ピザを7等分するということ
7はやっかいな数だ。7の段は覚えにくい。7は他の数と相性が悪いのだ。ピザを7等分しようとすると、一切れ当たりの中心角(度)は
360 ÷ 7 = 51.4285…
となる。割り切れない。1~10の整数で、360を割り切れないのは7だけだ。7が憎い。
以前、この性質を利用してオリジナルゲームを作ったことがある。
ピザをいかにきれいに7等分できるかを競うゲーム、Cut7。(実際に遊べます。)
ピザを7等分し、そのきれいさによってピザポイントが採点される。初心者はピザポイント80越えでかなりすごい。
はじめはギャグのつもりで作ったゲームであったが、意外と実用的かもしれない。たとえばサイゼリヤではピザを自分で切るスタイルだ。筆者はかつて、サイゼリヤに集まったのが7人で、本当にピザを7等分する機会があった。ゲームでの練習の甲斐ありうまく切れた。
また、誕生会に集まったのが7人のとき、ホールケーキを7等分する必要がある。ピザ7等分の技術はケーキ7等分にも応用できる。美しい7等分をキメた暁には会場は大いに盛り上がり、誕生日のゲスト以上に祝われること間違いなしだ。
ビギナーがやるとこうなる
もったいぶるようで申し訳ないが、まずは7等分に慣れていない人がやるとどうなるかについて見てほしい。
ライターのナミノリさん、江ノ島さんにお願いし、何も教えずに7等分に挑戦してもらった。
ナミノリさんは鱒寿司で挑戦。パッと見よさそうな気もするが、右上のほうが詰まってしまっている。
切った順番も教えてもらった。4刀目で180度になり、大胆な軌道修正の後が見られる。
やはり4刀目で焦りの様子。しかし後で解説するが勝負は2刀目から始まっている。
ナミノリさんの挑戦を勝手ながら採点する。中心角を測り、ゲームでのピザポイントに換算すると74.4点。きびしい戦いだ。
簡単にピザポイントを計算するサイトも作った。
江ノ島さんはサイゼリヤのピザで挑戦。こちらも180度で3切れと4切れに分かれてしまっている。これは誰もが通る道である。
しまいには江ノ島さんがラム肉苦手という新事実が明らかになるのであった。
このようにピザの7等分は激ムズなのである。
ピザをきれいに7等分する方法
ここからが本題。筆者が自作ゲームでの鍛錬を重ねてたどり着いた、ピザをきれいに7等分する方法についてお伝えする。
1刀目。中心からまっすぐ下に切る。完璧に真下じゃなくても大丈夫。実戦では真下になるように後から皿を回転させればよい。
2刀目にして最大の鬼門である。この一刀ですべてが決まると言っても過言ではない。とにかく13度を意識して切る。どうして13度なのか、また、どうすれば13度を意識できるのかについては後ほど解説する。
2刀目の線と左右対称になるように切る。この時点でハンドルのような切れ目が出来上がる。
1刀目と2刀目の中間を意識。慣れない人は皿を回転させて左右のバランスを取りながら真下に切ろう。
反対側も同様。
ここから上側を3等分する。まず、4刀目との左右対称を意識して切る。
最後は中間を意識。お疲れ様でした。
2刀目の13度 だけはどうしても鍛錬が必要な部分である。これに関しては本当に申し訳ない。しかし、この方法に慣れれば誰もが簡単に美しい7等分ができるのだ。
GIFにしたので頭に叩き込もう。テストに出ます。
最初の3刀でハンドルを作り、その後は区画を2等分・3等分するイメージ。
やっぱり気になるのが2刀目の13度だ。まず、どういう原理で13度なのかを解説すると、こうなる。
中学一年生の幾何数学のお話。厳密には13度より小さく12.86度。
では、どうやったら 13度を意識できるのだろうか。筆者の身の回りの様々な物について、13度が隠れていないかを探してみた。
ミンティア、31度。全然ダメ。
カレーのルウの箱、ダメ。
ティッシュボックス。ダメ。
エアコン(SHARP製)のリモコン。おしい。
なかなか見つからない。13度は意外と小さい。う~ん。何とかならないものか。藁にもすがる思いでインターネットで13度について調べたところ、改札のICカードをタッチする部分の角度が13度らしい。
この「ピ!」の部分はちょっとだけ傾斜ついている。それが13度。
読み取りエラーを起こしにくい傾斜として、試行錯誤の末、13度にたどりついたらしい。いろんな研究があるんだなぁ。
2刀目は改札のタッチする部分を思い描きます。この画像を目に焼き付けよう。とにもかくにも13度。この13度ですべてが決まる。
もう一つのアドバイスとして、「13度は思ったより小さい。」を覚えておくだけでも実戦でかなり使えます。 自分の思う13度よりも少し小さく切ってみる。すると、それこそがちょうどよい13度だったりする。もはや気持ちの問題である。
攻略法を使ってゲームで無双しよう
先ほどの攻略法を使えばだれもが簡単に7等分をすることができる。試しにゲームでやってみよう。
美しすぎる…。
93.3点を獲得。若干の改善の余地はあるが十分に高得点だ。
ゲームを実際にやった人ならわかると思うが、93.3はかなりの高得点である。この攻略法を使わなければなかなか出ない。
証明のしようがないが、この93.3は何回か挑戦した中のベストスコアではなく、画面録画をして一発目で出たスコアだ。この攻略法には再現性があり、毎回きれいな7等分ができる。
実際にピザを7等分しよう
ではこの攻略法で実際のピザも切ってみる。サイゼリヤで挑戦。
マルゲリータピザ税込み400円。一発勝負。
大事なことを忘れていた。現実世界のピザは思ったより丸くない。まずはこのピザが完全な円だと思い込む必要がある。
目の前のピザと向き合い、ゆっくりと深呼吸をする。するとそのうち円に見えてくる。
では、切らせていただきます。
1刀目。まっすぐ下に。
2刀目。すべてはここで決まる。渾身の13度をキメよう。「13度は思ったより小さい…13度は思ったより小さい…13度は思ったより小さい…」と唱えながら切る。いい感じ。
3刀目。左右対称を意識。
4刀目。中間を意識。
5刀目。中間を意識。
6刀目と7刀目の順番が逆になってしまったが全く問題ない。
7刀目。
どうでしょうか。結構良いんじゃないでしょうか?
結果発表
7切れそれぞれの中心角を求め、ゲームでのピザポイントと同じ採点を行う。
それぞれの中心角。線が中心で交わっていないのは、切った後にピザを少しずらして「切り離されている感」を演出しようとしたためです。
ピザポイントを計算するとこうなる。86.2点。
ちなみにピザポイントの計算式がどうしても気になる人のために載せておく。理想的な角度とのズレを13乗している。「13」はマジックナンバーでゲーム性を考慮し設定した。
86.2点だ。90点には届かなかったけれども、かなりいいスコアといえる。これを実戦でいきなり出せたのは大きな自信につながる。
感想戦。果たして肝心かなめの「13度」はできていたのだろうか。
9.8度。13度(厳密には12.86度)より3度も小さい。
結局この3度が最後まで響いた。 上半分の点数が伸びなかったのはこのせいだ。「13度は思ったより小さい」を意識しすぎて小さくしすぎてしまった。まだまだ改善の余地あり。精進します。
今後の課題
実は前述の攻略法には大きな落とし穴がある。
ピザの中心位置を特定する方法がないのだ。ゲームではピザの中心位置が最初から決まっているので問題なかったが、現実では中心位置の特定も必要となる。
さらにもう一つ気を付けるべきことがある。今回の方法はあくまでも生地の7等分であり、具の7等分ではないということだ。いくら生地を7等分したとしても、ペパロニの数が均等でない場合、新たな争いが巻き起こるかもしれない。今後の課題とさせてください。
真の7等分へ向け、フリーハンドピザ7等分道はまだまだ続く…。