特集 2025年2月12日

謎デザイン…でも歴史を知ると納得な、"面影ビル"がおもしろい

もっとわかりやすい、昔の建物の一部を残した面影ビル

けっこう多いパターンが、昔の建物の装飾などを保存しているタイプの面影ビルだ。

その代表が1991年竣工の日比谷ダイビル

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遠くから見る分には何の変哲もない高層ビルなのだが…
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近づくとなんかいるぞ
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いたるところに謎のモンスターが…!
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水まで吐かされている

すごいな、これ。

ネオロマネスク様式といわれた1927年竣工の旧ビル(大阪ビルヂング)のテラコッタ装飾なんだそうだ。

現代的な街並みの中に溶け込む(溶け込んでいないかも)呪術的な香り。

なかなかに強烈だ。

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1929年築の交詢ビルディングは入り口部分だけ保存されている
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スターツ日本橋ビルも、1927年築の川崎銀行本店の装飾を再構成している
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1930年築の新田ビルの1階部分を再現したニッタビル以前の姿はここで見れます

これらは復元もしくは保存の範疇ともいえるけど、その範囲が控えめで、全体像がわからないところは面影ビルといってもよいのではないか…と思う。

似たような概念に、以前デイリーポータルzで話題となった腰巻ビルというのがある。

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1931年竣工の東京中央郵便局を外壁保存し、上に超高層ビルを建てたJPタワー

昔のビルを腰に巻くようにして、超高層ビルを建てる。以前は賛否両論あったけど、今ではもうオーソドックスな建替え手法である。

面影ビルとの違いは、こういう建物がありました!というのがパッと見で知らない人の目にもあきらかな点だ。

面影ビルはもっと奥ゆかしいのである。

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その点、これはどっちなんだ…と面白かったのが丸の内パークビルディング

いやー、これを見て、昔のビルの姿を想像できるだろうか…?

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これが元々あった1928年竣工の丸ノ内八重洲ビルヂング。/パブリック・ドメイン

なかなかにアバンギャルドだ。

これは腰巻ビルとも言えず、もっと別の何かだろう。

ひとまずは、面影ビルのなかに入れてあげたいと思う。

 

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~ベスト・オブ・面影ビル~ 明治大学リバティタワー

2000年につくられた明治大学創立120周年記念館リバティタワー

当時、大学なのに超高層だったり、山ピーが通っていたり(?)して話題となった建物だ。

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120m近いタワー棟と低層部に分かれている
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でかすぎてカメラに入りきらない

 この建物、なんでこんな形なんだろう…と昔気になった記憶がある。

やっぱり面影ビルだったのだ。

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前身の明治大学記念館(1928年竣工)/明治大学史資料センター所蔵資料より

そういうことだったのか!

この写真を見れば一瞬でデザイン意図がくみ取れる。

でも知らなければわからないくらい抽象化されている。

これぞ面影ビルだ。

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低層部だけでなく、超高層部分も前身の形を模している。面影ビルとして二重にすごい!

自分より上の世代の人は、あああれね~、そうそうこんなだったよね~と分かってたと思うとなんかくやしい。

まさに、ベスト・オブ・面影ビルである。

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ちなみに、真向かいにあるお茶の水スクエアも不思議な外観だが、これは1925年築の旧主婦の友社ビルの外観を復元したものである。なかなか濃い通りだ

 

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面影ビルの再生産。ラストは大阪の栄華を伝える大同生命霞が関ビル

最後に紹介したいのは、霞が関で見つけたこのビルだ。

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2019年竣工の大同生命霞が関ビル

このビル、一見なんてことない高層ビルにも見える。

だが、面影ビルばっかり探した目には、なんとなく戦前のビルのイメージを継承しているような気がする。

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石造りではなくてタイル張りなところもそれっぽい

でも、以前この地にそれらしきビルがあったわけではないようだ。

もう少し調べてみると…

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大同生命大阪本社ビル(1993年竣工)/フォトACより

実は、霞が関の方はこの大阪本社ビルのデザインを元にして作られているようだ…!

たしかに、タイルの質感や縦のラインを強調したデザインがなんとなく似ている。

でも、大阪本社はもっと独特でデコラティブだ。これはあるぞ…!

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あった!これが前身の1925年築の大同生命肥後橋ビルだ

大阪本社ビルは、このビルのネオゴシック様式を受け継いで作られているのだそうだ。

たしかに上部の窓の形や装飾、下部のアーチ型の窓、さらには縦のラインを意識したデザインなど、イメージを継承している。

それも、腰巻化するのではなく、超高層ビルとして再解釈してデザインされている。

これはかっこいいな。これぞ西のベストオブ面影ビルだ。

早く実際に見てみたい。

大阪のビル好きの間では有名なビルだったようである。

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つまりこれは面影ビルの再生産。孫というか、甥っ子みたいなものかもしれない

昔のデザインに愛があるからこそ、こうして地域を越えてイメージが受け継がれているのだ。

日本は地震も台風もあるし、建物の保存にはあまり向かない土地だ。

でも、そのまま保存できなくても、イメージを継承していく…という保存の仕方もあるんだな。

ビルの楽しみ方がまた増えた。

 

面影ビル、もっとたくさんあるはず

今回は、東京都心部を中心に有名なビルを回ったが、各地にはひとしれず面影を残しているビルが、もっとたくさんあるはずだ。

これぞ!という面影ビルがあったら、是非教えてください。

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東京宝塚劇場、このアールデコ感は絶対元ネタがあるだろう…と思ったら前身は全然デザインの違うビルでした

 

編集部からのみどころを読む

編集部からのみどころ
山田窓さんの力作が届きました。とにかくボリュームがすごいんですよね。よくこんなに見つけてきたな!!という圧倒的な物量。「こないだ都心の方を歩いていると…」っていうフラッと見つけた感の導入から始まる記事のサンプル数じゃないんですよ。しかも脚を使って撮りおろした写真付き。手間も情熱もこもった、力の入り具合を満喫してください。

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