表とのこと)
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こちらが「パイオランテープ」。最もスタンダートな50mm幅のもの。

そもそも「養生テープ」という存在を知ったのは、大人になってからの気がするのだ。

子どものころ実家にあったテープといえば、ガムテープやセロハンテープ、布テープ、ビニールテープといったところ。養生テープが一般家庭にまで浸透したのって、最近じゃないですか……?

担当者さん そうですね。パイオランテープも以前は「建築現場などでプロが使う専門資材」という立ち位置でした。ホームセンターで一般の方が手に取りやすくなったのは、ここ10年ぐらいではないでしょうか。

「数年前の台風がひとつのきっかけだと思います」と担当者さんはいう。

2018年から2020年にかけて、3年連続で大型の台風が本州に接近・上陸したことがあった。大阪で強風が吹いて車が横転したり、千葉県一帯が停電したりしたときだ。

そのときテレビのニュースで、「窓ガラスに養生テープを貼ると、強風でガラスが割れたときに破片が飛び散らず、あとでテープを剥がすのも楽」と紹介されたのだそう。

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いらすとやに「テープで補強された窓のイラスト」があるくらいメジャーな処置

担当者さん テレビで取り上げられたことでホームセンターから養生テープが消え、出荷数量が一時的に増えました。それまで、養生テープは「塗装」などの棚に置かれていたんですが、これをきっかけにテープ棚に占める養生テープの割合が多くなっていったイメージですね。

手で切れるし、貼ってもキレイに剥がせる。そんな養生テープの便利さが、台風をきっかけに世間に“見つかった“。

現在、ダイヤテックス社の養生テープ製品の年間出荷量は、50mm幅に換算すると地球12周分もの長さになるという。約48万キロ。果てしない。

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ご覧のようにいろんな幅があるので、50mm幅で換算しているのだそう。単位の統一。(画像提供:ダイヤテックス)
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養生テープを貼ってはいけない場所

養生テープはその名の通り、「養生」に使われるテープだ。

日本国語大辞典の「養生」の項には、「運搬や作業の際に、内装を汚損しないように、完成部分を布や紙、ベニヤ板などで覆って保護すること」とある。

一時的に保護するために使われるので、貼ったあときれいに剥がれることが大事。でも他のテープは剥がすとだいたいベタベタしちゃうもの。この違いはどこにあるんですか?

担当者さん 一般的なクラフトテープや布テープは「ゴム系粘着剤」が使われます。ゴム系粘着剤のテープは初期粘着力が高いので、ベタベタしてしまうんです。養生テープは「アクリル系粘着剤」なんですよ。

初期粘着力が高いゴム系は、凸凹面でもよく貼り付く一方、ベタベタ感も強い。

対して、アクリル系は初期粘着力がそれほど高くないが、耐熱性や耐候性に優れているので、屋外や高温環境での使用に適しているそう。

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「なるほど……」​​​

ということはアクリル系の養生テープのほうが、外で使うのに向いているってことなんですね! バンバン貼っていきましょう!

……と思うが、担当者さんは「だからといって万能ってわけでもないんですよ」と言う。

担当者さん たとえば先ほど「台風のときガラス窓に貼る」という話がありましたよね。養生テープは紫外線で粘着剤が劣化しやすいので、貼りっぱなしにすると、剥がしたときに糊が残ってしまうんです。

「来週も台風が来るみたいだし」と貼りっぱなしにしておくと、台風一過の元気な太陽が養生テープに紫外線をバンバン当ててしまうのだ。面倒くさがらずに毎回剥がしたほうがいい。

他に貼ってはいけない場所はありますか?と聞いてみると、これが結構あるのだ。

・車のボティ
・大理石
・無垢材
・壁紙  ……etc

たとえば塗装されていない木材(無垢材)は、粘着剤が染みこんでしまうので、テープを剥がそうとすると木ごと剥がれてしまうそう。

きれいに剥がれるからと気軽に貼ってしまいそうになるが、注意したほうがいいところもあるんですね。

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担当者さん「そもそも窓ガラスに養生テープを貼るのは、ガラスの飛散“防止”ではなく、あくまで“抑止”なんですよね。完全に防げるわけではない。そこを勘違いされることが多くて……」なるほど確かに……。
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すべての原点は「細い糸」

ここでお知らせなのだけど、そもそもダイヤテックス社は養生テープ専門の会社ではない。

会社は1962年(昭和37年)創業で、養生テープを事業化したのは1988年(昭和63年)と、だいぶ後になってから。

では本来は何の会社なのかというと、事業の根幹にあるのは樹脂製の細い糸(フラットヤーン)である。

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この細い糸がフラットヤーン。よくある荷造り用のプラスチック紐よりもっともっと細い。

このフラットヤーンをスタート地点にして、農業資材などの製造販売を手がけており、養生テープはあくまでその一部なのだ。以前はブルーシートや人工芝なども作っていたという。

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ダイヤテックス社の農業資材。ハウスの外側に張るなどして、農作物にあたる光の量を調節するシート。光を通す量によって、格子の目の粗さを変えている。
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フラットヤーンを織って作ったシートを複数枚重ね、強度を出したSRP(自己強化プラスチック)。加工がしやすく、高級スーツケースの素材などに使われる。

養生テープは、フラットヤーンをタテ糸ヨコ糸としてシートを織り、それをラミネート加工したものに粘着剤を塗って作っている。

元が細い糸だから、手で簡単に切れるわけだ。「当社の養生テープはタテ糸とヨコ糸の太さを変えてあるので、幅方向には切れても、縦方向には切れにくい仕様です」と担当者さん。そうなんだ!

担当者さん 当社はフラットヤーンの製造工場を国内に持っており、織ったり、ラミネート加工をしたり、糊付けをしたりする工場も、すべてひとつの敷地内にあります。養生テープについても、糸から一貫生産をしているのが強みですね。

工場ではテープ幅のカットまで行っているので、こんな幅広な養生テープも短期間で出荷できてしまう。

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幅500ミリの養生テープ。一般的な養生テープ10巻分の幅。長い。

担当者さん テープ幅は最大1000mmまで対応しています。ご要望があれば、1mm単位でカットすることも可能ですよ。幅が狭いものは仮止めに、広いものはマンホールやグレーチングなどの養生に使われていますね。

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グレーチング(左)やマンホール(右)の養生。広い面積を一度に養生できて効率的(写真提供:ダイヤテックス)

⏩ 次ページに続きます

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