特集 2023年7月4日

大須の電気街に突然現れる基板のジャングル、実はスゴ腕の修理屋さん

趣味で電子工作をやっていることもあり、電気街が好きだ。東京の秋葉原、大阪の日本橋、香港の深水埗。同じ電気街でもそれぞれ個性があって楽しかったけど、名古屋の大須にはまだ行ったことがなかった。

そして先日、満を持して訪れたのだが…そこですごい光景に出会った。
 

インターネットユーザー。電子工作でオリジナルの処刑器具を作ったり、辺境の国の変わった音楽を集めたりしています。「技術力の低い人限定ロボコン(通称:ヘボコン)」主催者。1980年岐阜県生まれ。
『雑に作る ―電子工作で好きなものを作る近道集』(共著)がオライリーから出ました!

前の記事:職人が作る手作り電球とは(デジタルリマスター)

> 個人サイト nomoonwalk

唐突な基板のジャングル

第一アメ横ビルというビル内を散策していた時のことだ。

DSC08192.JPG
ここ

中に電気屋や電子部品屋がならぶまさに電気街という感じのビルで、東京でいうとラジオデパートみたいな感じだ。

その1Fの奥の方、エスカレーター脇に見えた光景が唐突すぎて、思わず足を止めた。

なにかの基板がうずたかく積みあがり、クリスマスツリーのお化けみたいになっている。なにごと…!?
側面にまわると、奥の方まで基板、基板、基板…。

まるでジャングルのような密度で、無数の電子基板が上からつるされている。

とにかくすごい量の基板だけがあり、これが店なのかどうかもわからない。いや商業ビルの中にあるから店なんだろうけど、僕が知っている「店」の概念と違いすぎだ。

あと、人もいない。

店のまわりをぐるっと回って、店員さんがいそうなすき間を見つけた

「すみませ~~ん」と声をかけてみたが、返事はない。いったいどういうことなんだ…。

あまりのインパクトに、「これを謎のまま残しては絶対帰れない」というモードになってしまった。休業日という可能性もあったが、あとでお店の人が戻ってくることに賭けて、大須の街をぶらぶらしながら待った。

他の電子部品屋を見たりハトに襲われたりしては店の様子を見に戻ること数回。時間にして2時間ほどたったころだ。いよいよ一人の男性が基板の隙間に入っていくのが見えた。

石川
すみません!お店の方ですか?
男性
そうだよ。いまコロナのワクチン打って戻ってきたとこ。

不在の理由がいきなり意外すぎたが、このあと幸いにもお時間をいただき、インタビューをさせてもらえることになった。待ってよかった…!

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凄腕の修理屋さん

「KDS」店主の小坂井さん。昭和52年からここでお店を続けている。
石川
ここは何屋さんですか?
小坂井
むかし販売やってたけど、いまは修理屋

なるほど、修理屋だったのだ。大量の基板やパーツは、交換部品としてストックされているのだ。一気に謎が解けた。

石川
おもに何の修理ですか?
小坂井
最近はビデオだね。普通は直すものじゃないじゃない?メーカーも直してくれんしな。
(販売終了から)5年以上もたつとメーカーも部品がないって言って断っちまうからな。それでおれんとこに来るわけよ。

メーカーにも断られてしまうような古い機器でも直してしまうのが小坂井さん。その腕を頼りに、お客さんは全国からやってくるそうだ。この日は店頭に一台のビデオデッキと一緒に置手紙があり、「見積お願いします」というメッセージと奈良県の住所が書かれていた。

小坂井
お金のこと言わなきゃなんでも直すよ。
俺が5万円って言って「はい直してください」って言ったら直るし、「1万円で何とか」って言ったら直らない。

「じゃあやーめた」って言ったら「お願いします、払います」って。そういうこともいっぱいあるよ(笑)

まるでブラックジャックみたいだ。
そんな確かな腕前と、そしてこの店構え。国内のテレビや新聞はもちろん、フランスのテレビ局が密着取材に来たこともあるという。

⏩ 時代が変われば修理依頼も変わる

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