花火は捨てた!
パイプラインというものがある。石油や天然ガスをパイプで数百キロ以上も運ぶものだ。中学や高校の地理の教科書に載っていたと思う。動物が通れるように、パイプが高いところにあったりする。
これをぜひ見てみたい。教科書で見たパイプラインを生で見てみたいのだ。憧れのアイドルに会えるような感じだ。写真でしか見たことがなかったものを、この曇りなき眼に焼きつけるのだ。
地理の授業が好きだった。勉強は残念ながら得意ではなかったけれど、地理だけは異常にできた。地理だけはテストの点数がよくて、当時住んでいた大分県でベスト10に入った記憶がある。地理の地主なのだ。
地理で学んだ中で好きだった一つが「パイプライン」だった。ロシアやアラスカなどにある雄大なやつだ。日本にもパイプラインはあるけれど、地理の教科書に登場するようなパイプラインとは違う。あのトナカイが通るようなパイプラインを見たいのだ。
数年前にパイプラインを見たくてロシアに行った。残念ながらこのパイプラインは石油や天然ガスではなく、お湯と水を運ぶパイプラインだったようだ。地元の人に聞いたので言葉がわからず確かではないが、そう言っている気がした。
地理の教科書で見た、あのパイプラインを見てみた。その思いは募り、ついにアラスカに行くことにした。アラスカにはトランスアラスカ・パイプラインシステムという、アラスカの南北を縦断する1300キロにも及ぶパイプラインが走っているのだ。
もうチラッと見えていると思う。アラスカのフェアバンクスという街にパイプラインが走っている。ちなみに先に載せたトナカイとパイプラインの写真もアラスカのもの。動物の行き来ができるように、高い位置にパイプがあるのだ。
このパイプの中には原油が流れている。そして、人口の建造物では万里の長城の次に長いのがこのパイプラインだ。万里の長城は2万キロくらいあるらしいので、1300キロは短く感じるけれど、十分に長い。東京から鹿児島くらいの距離だ。
パイプラインはずっと地上を通っていると思ったけれど、行ってみたら途中から地中に潜っているところもあった。教科書では知ることのできない部分も、現地に行くとあるのだ。地中は地中で管理とか大変そうだけど。
写真でしか見たことのない人に会うと意外と身長が高いんですね、とかがある。今その感じだ。これが人なら握手したい。それほどの感動がある。写真をバンバン撮った。憧れのツーショット。他に観光客は全然いなかったけれど。
上記は「ピグ」というもので、パイプの中を掃除したりするものらしい。このようなものがあるのも知らなかった。行くと新たな発見があるのだ。ありがとう、パイプライン。今後も世界中のパイプラインを見ていきたい、と強く思った。そう、これを愛と呼ぶんだぜ。
パイプラインを見て満足した。この国では今まで写真などでしか知らなかったものを生で体験できるのかもしれない。ということで、今度は絵や話でしか知らなかった、サンタクロースに会いに行くことにした。
フェアバンクスには本物のサンタクロースのいる施設があるのだ。絵や話でしか知らなかったサンタが年中いる。子供の頃にお世話になったサンタさん。ゲームが欲しかったけど、工具箱をくれたサンタさん。おもちゃが欲しかったけど、靴をくれたサンタさんがいるのだ。
ここを訪れた時はすでにクリスマスは終わっていたけれど、このお店ではクリスマスは継続中だった。年中クリスマスという、クリスマスのありがたみが減りそうな施設だ。そして、いよいよサンタさんとご対面だ。工具箱と、靴ありがとう。
サンタさんが夫婦で座っていた。サンタさんって結婚しているんだね。年齢的には確かに結婚していても不思議ではない。子供に大人気で、みなサンタさんの膝に座り写真を撮っていた。サンタさんは憧れの存在なのだ。
膝に座った。体重をかけすぎると痛い的な顔をしていたので、いい感じで座った。やっと会えましたね、という感動だ。写真は無料で撮れて、さらに飴までくれた。サンタさんは太っ腹だ。私も将来はサンタさんになりたいと思う、そう、あなたのね!
サンタクロースハウスの脇にはトナカイがいた。サンタとトナカイはやはりセットだ。仕事柄よく鹿は目にするし、食べるのだけれど、トナカイとはあまり接点がなかった。もっと彼のこと知りたい。トナカイ、英語で言えばレインディアだ。
やはり食べることで一番理解できると思う。ということで、トナカイのホットドッグを食べることにした。アラスカでは割と普通に食べられているらしい。現地の方に話を聞いた時、トナカイは雑食なので肉が臭いと言っていたけれど、どうだろうか。
見た目は普通だ。ちなみにスーパーなどを巡ってトナカイの肉を探したけれど、それは売っていなかった。ただ大晦日のカウントダウンイベントに行ったら、このように普通に売っていた。さて、食べようではないか、トナカイを。
美味しかった。ソーセージだからか、臭みなどはなく、普通に美味しい。トナカイと言われなければ気づかないかもしれない。ただこれはトナカイなのだ。初めて食べたのだ。そのため今後はトナカイを見る度に、あいつは美味いという目で見てしまうことだろう。そう、それを食欲と呼ぶんだぜ。
トナカイのソーセージを食べたのは、大晦日のカウントダウンイベントだった。露店があって、ステージではバンドが歌っている。多くの人が集まっている。ちょうどこの日の午後、私は花火を買い求めていた。
車でアラスカを走っていると、簡易と思われる花火屋がたくさん並んでいた。どうやら年始を迎えるにあたり、花火で盛り上がるらしい。日本でもカウントダウンのイベントで花火が上がったりするけれど、ここでは自分たちで花火をやるのだ。
知らない国での年越しで、このあと、カウントダウンイベントに行くことにしていたので、私も花火を買うことにした。盛り上がりたいじゃない、せっかく来たのだから、一緒に盛り上がりたいじゃない。
そして、先ほどのトナカイのホットドッグを食べた直後に時間が戻る。カウントダウンイベントは大変な盛り上がりだった。人も多い。音楽は私の知らない曲だったけれど、みなノリノリだった。花火も上がった。
誰も、誰一人として、私が日中買ったような花火をしていないし、持ってすらいなかった。打ち上げ花火だけだった。あんなに売っていたのに、あんなに買っていたのに、誰も花火をせずに、ステージ脇の画面にハッピーニューイヤーの文字が浮かび上がる。
写真だけを見れば、みんなで年越しした! みたいになっているけれど、冷静に時計を見れば20時だった。そして、花火が終わるとイベントは終了でみんな帰って行った。花火は各自家でやるのだろうか。私はホテルだったので、それはできないけど。謎の年越しだった。そう、これを無駄遣いと呼ぶんだぜ。
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