これは……あれの味だ!
秋冬になるとスーパーの店頭で見かけるようになる「アルミ鍋うどん」のファンです。熊本県の「五木食品」や、金ちゃんヌードルで有名な、徳島県の「徳島製粉」のものが有名でしょうか。
味のバリエーションは、海老天、きつね、すき焼き、みそ煮込み、カレーあたりが定番どころですが、昨年の冬、初めて見かける味のものがあり、購入しました。それが五木の「鍋焼ねぎ塩うどん」。
これです
けっこう賞味期限が長い商品なのでしばらく家の棚にストックしておき、今年の9月、思い出したように食べてみたんですね。マルちゃんの、あとのせサクサクタイプのえび天ぷらを添えて。
いただきます
で、これがなかなかおもしろい商品で、まずスープをひと口飲んだ瞬間、強烈な既知感に襲われたんです。あれ? この味、ものすごく親しみがあるぞ! なんだっけ? と。記憶をたどってみたらすぐにわかりました。「サッポロ一番塩らーめん」の味にとってもよく似てるんですよね。あくまで個人的な感想ですが。
サッポロ一番塩らーめん、ここからは、長いので「ポロ塩」と省略させてもらいますが、ポロ塩のスープって唯一無二ですよね。他の一般的な塩ラーメンとは違う、香辛料由来と思われる独特の香り。それをかいだだだけで、あ! ポロ塩だ! とわかり、脳内にくっきりと再生される、他に代替の利かない味わい。と思っていたら、それにそっくりなうどんが存在していたなんて。
ははは、これ、サッポロ一番塩うどんだー! なんて、喜んで食べ終わり、数日後、また食べたいなと思ってスーパーを探してみるとぜんぜん見つからない。するとだんだん不安になってきて、あれ、本当にポロ塩に似てたのかな……と、自信がなくなってきます。もう一度確認したいし、できれば知り合いにも食べてもらって、感想も聞いてみたい。そこでネットの通販サイトなども探してみたんですが、軒並み品切れ。製造中止にでもなってしまったのかな。う〜む、どうしたもんか。
あれ?
そんな日々を送っていたある日、突然ひらめきました。そうだ、同じ五木の他の味のアルミ鍋うどんならばスーパーで手に入る。そのスープをポロ塩と入れかえれば、あの味が再現できるんじゃないだろうか!?
つまりこうですよ
付属のスープ類は使用せず
これを合わせる
お、おれって天才!? と、成功を確信しつつ作ってみました。サッポロ一番塩うどん。
ぐつぐつ、いいにおい
う、うまそー!
いただきます!
もぐもぐもぐ、もぐもぐもぐ、もぐ……もぐ……。
………………あれ?
なんだろう、ぜんぜんあの時の味じゃない。というか、具体的に言うと、なぜか強めの“酸味”を感じます。おかしいな、買ってきたばかりだから賞味期限も切れてないし。だけど何度食べても、やっぱり酸っぱい。まずくはないので最後まで食べきったんですが、ものすごく釈然としない結果です。ぜんぜんサッポロ一番塩うどんじゃない。
素人ながら考えられる可能性は、こんなところでしょうか。
・スープとうどんに含まれるなんらかの成分が反応した
・スープとアルミ鍋のなんらかが反応した
・その日の体調など、自分のせい
・そもそも自分の味覚が終わっている
(4)はあまり考えたくないので、その他なのかな? う〜ん、わからない。なんとなくだけど、(3)な気はするんだよな〜。だって、ごくごくシンプルなうどんの、スープを入れ替えただけですからね。
あ、ちなみに、 残ったラーメンの麺と、うどんのスープ、天ぷらをかけ合わせた、
うどんつゆ天ぷらラーメン
は、予想外の美味しさで素晴らしかったです。
おだやかで優しいラーメン
まさかの商品が
それからしばらくの間、あきらめたくない気持ちはありつつも、また同じ酸っぱうどんを食べたいかというとそんなことはなく、この検証を先送りにしてしまっていたんです。ところがまさかの展開が!
何気なく寄ったコンビニで、こんな商品を発見してしまったんですよね。
「サッポロ一番塩らーめんがまさかのうどん!?」
なんと、サッポロ一番塩らーめんのスープとうどんを合わせた商品。これはもう、サンヨー食品から僕への、個人的なメッセージと考えていいですよね? 公式からの太鼓判ですよね?
「その道、進めよ! 君は間違ってない! 絶対に合うから!」
そこでいったん、この公式商品を食べてみましょう。
おなじみのスープに、うどん
いただきます
あー、そうそう、これこれ、この美味しさ! ポロ塩ならではの特徴あるスープが、ラーメンよりは穏やかな印象のうどんに絡む、ちょっとおもしろくもほっとする味わい。インスタント特有の平打ち油揚げめん、好きなんだよな。いや〜、間違いない。
味変化パック
ちなみに付属の「味変化パック」なるものを途中で加えると、強めのかつお風味が加わって、全体の一体感がより増します。が、一気に和風な印象になるので、おもしろみは入れる前のほうがありますかね。まぁ、そのへんは好みの問題でしょう。
というわけで、もう一度チャレンジしてみよう。五木のうどんとポロ塩の組み合わせを。前回とまったく同じことをするだけですが、
スープをわかす
この時点では間違いなく、いつものポロ塩味です。
で、麺を投入
もぐもぐもぐ、もぐもぐもぐ、もぐ……もぐ……えぇ〜? やっぱりなんだか酸っぱい感じ。わからない……。
この成分と
この成分で
この味になる理由が。だって、五木の麺の原材料なんか、小麦粉と食塩だけですよ? いかんせん自分には知識がないので、この謎の可能性に心当たりのある専門家の方がいらっしゃれば、ぜひ情報をお寄せいただきたいくらいです。
あのうどんならどうだろう?
このままだとなんだかすごく不完全燃焼だなぁと考えていたところで、またひとつ思いつきました。よく考えたら僕、ベースのアルミ鍋うどんにこだわりすぎていたんじゃないだろうか? 世のなかにはもっと手に入りやすい、より多くの人になじみ深いうどんがあるじゃないか。それが、冷凍うどんですよ。スーパーの冷凍食品コーナーで、5個入りで数百円くらいで売ってる。
あれをポロ塩スープで煮てみましょう
お鍋にスープをわかし
ぐつぐつと冷凍うどんを煮込む
これで同じ結果だったらもう絶望の淵から戻ってこられないところでしたが、ついにやりましたよ!
うまい!
これはまさしく、僕が求めていたサッポロ一番塩うどんだ。あのおなじみのスープに優しめのうどんが絡む、不思議な相性の良さ。作る際のポイントとしては、うどんはラーメンの麺に比べて太いので、ポロ塩規定の水分量である500mlよりほんの少し水分を減らしてやると、ちょうどいいバランスになる気がしました。
とにかく、これはうまい。今後も定期的に食べたくなる味だ。惜しいのはアルミ鍋うどんと入れ替える場合と違い、ポロ塩の麺がスープなしで残ってしまうところなんですが、なにか他のスープ(それこそうどんスープとか)で食べるとか、この季節ならば鍋のシメに投入してもいいでしょう。
さて、これでひとまずいつでもサッポロ一番塩うどんを食べられるようにはなったものの、いや〜、今回の件にはまだまだ検証するべきことがありそうです。だって、けっきょくあの酸味の謎はとけていないままだし。
ちなみに、家にちょうどこういう
生タイプの鍋用うどん
があったので、試しにポロ塩スープと合わせてみたんです。そうしたらこれが、ぜんぜん美味しく食べられるサッポロ一番塩うどんだった。
いいじゃない
冷蔵庫にあった具材をあれこれ加えてしまったため、それらの旨味によってポロ塩感は多少控えめなものの、やっぱりちゃんと、あの特徴のある味わいを感じることはできます。そして、「ポロ塩鍋焼きうどん」という料理として、晩酌のつまみにするにもかなり完成度が高い。
思ったよりずっと深い世界でした
以上、最初の思いつきの時点ではいとも簡単なことだと思っていた、サッポロ一番塩うどんに関する検証。個人的にとても興味深く、今後もあれこれ試せる余白のあるテーマだったことが判明しました。
それから、たった今この記事を書き終え、念のため検索してみたところ、楽天市場など複数のサイトで「鍋焼ねぎ塩うどん」の在庫が復活している! これも近いうちに食べて、その味をじっくりと確認してみないとな〜。もしも記憶よりもポロ塩に似てなかったらどうしよう……。
ひとまず、冷凍うどんなどで作るサッポロ一番塩うどんは美味しいので、おすすめです!
編集部からのみどころを読む
編集部からのみどころ
探求エッセイという感じでおもしろかったです。いつものパリッコさんのいろんなメニューを作ってみるパターンとは違って、ひたすら一カ所を目指していく、こういう記事も面白いなと思いました。できたメニューはすぐ試せるので、週末のお昼にでもぜひ!(石川)