キングジョーを塗っています
ウルトラセブンにキングジョーというロボット怪獣が登場する回がある。ペダン星人が地球人に復讐するため送り込んできたロボット怪獣、それがキングジョーだ。
というストーリーを知らなくても、その特徴的なフォルムとかっこよさから、キングジョーは時代を超えて人気の怪獣である。僕も子どもの頃にソフビを持っていた。
そんなキングジョーに好きに色を塗って、まったく別のキャラクターに仕上げている人がいる。サメ映画ルーキーさん(Twitter)である。
サメ映画ルーキーさんとは8月に一緒にサメ映画のイベントをやるのだが、打合せの時にこのキングジョーの話を聞いて、ぜひその活動を見せてほしいとお願いして今回のインタビューが実現した(サメ映画イベントの詳細はこちら)。
最初は明確なモチーフがなかった
ーーまさかこんなに数があるとは思いませんでした。いま何体あるんですか。
サメ「40体以上あると思います。キングジョーは今年で55周年を迎えるので、最低でも55体は塗りたいなと思っています。」
ーーちょっといろいろ聞きたいことがありすぎるんですが、せっかくなので作品を見せてもらいながら聞かせてください。最初に塗ったのはどれですか?
サメ「最初はこれですね。単純にピンクだと可愛いかなと思って塗ってみたのが始まりです。」
サメ「この頃はまだ明確なモチーフがなかったですね。こんな配色だったら可愛いかなと思って塗ってみた、くらいの動機だったと思います。青空とか木彫りもそんな感じですね。」
ーー青空とか木彫り?
サメ「はい。このあたりです。」
すごい。
僕もかつて木彫りの熊を塗ったことがあったが(木彫りの熊をエヴァンゲリヲンにする)、逆に塗って木彫りに見せているのだ。
サメ「これは電柱ですね。このあたりから具体的なモチーフを決めて、それをキングジョーに落とし込んでいくようになりました。」
ーーえっと、これは?
シェイプはほぼそのままなのに、色を変えるだけでプリンに見えてしまうのがすごい。
ーー塗るのにどのくらい時間をかけるんですか。
サメ「だいたい一体作るのに一週間くらいのペースですね。仕事終わって家に帰ると20時くらい。そこから作業しはじめて、23時過ぎまで塗って、という生活をここ半年くらい続けています。」
他のキャラクターをキングジョーに落とし込んでいく
サメ「キングジョーに他のキャラクターを落とし込んだ最初がこれです。同じロボットなのでいけるかなと思って。」
ーーこれはあれですよね。
サメ「そうですね。色を塗っただけでシェイプはいじっていません。それなのにどことなくドラえもんに見えるんです。」
ーーぜんぜん違うのにわかるからおかしいですね。これはまさかボクシングマンガの。
サメ「矢吹ジョーです。キングジョーと矢吹ジョー、ジョーつながりです。キングジョーって足元がブーツ履いてるみたいな形してるんですよね。それがピッタリ合いました。」
ーーこれなんかは、いったいどういうことでしょう。
サメ「元祖ゴジラのスーツアクターだったミスター・ゴジラこと中島春雄さんです。これは特撮好きの友人に好評でしたね。」
ーーこれはウルトラマンですか?
サメ「ウルトラセブンですね。セブンがガッツ星人に捕らえられた時のポーズです。」
ーーそれをキングジョーで再現したと。
サメ「そうです。キングジョーはウルトラセブンから見たら敵なんですが、一緒にしちゃうとそんなに違和感がなかったです。」
読者のみなさんもそろそろサメ映画ルーキーさんのやっていることがわかってきたと思う。
では問題です。これはいったい何を落とし込んだキングジョーでしょうか。
サメ「サトシとピカチューです。ピカチューは電気つながりでエレキングという怪獣をベースにしました。」
初期衝動が続くうちに仕上げるのがコツ
ーー塗るときのコツとかポイントとかってありますか。
サメ「あまり凝りすぎると完成しないから、だいたいこんな感じでいいや、ってところで終わるようにしています。あ!これ作りたい、という初期衝動があって、塗っていくうちにその衝動が枯れてしまう前に終える感じですね。」
サメ「キャラ選びにおいては配色だけでイメージできるくらいインパクトがあって有名なものを選ぶようにしています。でも人の形をしているものであれば、だいたいがキングジョーで置き換えることができるなとも思いますね。」
ーー作品の中で特に気に入っているものはありますか。
サメ「そうですね、この仮面ライダーなんてシンプルに塗っただけなんですが、かっこいいですよね。」
ーー素材となるキングジョーはまとめ買いしてるんですか。
サメ「会社帰りにヨドバシに寄って、吊るしのやつを一番前だけ残して全部買い占めています。」
ーー一番前だけ残すのはなぜ?
サメ「本当にキングジョーがほしかった子どもが買いに来たら可愛そうじゃないですか。」
制約の中で生まれる多様性がおもしろい
サメ「ある制約があって、その中で生まれるバリエーションみたいなものが好きなんだと思います。サメ映画もそうですよね。サメっていうしばりの中で、みんなどうやっていこうか頭をひねって考える。その結果、サメなのにトウモロコシ畑に現れたり空を飛んだりするわけです。」
なるほど。ソフビとかプラモデルのペイントってリアリティを追求していく方向がもちろん王道だと思うのだけれど、こういうまったく違った方面に伸びていく枝も大切に愛でていきたいなと思いました。
サメ映画のイベントやります
そんなサメ映画ルーキーさんと、今度サメ映画のイベントをやります。ぜひ見に来てください。