それでも唇は乾く
リップスティックを塗るために唇をすぼめているのはかっこ悪い。だけどかといってそれをごまかそうとするのも果たしてかっこいいんだろうか。わからなくなってきた。
でもたぶん楽器ができて缶コーヒー飲んでるスポーツ選手はかっこいいと思うので、これはこれで良かったんじゃないかと思う。

僕は唇がよく乾くのでリップスティックが手放せないのだけれど、男の人が口をすぼめてリップを塗っているのってどこかかっこわるくないだろうか。
そこで外でも堂々とリップスティックを塗ることが出来るよう、かっこいい塗り方を考えることにした。
※2011年4月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。
空気が乾燥する冬はもちろんのこと、僕は春でも夏でも梅雨時ですら唇が乾いている。実は水の中の生物なんじゃないかと思うくらいだ。
そこでリップスティックを常備しているのだけれど、これが塗るときにちょっと気を使うのだ。
なぜなら塗っている姿がかっこわるいからである。
リップスティックを唇に塗るとき、人は唇をすぼめる。つまりこれはキス顔の出現である。
道でリップスティックを塗る、それは万人にキス顔を見られているに等しい行為なのだ。それは恥ずかしくて当然。好きな女の子ができたらリップスティックをプレゼントしよう。キス顔見れるぞ。
このリップを塗るというかっこわるい行為をなんとかごまかせないものだろうか。かっこわるさと逆位相、つまり「かっこいい」を合わせてみたらどうだろう。
五里霧中だが試してみたい。
「かっこいい」を考えるとき、僕が思いついた三大「かっこいい」がある。
そのうちの一つ目、それはミュージシャンである。音楽やっている人はだいたいかっこいいのだ。
道でギターを鳴らしていると、どう見ても世にある不満を歌に乗せて叫んでいるようにしか見えない。これはかっこいい。
けれど実はこれ、リップ塗ってるのだ。
ハーモニカフォルダーはギターを弾きながらハーモニカを吹くために楽器を顔の前に固定しておく装置である。
これにこっそりリップスティックを仕込んでおけば、かっこいいままにしてリップを塗れるということだ。
何もなかったように続ける。
第二のかっこいい、それはハードボイルドである。
ハードボイルドな男はだいたいサングラスをしているか拳銃を構えているか缶コーヒーを飲んでいるかだと思う。あと後ろ向いているか。
モデルはともかくとして、状況的にはハードボイルドである。缶コーヒーを持つ姿がなかなかかっこいいんじゃないか。
しかしこれもよく見るとリップ塗ってるのだ。
もはや説明するまでもないような気がするが、つまりこういうことだ。缶コーヒーにリップスティックが仕込んである。
今回の記事で唯一得られた情報がある。缶コーヒーの飲み口には標準サイズのリップスティックがピッタリはまるのだ。これはよくできた規格である。
ハードボイルドな人たちは砂漠とか西部とか、乾燥した地帯にいることが多いだろう。唇も乾くに違いない。
この方法を使えば敵やファンに見つからずにかっこいいまま唇を潤すことができるってわけだ。
なんだろうこの土台がぐしゃぐしゃなケーキに一生懸命デコレーションを施しているみたいな気分は。
もう少しだけ付き合ってもらいたい。
ミュージシャン、ハードボイルドときて最後三つ目の「かっこいい」はスポーツ選手である。
昔から運動できるやつはモテただろう。つまりそういうことなのだ。スポーツ選手はかっこいい。
ほら。
運命のPK戦、蹴るのはキャプテンの僕だ。これを外したら国に帰れない。
僕は祈る。そしてボールにひとつキスをしてゴールをにらんだ。
ちょっとまってくれ、こいつリップ塗ってるぞ。
さすがにボールにスティックを仕込むわけにはいかなかったので、あらかじめボールに厚めにリップを塗っておく作戦にでた。関節キッスで唇が潤うという寸法だ。
細かい部分はともかく、かっこよくリップスティックを塗るにはいろいろと努力が必要、ということだけはわかった気がしますね。
リップスティックを塗るために唇をすぼめているのはかっこ悪い。だけどかといってそれをごまかそうとするのも果たしてかっこいいんだろうか。わからなくなってきた。
でもたぶん楽器ができて缶コーヒー飲んでるスポーツ選手はかっこいいと思うので、これはこれで良かったんじゃないかと思う。
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