ノビルを渡したらぐるぐると巻かれた
ノビルとは河原などに生えているネギの仲間で、ラッキョウに似た味でとてもおいしい野草のこと。スイセンやタマスダレなどの有毒な植物と間違えないように気を付けよう。
このノビルを友人宅に持っていったところ、さも当然のように無言でぐるぐると巻きだしたのである。
草履でも編むつもりだろうかと思ったが、こうやって巻くとノビルがおいしくなるのだとか。
今日はたまたまノビルを巻いているが、そもそもは熊本県の郷土料理である「一文字(ひともじ)のぐるぐる」という、茹でたワケギを巻いた料理がぐるぐる巻くルーツ。一文字はワケギの別名である。
農林水産省の「うちの郷土料理」によると、「6代目藩主細川重賢の時代、肥後藩の財政が苦しく立て直しを図って倹約令が出された際に、安くて美味しい酒のつまみとして考えだされたのがはじまりといわれている」らしい。
巻き方は人それぞれのようだが、適当に折り返してぐるぐる巻いて、折ったところの穴に先端を通せばいいらしい。これを天婦羅にして食べるのだ。
楽しそうなので私も巻いてみたが、彼のようにきれにはいかず、これが釣り針と釣り糸だったら魚が掛かると外れるヤバい巻き方になってしまった(よくある)。さらにノビルの弾力でビョーンとほどけてびっくり。
茹でていないノビルを巻くのはちょっとコツがいるようだ。私が不器用なだけかもしれないが。
これをもう一人の友人が天婦羅にしてくれたのだが、ぐるぐるによって味も歯ごたえも強くなり、そりゃもううまいのである。
ノビルのような細長い食材を揚げる場合、刻んでかき揚げにするしかないが、どうしても風味が拡散してしまう。
それはそれでサクサクしてうまいのだが、このように巻いて一塊として揚げることで、パンチ力のあるザクザクの野趣が楽しめるという学び。なるほどー。
茹でて作る「ノビルのぐるぐる」もうまい
生のノビルをぐるぐると巻いて揚げる天婦羅はちょっと応用編。基礎編としてサッと茹でたノビルを巻いた「ノビルのぐるぐる」も作ってもらった。
ノビルはワケギに比べて細いので、ボリュームを増すために2~3本まとめて巻くのがコツ。
軽く茹でたノビルは以前から好物なのだが、白い鱗形部分を食べた後に残る緑部分の細さが切なく、わざわざ別の料理に使っていた。だがこのように巻けば細い部分も何倍にも歯ごたえを強化することができ、全体が絶好のつまみとなってくれる。
アスパラの肉巻きみたいに別の食材を巻くのではなく、ノビルをノビルで巻いているだけなのにうまいというのが痛快だ。
この日は採ってきたノビルを巻いたが、もちろんワケギなどのネギ類をぐるぐるしても、知らなかった表情を見せてくれるのだろう。
中尾彬さんがマフラーをぐるぐるしている気持ちがわかった気がする。