特集 2023年12月1日

元地元民による、おおむね1万円で仙台の旅【高速バスツアー】

高速バスの旅が好きだ。
もちろん快適さや速さでは新幹線に劣るが、バスの速度でしか感じられない面白さもある。

関東に住んでいた大学生時代、地元である仙台のことが好きすぎて、格安の夜行バスを駆使してしょっちゅう遊びに行っていた。
これは、東京都内から夜行バスで仙台に行って帰ってくる場合の、筆者のお気に入りルートの解説記事である。

日本ソムリエ協会認定ワインエキスパートの花屋。花を売った金で酒を買っている。

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新宿か、八重洲か

都内から仙台へ行く場合、だいたい出発地はバスタ新宿か、バスターミナル東京八重洲となる。
パスタは立地的に便利であるものの、平日でも混雑する傾向にあるため、筆者としては八重洲の方がおすすめ。

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この、夜中のオフィスビル然としたそっけない清潔さ。

今回乗るバスは平日の夜行便。だいぶ早くに予約したので保険をかけても片道3,220円だ。ちょっと心配になるくらい安いが、まあ連休などの特別料金とならされて帳尻が合うものなのだろう。

東京から仙台へ行く場合、途中で栃木の佐野SA、福島の安達太良SAに停車する可能性が高い。10分ほどの限られた時間で真夜中の駐車場に飛び出すのは楽しいものだ。

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11月の東北の夜。暖房が効きすぎた車内から一歩踏み出すと肺の中まで凍るよう。

筆者はかつて、車内に眼鏡を置き去りにしたままSAのお手洗いでコンタクトレンズを外してしまい、どれが自分の乗るべきバスなのかまるで分からなくなったことがある。3回ほど間違えて乗り込みかけ、出発時刻ギリギリになってようやく正解を引き当てた。

夜行バスについて筆者が教えられるTIPSは「眼鏡を忘れない」のみである。

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冬のSAは星がきれい。寒いのにわざわざバスを降りて空を見上げる人がいて、そっと(わかります……)と念を送った。

 

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個人的・仙台観光黄金ルート解説

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朝6時半。うとうとしていたら仙台に着いた。

まずは朝食でも食べに行きたいところだが、駅周辺のほとんどの飲食店はまだ開いていない。ではどこを目指すべきか。

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駅を正面から見て右側、BiViという建物内にある……
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半田屋!

宮城県在住の方ならきっとご存じだろう、大衆食堂半田屋。BiViの店舗は24時間営業なので、早朝に着いてもすぐ暖かいごはんにありつける。

半田屋はIKEAのレストランのようなスタイルで、自分で食べたいものを取りレジに並ぶスタイルの飲食店だが、とにかくリーズナブルな上においしい。ビジネスホテルの朝食ビュッフェのような趣がある。

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調子に乗っていつもお盆に載せすぎるのだが、6品頼んでぴったり800円。豚汁はこのサイズでハーフだし、ご飯はミニ盛りだ。

周囲を見たら、出勤前と見られるスーツ姿の人が焼き魚を食べていたり、学生さんと見られる人が大盛りのごはんとフルサイズの豚汁を並べて迫力ある朝食をとっていたりした。パワーだ。

少し甘めの味付けが、夜行バスに揺られた身体に染みる。温かいごぼう茶も飲み放題。

とにかく休憩しつつ腹ごしらえがしたいという方には半田屋直行ルートがおすすめだが、複数人かつ観光目的の方は、仙石線に乗って塩竈市にある塩釜水産物仲卸市場に行くのがいいだろう。
一般の人でも立ち入り自由の市場で、ご飯だけ買って海鮮丼の「具」を求めうろうろすることができる。
雨天でなければ有料で使えるBBQコーナーがあるから、市場で買ったばかりの魚介類を焼いて食べるのもおすすめ。

 

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朝食を食べ終えたところでまだ7時過ぎだ。商業施設の開店を待つには早すぎるので、次なるおすすめスポットをご紹介したい。

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まずは地下鉄南北線、泉中央駅行きに乗る。仙台の交通系ICキャラクターはICSCA(いくすか/仙台弁で「行きましょうか」の意)で、スズメのキャラクターがたいへんかわいい。おそらく伊達家の家紋である「竹に雀」に由来するが、それはそうと本当にかわいい。

足元だけ暖房が効いていてちょっと熱い地下鉄に乗ること十数分、

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降車駅は旭ヶ丘。地下鉄と言いつつ地上に駅があり、大きな窓からまばゆい景色が飛び込んでくる。
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一歩外に出れば、そこは台原森林公園。

台原森林公園は、約60ヘクタール(ディズニーランドより少し大きいくらい)を誇る実に広大な公園で、そのうち50ヘクタールが国有林だ。ほとんど自然に近い森林が、仙台駅からわずか10分ほどの位置にこつぜんとある。さすがは杜の都である。

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筆者はかつて旭ヶ丘に住んでいたのだが、この公園は朝に散歩に行くと本当に気持ちがいい。静かで、空気が澄み渡り、木と枯れ葉の匂いでいっぱいなのだ。
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大池を渡って森の中の遊歩道へ歩みを進める。
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鴨が日向で堂々と寝ており、人間の方がちょっと萎縮してしまう。
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遊歩道はいくつも分岐して存在しているが、メインの中央遊歩道以外はかなり道が険しい。ちょっとした登山のようなルートもある。
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メインルートを歩いていけば旭ヶ丘駅に戻るのに1周約1時間。整備されているので普段使いのスニーカーでも問題なく歩ける。
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周囲はほとんど自然の状態の森であり、癒しの概念を具現化したかのような場所だ。
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そりゃあもうでっかい葉っぱも落ちている。
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途中、ちょっと良さそうなルートを見つけて入ってみたくなるのだが、
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ふと横をみれば意味深な注意書きがしてあることも。ちなみにこの立て看板の道に入ったことがあるのだが、道というよりも「ちょっと草が倒れている部分」に近い風情だった。
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とつぜん仙台文学館へのルートを推奨されるも、
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道の先には何も見えない。果たしてどのくらい歩くと文学館に着くのだろうか。狐や狸に化かされているんじゃないか。そんな気持ちさえしてくるのだ。
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安全な森の中を一人で歩くというのは実に愉快だ。11月の朝は日差しがまだ暖かく、色とりどりの紅葉を眺めることもできた。

わざわざ仙台まで行って公園に、と思われるかもしれないが、夜行バスを降りてから朝の台原森林公園を散歩するのはたいそう気持ちがいい。陳腐な言い方だが心洗われるというか、溜まったストレスがずるずる流れ落ちて腐葉土に吸われていく感じがする。

 

⏩ 公園内にこつ然とそびえたつ科学館

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