特集 2024年7月26日

「日本一美しい」という河岸段丘を見に行く

群馬県沼田市に「日本一美しい河岸段丘(かがんだんきゅう)」があると聞き及び、これは見に行くしかない。ということで、見に行ってきました。

鳥取県出身。東京都中央区在住。フリーライター(自称)。境界や境目がとてもきになる。尊敬する人はバッハ。(動画インタビュー)

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中学校の地理で習った? 河岸段丘とは?

河岸段丘。

地理にあまり興味がない妻は「カガンダンキューって何?」とストレートに聞いてきた。
河岸段丘ぐらいみんな知ってるようなつもりで勝手に話を進めるのは良くないので、改めて河岸段丘について説明しておきたい。

ぼくは、中学校の地理で習ったような気がしていたのだけど、はっきり記憶はしておらず、もっぱら地図帳に載っていた河岸段丘のイラストの印象が強い。

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地図帳の河岸段丘。関越道開通前の貴重な航空写真(帝国書院『中学校社会科地図帳』昭和55年)
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高校用の地図帳の河岸段丘は、でき方を丁寧に解説(帝国書院『新詳高等地図』平成27年)
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真ん中の地形図詰め合わせみたいな絵の中にちょっとだけある(赤矢印)(帝国書院『中学校社会科地図』平成27年)

家にあった地図帳から、河岸段丘が載っているものをいくつか見てみたけれど、掲載はわりとあっさりしたもので、最近の中学校用の地図帳は、河岸段丘があまり詳しく載っておらず、様々な地形を見せる中のひとつとして「河岸段丘」という用語が書かれているだけだ。
ついでに、最近の中学校用の地理教科書(東京書籍・帝国書院・教育出版・日本文教出版)をざっと調べたところ、河岸段丘の項目は見当たらなかった。

ぼくの「中学校の地理で習った」という記憶は、地図帳の挿絵で見たものを、習ったような気になっていただけかもしれない。あるいは、理科の地学の方で習っていた可能性もある。

とまれ、地図帳(帝国書院のもの)には、沼田の河岸段丘が典型例として載ってはいる。ということはおわかりいただけたかもしれない。

河岸段丘は、川が土地を平らにする作用と、崖を侵食する作用、そして土地の隆起と海水面の低下がセットになって、階段状の地形ができる……のだけど、ちょっとイメージし辛いかもしれない。ぼくもあんまり良くわかってない。

①平地(高低差があまりない)にある川は蛇行しがちで、蛇行することによって、周りの土地を平らにする作用がある。

②土地が隆起したり、海水面が低下して相対的に土地が隆起したことになると、川の高低差が大きくなって、川が土地を削る力も強くなり、川が崖を作って流れるようになる。ここでできた崖は段丘崖(だんきゅうがい)と呼ぶ。

③川はしだいに崖を侵食して横に広がり、土地を平らにしていく。ここでできた平地は、段丘面(だんきゅうめん)と呼ぶ。

④土地が隆起したり海水面の低下が起きれば、川は②の状態に戻る。

⑤②から④の繰り返しが起きると、階段状の地形ができる。

​​​

ぼくの理解する範囲で河岸段丘のでき方をまとめてみたけれど、どうだろうか。河岸段丘がなぜできるのかに関しては、知恵袋とかウィキペディアみたいなところが真面目に説明しているので、もっと詳しく知りたいひとはそちらをみてほしい。

ひとまず、この稿では「地図帳のイラストのような階段状の地形が沼田にはある」ということを頭に入れて読んでいただければと思う。

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「これが見たかった」 

家から沼田まで高速道路で2時間半ほどかかるらしいので、めちゃくちゃ早起きして家を出発する。 

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関越道をひたすら2時間ほど北上する
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ひとまず、電車で移動している妻と合流するため、沼田駅に到着。天狗かっこいいな……

駅から15キロほど離れたところに「河岸段丘ビューポイント」というところがあるので、そこを目指してバイクで向かう。

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利根沼田望郷ラインという山道を登る

沼田市街を抜けて山道を10分ほど走ると、ビューポイントにやってきた。

簡単な展望台があるだけの簡素な駐車場だが、ここから沼田の河岸段丘が一望できるという。

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ただ「ビューポイント」としか書いてないけれど、ここから河岸段丘が見られるらしい
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ちょっとした展望台に登ると……
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これが河岸段丘……

広角で撮るとなんだか良くわからないけれど、確かにりっぱな河岸段丘が、見える。

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ほらー、河岸段丘

東京から2時間ちかくかけてやってきた、河岸段丘ビューポイント。

河岸段丘に対する思い入れがあるので、ぼくは思わず「ほー、これが、日本一美しい河岸段丘か……」と唸った。なお、同行してくれた妻の第一声は「これが見たかったの?」だった。「うん、これが見たかったー」とぼくは笑顔で答えるしかなかった。

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地図で見ると、右上の☆のあたりから左下を眺めている形になる

こういうものは、実際に来て実物をみなければ、そのスケールのデカさは体感できない。だから東京から2時間近くかけてきたその価値はある……と思う。

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嬉しそうなおれ

赤城山からツーっと伸びる見事な扇状地の先に、見事な段が続く。たしかに、美しく、雄大な景色だと思う。

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左側が赤城山(黒檜山、地蔵岳、鈴ヶ岳)、扇状地、河岸段丘の上辺りに、子持山、小野子山、浅間山などがみえる

目を凝らして良く眺めると、真ん中あたりに赤い橋が見える。あれは関越道の片品川橋で、さっき渡って来た橋だ。

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右側が沼田市街、谷底に片品川が流れており、真ん中に見える橋が関越道の橋
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片品川橋

この橋は橋脚の高さが最大69メートルあるらしいので、橋の路面は川から70メートル近い場所ということになる。それはつまり、沼田の河岸段丘の崖の高さはそれぐらいはあるということになる。

先ほど立ち寄った沼田駅と市役所などがある沼田の中心市街地は、崖を隔てて別の段丘面にあるため、市街地と駅を行き来するには崖を登ったり降りたりする必要がある。

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沼田駅と市役所の位置。真ん中の緑色の部分が崖で、右側に市街地、左側に駅がある

沼田駅から、市街地へ向かう道を見てほしい。かなりの急坂で崖を登らなければいけないようになっている。

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壁みたいな坂なんだけど……

実際に道路を走行して見てみると、道の突き当りに壁みたいな坂があるように見えたのだけど、iPhoneの広角レンズだとその迫力が今ひとつ伝わりにくくて申し訳ない。

この坂は「滝坂」という坂で、途中で歩道が階段になってしまっている。

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滝坂の階段歩道

途中で絶対止まりたくないレベルの坂道な上、駅方面から市街地に入るにはかなり鋭角にUターンせねばならず、クラッチ操作が下手くそな俺はヒヤヒヤするしかない。(幸いエンストすることはなかったです!)

沼田の市街地はこの崖の上にある「沼田面」と言われる段丘面に広がっているため、四方から沼田の市街地に入ろうとするとかならずこういった急坂を登ることになるわけだ。

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