特集 2024年7月10日

ポカリスエットの味のもとになったという説があるまんじゅうを食べる

ポカリスエットのWikipediaにはこんな一文がある。

食味の研究も入念に行われ、赤穂の塩味饅頭をヒントに、塩味と甘みの絶妙のバランスを図った[要出典]。

ポカリスエットの味付けはとあるまんじゅうを参考にしたと書いてあるのだ。要出典だけど。

それが塩味饅頭だ。

1971年東京生まれ。デイリーポータルZウェブマスター。主にインターネットと世田谷区で活動。
編著書は「死ぬかと思った」(アスペクト)など。イカの沖漬けが世界一うまい食べものだと思ってる。(動画インタビュー)

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池袋西武で月に1回だけ売られる

塩味饅頭は赤穂の特産の和菓子で、いくつかの和菓子店が作っている。読みは「しおみまんじゅう」。知ったように書いているが兵庫出身のライター岡田有花さんに教えてもらった。
元祖を名乗っている播磨屋の塩味饅頭は池袋西武で月に1回売られる。

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テンション上がって2箱買った
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6個で669円。安い。
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切ったところ

まんじゅうは小さく、皮は堅い。落雁のような食感だ。あんこはこしあんで、あんこに塩味がついている。埼玉の塩あんびんのように完全に塩味に振り切っているのではなく、あくまで甘じょっぱいの範疇である。(塩あんびんについてはこの記事をどうぞ)

その甘じょっぱさがポカリスエット、と言われたら、あまりそんな気はしない。
だが意識的にポカリっぽさを探して食べてみると、一瞬、ポカリスエットの気配が見えたことがあった。

たとえるなら森の中の一本道を歩いているときに、視界の隅に一瞬ポカリスエットがいた、それぐらいの気配だ。
『ポカリ!?』と振り向いたときにはその姿は木の陰に姿を隠した。心理テストのような描写になってしまったが、それぐらい儚い。

そしてまんじゅうとしてはとても美味しい。旅館の和室にあったら帰りに売店で買う。

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塩味饅頭のなかにポカリを探してもらおう

まんじゅうのなかにポカリ感が見えたのがおもしろかったので、みんなにやってもらいたいと思い会議に持参した。

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試すのは、べつやくさん、岡田さん、石川さん、橋田さん

偶然鼻うがいのときと同じメンバー、同じ服となった。
さっそく編集部 の石川さんがポカリ探しの旅に出る。

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ポカリは現れるのか
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目をつぶり、ポカリスエットっぽさを探す。

「ちょっとまだ見つからないですね」

イメージをつかみやすくなるように僕がポカリの位置に立ってみる。

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ここだよ~(ポカリ)

「これぐらいのところにいる感じない?」(林・ポカリ)
写真を見て気づいたけど、全然見てないな。
「これ、………むずかしくないですか?」
とのこと。うーん。
「ポカリよりも小豆の味が主張してくる」
確かにそう。塩味があるとはいえベースはまんじゅうだ。ポカリを探しても圧倒的なまんじゅうが押し寄せる。

塩味饅頭を地元でよく食べていたという岡田さん、甘いものが苦手な橋田さんにもポカリチャレンジしてもらう。岡田さんはポカリと思ったことはなかった、とのことだ。

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岡田「ポカリ………?」
橋田「甘いものが苦手なので、あんこよりもいい。ポカリかどうかは分からない」

概ね不評である。橋田さんはあんこが苦手だった。いまのところ共感ゼロだ。

塩味があるとはいえあんこの甘さが強いので、あんこが本気を出した瞬間にゲームセットになる。
ポカリっぽさは塩味が拮抗する瞬間に現れるのかもしれない。

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ポカリが来た

あんこがごくごく僅かになるように、まんじゅうの皮の部分を中心にかじってもらう。
これでポカリっぽさが出現するかもしれない。

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ガリガリガリ、まんじゅうの表層をかじる3人
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!!!!!
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いまポカリが横切りました!

ついに僕以外の人間からもポカリの気配を感じた発言が出た。
これでこの記事がただの妄想ではなくなった。n=1がn=2になった。倍増だ。

ほぼ皮だけを食べて、なおかつ口の中であんこを取りのぞくとポカリが通り過ぎる。
ちょっと皮にあんこがついているぐらいでいいのかもしれない。

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べつやくさんがポカリに近づけるため皮多めで切る
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…………
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ややポカリ!

ややポカリ。アンケート項目のようになった。他にはきっと「かなりポカリ」「どちらかといえばポカリ」だろう。

この状態で、さらに口の中であんこを取り除くぐらいでいい。

しかしあんこと皮のバランスでポカリが現れることが見えてきたので、その黄金比を目指してカットしていく。

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このあたりはけっこうポカリかもしれない

発案者である僕も断片からポカリを探してみる。

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………
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ポカリ!!!

舌に触れたまんじゅうの断片、その塩味と甘みがある比率になったときにポカリが現れる。そのバランスはすぐに崩れて、まんじゅうの甘みが口の中に広がる。
この逃げ水のような塩味がこのまんじゅうの美味しさかもしれない。

この日の結論としては、「ポカリは探すといない、でもいるときはいる」ということになった。

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なんの根拠もない印象をグラフにするとこんな感じ

ローカルエピソードが多いポカリスエット

ポカリスエットの製造元である大塚製薬は徳島県にある。
ポカリスエットの味を決めるとき、開発スタッフは徳島市内の山(眉山)に登って汗をかいた上で決めたという。

そして鳴門市から淡路島をこえて赤穂にあるのが塩味饅頭。
ポカリスエットのエピソードはいちいち地元に根づいている。

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一昨年、徳島市の眉山に行ったらちゃんとポカリスエットの自動販売機があった。

眉山の話は大塚製薬のサイトに書いてあるので本当だろう。
塩味饅頭の話は出典がないのでまるっきり嘘だったらこの記事は集団催眠の事例としてお読みください。

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