オーロラソースは最高です!
オーロラというものがある。夜空に緑色や赤色の透明なカーテンのようなものが現れる大気の発光現象だ。日本でもごく稀に、本当にごく稀に観測されるらしいけれど、基本的には南極や北極に近い高緯度地域に出現する。
そんなオーロラを見てみたい。美しいと聞くし、その下でオーロラソースを作りたい。オーロラソースが好きなのだ。だからこそ、オーロラの下でオーロラソースを作りたいのだ。
オーロラソースというものがある。ご存知マヨネーズと、お馴染みケチャップを混ぜたものをオーロラソースと呼ぶ。茹で野菜にかけてもいいし、ポテトフライなどにつけて食べても美味しい。お好み焼きにもいい。万能なソース、それがオーロラソースだ。
これが好きなのだ。私はオーロラソースが好きなのだ。マクドナルドのチキンナゲットや、ジャガイモを薄くスライスして油で揚げたものにつけて食べるのが好きだ。オーロラソースはもはや芸術なのだ。
ということで、オーロラソースを作りに行こうと思う。もちろん自宅でも簡単に作れるのがオーロラソースの魅力だ。しかし、せっかく「オーロラ」ソースという名前で呼ばれているので、本当のオーロラの下でオーロラソースを作りたいと思う。
オーロラの下でオーロラソースを作るべく、アラスカにやってきた。写真3枚で到着しているけれど、本当はシカゴで乗り換えたりしたので、24時間ほどかかっている。そして、到着したアラスカは当然寒かった。
到着したのはアラスカの第一の都市「アンカレッジ」なのだけれど、残念ながらアンカレッジではオーロラは厳しいので、第二の都市「フェアバンクス」に向けて、車を走らせた。片道600キロくらいだ。どんどん寒い方へ行く感じだ。
ちなみにアラスカの州都はアンカレッジでも、フェアバンクスでもなく、「ジュノー」という街。遠いので今回の旅では一切出てこないけど。九州生まれ、九州育ちで雪が未だに珍しい私が、雪道をひたすら運転する。スタッドレスでも結構、滑るんだね。3回死ぬと思った。
そのうち1回の死ぬはパンクだった。しかも何にもない場所で。オーロラの下でオーロラソースを作りたいだけなのに、こんなにも大変なのかと驚いていた。軽い気持ちで来たのだ。出来心だったのだ。そんな取調室の会話のようなことを思いながら、フェアバンクスに到着した。
フェアバンクスに着いたら、いよいよオーロラということになる。日本からの移動を含め、すでに疲れているけれど、メインはここからだ。オーロラの下でオーロラソースを作りに来たので、ここからが本番なのだ。
めちゃくちゃ寒い。以前、気温計の目盛りの上が足りない50度以上の砂漠に行ったことがあるのだけれど、下に数字が足りないここの方がキツい。寒すぎて痛いのだ。本当に出来心だったのだ。魔が差しただけなのだ、と恋人への言い訳みたいなことを思っていた。
フェアバンクスに来たらオーロラが出まくっていると思っていた。都内のコンビニくらいの勢いでオーロラ。オーロラだらけで、オーロラのありがたさがなくなるとすら思っていた。でもね、そんなことないの。全然ないの。オーロラ全然出ないの。
全く出ない。いつ夜空を見ても、暗いだけ。日の出が11時で日暮れが15時前と日照時間は短くだいたい暗いフェアバンクスなのだけれど、ずっとそのまま。ずっと暗い空なのだ。緑色や赤色の透明なカーテンは全然輝かないの。ずっと黒色。
何日もオーロラを待った。場所が悪いのかと考え場所を変えたりした。しかし、いつになっても暗い空のままで、やがて私も暗くなった。高校時代くらい暗くなった。友達がいなくて休み時間の度にレモン石鹸で手を洗っていたあの時代くらい暗い。
結局1週間以上、寒いフェバンクスで夜型の生活でオーロラを見るべく粘った。朝方寝て、昼過ぎに起きて、夜になると車で開けた場所に出かけ、オーロラを待つ。そんな生活を続けた。オーロラの下でオーロラソースを作りたいだけなのに、めちゃくちゃ大変だ。
自力ではもう無理だと思い、現地のオーロラツアーに申し込んだ。自力は諦めた。オーロラソースを作るには自力はもはや無理なのだ。オーロラソースは簡単に作れると書いたけど、そんなことないのだ。めちゃくちゃ難しいのだ。
今までよりも、人里離れた山の上に来た。すべての準備は整った。ツアー代を1万円くらい払ったけれど、すべてはオーロラソースのため。最高のオーロラソースのため。さぁ、出るのです、オーロラ。こちらの準備は整っています。
これがオーロラの下で作ったオーロラソースだ。驚くことに味は日本の暖かい部屋で作るオーロラソースと全く同じ味だった。なんならそれにつけるチキンナゲットが冷たくなっている分、暖かい部屋の方が美味しい気がする。
念願のオーロラの下でのオーロラソースだった。苦労に苦労を重ねたオーロラソースだ。美味しいを超える何かがあった気がする。美味しいとかは超越しているのだ。そういう問題じゃないのだ。特別なオーロラ印のオーロラソースなのだ。
ツアーから戻り、次の日は普通に街外れのホテルに泊まった。もう気分的には満足だったけれど、一応外を見ていた。あれだけ苦労したオーロラだったので、もうオーロラは出ないと思っていた。オーロラとは追いかけても追いかけてもの存在と気がついたのだ。
ツアーじゃないのに、普通にオーロラが出た。オーロラにはレベルがあり、実は毎日オーロラは出ているけれど、そのレベルが低いと見ることができない。また出てもすぐ消えるので、タイミングが合わなければ見ることができない。それがバッチリ合えば普通に見ることができるのだ。
薄いけれど、オーロラが写っているのがわかるだろうか。肉眼ではもっとよく見えているんだけれど、撮影がかなり大変で薄くしか写らなかった。ただオーロラの下でオーロラソースを作っているのだ。感動の瞬間なのだ。ぜひ泣いてください。これをするために自腹で行ったことを含めると、私は泣けてきます。現場では大興奮だったけど。
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