唐突な基板のジャングル
第一アメ横ビルというビル内を散策していた時のことだ。

中に電気屋や電子部品屋がならぶまさに電気街という感じのビルで、東京でいうとラジオデパートみたいな感じだ。
その1Fの奥の方、エスカレーター脇に見えた光景が唐突すぎて、思わず足を止めた。


まるでジャングルのような密度で、無数の電子基板が上からつるされている。
とにかくすごい量の基板だけがあり、これが店なのかどうかもわからない。いや商業ビルの中にあるから店なんだろうけど、僕が知っている「店」の概念と違いすぎだ。
あと、人もいない。

「すみませ~~ん」と声をかけてみたが、返事はない。いったいどういうことなんだ…。
あまりのインパクトに、「これを謎のまま残しては絶対帰れない」というモードになってしまった。休業日という可能性もあったが、あとでお店の人が戻ってくることに賭けて、大須の街をぶらぶらしながら待った。
他の電子部品屋を見たりハトに襲われたりしては店の様子を見に戻ること数回。時間にして2時間ほどたったころだ。いよいよ一人の男性が基板の隙間に入っていくのが見えた。


不在の理由がいきなり意外すぎたが、このあと幸いにもお時間をいただき、インタビューをさせてもらえることになった。待ってよかった…!
凄腕の修理屋さん



なるほど、修理屋だったのだ。大量の基板やパーツは、交換部品としてストックされているのだ。一気に謎が解けた。


メーカーにも断られてしまうような古い機器でも直してしまうのが小坂井さん。その腕を頼りに、お客さんは全国からやってくるそうだ。この日は店頭に一台のビデオデッキと一緒に置手紙があり、「見積お願いします」というメッセージと奈良県の住所が書かれていた。

「じゃあやーめた」って言ったら「お願いします、払います」って。そういうこともいっぱいあるよ(笑)
まるでブラックジャックみたいだ。
そんな確かな腕前と、そしてこの店構え。国内のテレビや新聞はもちろん、フランスのテレビ局が密着取材に来たこともあるという。