特集 2020年3月3日

河原の石を8時間磨いた先に見えたもの

夢で見たことを実際にやってみよう。

こんな夢を見た。どこかの川沿いで紙やすりで石をみがいてきれいにするという記事の撮影をしていた。夢の中では「これはバズるぞ!」と思いながら、億万長者になる一歩手前で起きてしまったが、もしかしたら何かのお告げかも知れない。石をみがこうと思う。

1988年神奈川県生まれ。普通の会社員です。運だけで何とか生きてきました。好きな言葉は「半熟卵はトッピングしますか?」です。もちろんトッピングします。(動画インタビュー)

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多摩川へ来た

夢の中では静岡県伊豆市にある川沿いで撮影をしていたが、伊豆は遠いので多摩川にした。

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多摩川に着いた。たまがひらがなでかわいい。
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この光景も夢っぽい。

さあ、石を探そう。川の近くに行かないと石は落ちてないようだ。と思っていたら見つけた。

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指の先には、
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きれいにするには100年ぐらいかかる。

夢ではこのサイズの石をみがいていた。ただ、目の前で同じサイズを見たとき「あ、無理だな」と思った。

「夢でこれをみがいていたんですよ」と友人に言うと「じゃあ、これでやりましょう」と言われた。こんなでかい石をみがくのは古代エジプトでしか見たことない。多摩川に文明を作ることになってしまうので「器物破損になるかもしれないからやめましょう」と言ってやめた。一命を取り留めたとはこのことである。

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友人の能登さんは「もう、これでいいんじゃないですか」とやる気がなかった。

改めて石を探そう。手のひらに収まるぐらいのサイズを探すことにした。いい石を探すなんて小学生のとき以来である。遠くで中学生が大きな石を川に落としていた。

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春の陽気を感じる季節になりましたが、まだまだ川沿いは寒いです。
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みがくのにはどういう石がいいのだろうか。

色々な石がある。丸く平らな石、親父のげんこつを思い出すような大きな石、傷だらけの石。

なにを選ぶかどうかは自由だ。人生の選択と同じである。

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途中、石投げをした。10回ぐらいはねていた。

見つけた石をみがいてみよう

そんな余計なことをしながら石を探す。どういう石がいいのかわからなかったので、自分でいいなと思った石をみがくことにした。
 

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左が能登さん、右の筆者の石。

さっそくみがいて行こうと思う。みがくことで見える景色がある気がするのだ。

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今回使う道具。一番右のダイヤモンドやすりで傷を削って、荒いやすり(左)から細かいやすい(中央)でやすりをかける。
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「これ、どのぐらいかかるんでしょうね」
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「暗くなる前には帰りたいですね。」
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そんな話をしながら散歩している犬の本気の犬かきを見た。満足した犬は帰っていった。

ゆったりとした時間が流れる

石をみがきながら、流れる川を見つめる。頭の中には美空ひばりの川の流れのようにが流れていた。能登さんの「これって記事に本当になるんですか?インターネットの記事でこんなの見たことないんですけど」という声に震えながら「これからはこういう記事がウケる時代なんですよ。夢で見たし。」と答える。就職面接だったら落ちるぐらい自信がない答えだった。

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将来の不安によるものか、記事に対する不安かわからないが、白髪ができた。

ある程度、傷がなくなったらダイヤモンドやすりから紙やすりに切り替えてみがいていく。この日知ったのだが、紙やすりは100番などの小さい番号から段々と数字を大きくし、最終的には2000番の紙やすりでみがくのが正しい使い方である。表面のざらざらが粗ければ荒いほど数字が小さくなり、大きいほどきめ細かくなる。

荒いやすりで傷を削って、きめ細かいやすりで表面をつるつるに仕上げるのだ。

やすりをかけながら、お腹が空きすぎて「今日、このあと牛角とかに行きたい」と煩悩が出てくるが、おいしい焼肉が食べたいので仕方ない。

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ある程度削ったら、
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水で洗う。そうすると傷の消え具合などがわかる。

そんなことを繰り返していく。記念撮影をしているグループが近くにいたので撮影に入ろうとしたが、そんなことをしているヒマはなかった。石をみがこう。

悩み相談をしてみた

やることがない。なので、お互いの悩み相談をした。まずは能登さんから「仕事を辞めたいんですけど、どうすればいいですか?」

江ノ島「本当に行きたくなかったら、もう行かなくていいんじゃないですか。別の仕事でやりたいことがあったらそっちをやったほうがいいですよ。きっと。」

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そのアドバイスは心に響かず、やすりを動かす手だけが早くなり、会社の愚痴が止まらなくなった。

そして、自分の悩みだ。「結婚をしたいです」

能登さん「江ノ島さんは自分から動かないので、結婚できないですよ。本気でやるならTwitterで募集したらいいと思います。今、書きましょう。撮影も協力してくれる人を条件として」

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Twitterに書く勇気は出ず、石をやすることにした。芯を食ったアドバイスに力が入らなくなった。

みがき終わった石

その後も削りあった。途中、手がすべって落下し、欠けたりもしたが、気にしないでやすった。夕方になるにつれ寒くなるが、 ぼくらにできることはやすることしかできない。けずっているうちに温かくなるかと思ったが、風が冷たい。

「2時間ぐらいできると思うから終わったら牛角に行きましょう」と言ったが、開始から4時間ぐらいやっている。

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落ちた石を拾おうとして、坂を転がり落ちた。多摩川が怖いと思った瞬間だった。
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欠けたな。

開始から5時間、能登さんが「できました」と言うので見せてもらうと確かにそこにはみがかれた石があった。夢で見たのと同じ光景である。

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 こちらが削ってない石。
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そして、こちらが5時間削った石。

細かい傷が消え、灰色だった石が黒くなった。光沢もあり碁石のようである。つるつるとした手触りでずっと触っていたい。能登さんは「子どもぐらい愛着がある」と言っていた。

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水に濡らすと大豪邸の大理石ぐらい輝く。メルカリで20万円で売りたい。

宿題になった石みがき

その一方で筆者は苦戦をしていた。拾った石に傷が多く、いい感じにならない。もし、石をみがきたい人がいたら、選ぶ石は傷がないものを選んだ方がみがきやすい。

あと、朝食べて来なかったので牛角に早く行きたい。カルビ専用ごはんを食べたい、そんな気持ちで石をみがいています。

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あまりの疲労に横になりながら石をみがいた。古代エジプトなら監視員から怒られる。
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寝ながら5時間みがいた石。

最初よりもきれいになったがまだまだ中途半端なできであある。

「磨き終わると達成感がありますよ」の感想にもう少しだけやってみたい気持ちになった。寒いので一度帰って、家に持ち帰ってからみがいてみよう。

それはまるで宝石のような輝きでした

石は水に濡らしながらみがく。そうしないと削った石の粉が舞う。家の場合、敷金が帰ってこなかったり、苦情が来る可能性もあるので濡らしながら削ろう。

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水で洗いながら石をみがく。
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手を一度止めてみたりしながら、
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みがく。
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座り直そうと思ったら、ちゃんと座れず頭を打った。
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でも、見上げた空は青かった。

家でやると「こういう職人の仕事かな」と思うときが5分に一回ある。傷の様子を見ながら、みがくためのやすりを変えたり、いいところで水につけたりを繰り返す。

1時間ぐらいで終わるかなと思ったが、3時間ほどかかった。休日に落ちている石をみがく、ていねいな暮らしってこういうことかもしれない。

そして、とうとう満足できる状態になった。完成である。

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模様がはっきりと見られて、光の加減で輝く。
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落ちていた石とは思えないほどきれい。
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2日合計8時間かけて宝物ができた。今なら100万円でゆずります。

俺たちのスタンドバイミー

僕らが子どもの頃に置いてきてしまった気持ちを思い出した。理由や意味でものごとを考えない「なんかいいな」という気持ちである。その気持ち、大切にしたい。あと、スタンドバイミーは見たことはない。

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何かが起こりそうな写真ですが、対岸の釣り人を見ているだけです。

 

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