デジタルリマスター 2023年9月28日

日本人の3人に1人は痔にかかっています(デジタルリマスター)

 

2009年6月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。

1970年神奈川県生まれ。デザイン、執筆、映像制作など各種コンテンツ制作に携わる。「どうしたら毎日をご機嫌に過ごせるか」を日々検討中。


前の記事:新宿のランドマークが消える瞬間(デジタルリマスター)

> 個人サイト すみましん

僕は今、肛門科の前にいる。ここ1週間くらい肛門が痛いのだ。イボ痔である。肛門の入口に大豆大のイボが出来てしまった。市販の薬を塗ってはみたものの、イボがおさまる気配がない。ようやく椎間板ヘルニアが落ち着いてきたというのに、である。

当サイトのウェブマスター林さんも、かつて痔を患った経験があるという。僕がイボ痔になったことを伝えると、いつになく饒舌にイボ痔のイロハを教えてくれた。イボ痔は3時、6時、11時の方向に出来るらしく、林さんは3時にイボが出来て相当痛かったらしい。発症した朝は、全ての予定をキャンセルして病院に直行したという。

病院に行くのは怖くなかったんですか? と聞くと、痛みが強過ぎて「とにかく病院に行かなくては」としか考えられなかったのだとか。ちなみに僕のイボは11時に出来ている。林さんが3時で、僕が11時だ。

「絶対病院に行った方がいいです!」

と林さんは強い口調で言った。林さんと一緒に仕事をするようになって約10年、これほど強く意見されたことはない。

肛門科に行かなくては。

でもどうだろう、僕のイボは林さんのイボに比べて、まだ発展途上の段階にあると思っている。我慢出来ないことはない。市販の薬でなんとかならないだろうか?

「ならないです。早めに病院に行ってください」

林さんの口調が更に強くなった。

そうか、行くしかないのか。
しかし、肛門科の門をくぐるには、色々と心の準備が必要だ。

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いざ、肛門科へ
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前日の会話

住(以下11時):明日、病院の予約をしました。

林(以下3時):死ぬほど痛いですよ。

11時:う、いきなりそんな。

3時:痛いから行くのに、そこに指を突っ込まれるわけですから。

11時:え? 突っ込まれるんですか?

3時:突っ込まれます。

11時:でも、僕のは中に出来てるタイプじゃないから。

3時:僕もそうでしたが、突っ込まれました。

11時:困ったなぁ……。

3時:そういえば、待合室が妙に明るいんですよ。待ってる人たちが。

11時:え? 痛いのに?

3時:ちょっとかっこわるい病気なので、せめて明るくしようとする心の動きではないでしょうか。

11時:気軽に声をかけられる雰囲気ですか? 患者同士で。

3時:患者同士はなかったですが、看護婦さんに「診察券いれといたよ!ヨロシク!」とか言っちゃう感じで。

11時:ああ、なるほど。逆に勢い良く攻める感じですね?

3時:オモシロに昇華しようとしてるんでしょうね。

3時:でも、よく見ると斜めに座ってる人が多かった。

11時:あ、やっぱり斜め座りですか。

3時:てやんでぃ!って勢いはあるんだけど、座る時はしどけなく。

11時:想像するとかなりオモシロな光景なんですが…、僕もそっち側なんだよなぁ。

3時:一体感がありましたね。待合室に。

11時:どうなんでしょう?イボと切れる方と、派閥的なものは?

3時:互いに話しはしないので分からないですね。どっちなのかは。

11時:ああ、会話はないんですね。

3時:でも心は通じ合うっていうんですかね。

3時:いぼでも切れてても、同じロックンロールですから。


11時:ロックですか? 痔が?

3時:ロックな感じしませんか?

11時:イボはロックな存在かもしれませんが、それを抱えてる人間はロックじゃない。

3時:うん、ロックじゃない。

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待合室

肛門科の扉を押すと、すぐに受付が見えた。カウンターの奥に女性スタッフが3名立っている。患者さんの姿はなく女性スタッフ全員が僕の方に向いた。いきなり気後れするシチュエーションである。「待合室が妙に明るいんですよ」と林さんが言ってたことを思い出す。明るいもなにも、患者さんは僕だけだ。とりあえず、受付の女性スタッフに症状を伝えないといけない。

「あの、イボ痔が出来たみたいなんですけど」

恥ずかしがったら負けだと思い、出来るだけ強気に攻めてみた。女性は表情1つ変えることなく、「当院は初めてですか?」とだけ聞いた。イボのことよりもまず、初診かどうかが重要なのだ。初めてなので保険証を渡すと、呼ばれるまでソファーで待つように言われた。

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ドーナツクッション

さすがに肛門科だけあって、ソファーにはドーナツ型のクッションがいくつも置かれていた。このドーナツにどれだけの患者さんたちが腰をかえたのだろうか。もちろん僕もドーナツの上に座る。

静かな院内で名前を呼ばれるのを待つ。

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患者が2名来た

しばらくすると、立て続けに2名の患者がやって来た。2人とも受付に診察券を渡してソファーに座った。何度か通院しているのだろう。入って来てからソファーに座るまでの動作に無駄がない。

「診察券いれといたよ!ヨロシク!」

といったいなせな仕草は一切見受けられない。林さんが通っていた病院が特別なのか、この病院だけが暗いのか、それは分からない。いずれにしても、事前に林さんから聞いて想像していた待合室の雰囲気とは全く違う。後から来た2人と心が通じ合えるとも思えないし、もちろん、ロックンロールでもない。

ふと雑誌コーナーに目をやると、「おしりのノート」というA4サイズのノートブックを見つけた。

おしりのノート?

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おしりのノート

「おしりのノート」には患者さんたちからのメッセージが書き込まれていた。ペンションに置いてある思い出ノートのようなものである。しかしそこには「マスターのジャム、おいしかったです」のような楽しい書き込みはない。自分の痔がどんな症状だったのか、治療によってどう回復したのか、そういうことが書かれている。どのメッセージも達筆である。この病院には年配の患者さんが多いのだろう。

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達筆な書き込み

痔の先輩たちの書き込みを読んでいると、ちょこちょこと「痔主」という言葉が出て来る。痔を患っている人のことを「痔主」と言うらしい。「地主」ではなく「痔主」。だじゃれから派生した言葉だろうか? 「ようやく痔主から解放されました」「痔主になって早1年」みたいなことが達筆で綴られている。

自分のことを「痔主」とか言えちゃうのだ。林さんが言うように、痔の人たちは明るい、もしくは明るく振る舞おうとしているのである。

とにかく、僕も痔主になった訳だ。

⏩ 診察がはじまります

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