特集 2026年7月17日

国立国語研究所の資料室ツアーに参加してみた~一般公開イベント「ニホンゴ探検2026」レポート

立川市にある国立国語研究所で「ニホンゴ探検2026」というイベントがあったので、行ってみた。

鳥取県出身。東京都中央区在住。フリーライター(自称)。境界や境目がとてもきになる。尊敬する人はバッハ。(動画インタビュー)

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そもそも国立国語研究所って何?

立川にある国立国語研究所にやってきた。

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国立国語研究所です

そもそも、国立国語研究所という存在が謎である。

名称から、国語の研究をしてる国の機関なんだなというのは想像がつくけれど、具体的な内容までは想像がつかないかもしれない。

国立国語研究所は1948年に設立された機関で、日本語の科学的研究をするために設置された。

ふだん私たちは、こういう風に色々と日本語を適当に喋ったり自由に書いたりしているけれど、そういった日本語を科学的に研究してデータをまとめたり、そのデータをみんなが使えるように整備したりしているのが国立国語研究所だ。

「ニホンゴ探検」というイベントでは、国立国語研究所が年に1回施設を開放し、国立国語研究所でどんなことが行われているのかを紹介している。

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資料室ツアーでガッツポーズ(心の中で) 

というわけで、特別に取材ということで許可をもらい、イベントで行われる「資料室ツアー」に参加させてもらった。

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ツアーで案内してくださった大西拓一郎先生

「資料室ツアー」って地味すぎない? と、思うかもしれない。でも、言葉に関する調査研究を行っている研究所にとって、資料室というのは心臓、いや頭脳にあたるだろう。そんな頭脳を見られると思うとワクワクしてこないだろうか? ぼくはします。

しかし、資料室といっても、国立国語研究所の資料室書籍だけを保存しているというわけではない。例えば、音声データなど3万件ほどのメディア資料も資料室に保存されている。

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方言の調査で収録した録音を聞かせてもらった

音声データの代表的なものは、各地の方言や言葉などを録音したデータなどだ。

国立国語研究所では、日本各地の言葉の調査研究も行っており、山形県鶴岡市などの方言を20年おきに定期的に調査してその記録を保存しているという。山形県鶴岡市での言語調査は1950年代、70年代、90年代、2011年と行われており、サンプルとしてその音声を聞かせてもらった。

「クヅ、クヅ」と年配の男性が言っている音だ。これは、鶴岡の言葉で「口(クチ)」のことで、チとツの区別がなく、タ行音とカ行音が有声化して濁音になり「クヅ」となる⋯⋯。

こういった調査を、これ一つではなく、あらゆる言葉についていちいち調べて記録し、まとめている⋯⋯というわけだ。

資料室内には、日本言語地図の書棚もあった。

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日本言語地図の原本だ⋯⋯

まさか、日本言語地図の原本が見られると思ってなかったので、おもわず心の中でガッツポーズを決めてしまった。

ぼくが思わずガッツポーズを決めてしまうほどの日本言語地図とはなんなのか。これはいろいろな言葉について、その地方ではなんと言っているのか? を、日本地図の上にマッピングして細かく記した資料だ。

昔、探偵ナイトスクープで「アホとバカの境界線を調べる」という企画があったが、ああいう調査を、たくさんの言葉で1960年代からすでに国立国語研究所では行っていたのだ。

この地図の資料を元に、方言を分析した本が何冊も出版されている。

方言の地図帳 (講談社学術文庫)
方言の地図帳 (講談社学術文庫)

真田信治 (著), 篠崎晃一 (著), 徳川宗賢 (著), 佐藤亮一 (編集)

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そして、もっとすごいことに、この日本言語地図は、ほぼ全てがPDFで無料でダウンロードできるようになっている。『日本言語地図』地図画像

お国言葉であれっと思ったとき、すぐに日本言語地図で検索して確認できるのが嬉しい。

例えば、塩味がつよいことを西日本では「カライ」というけれど、どのへんまでカライというんだろう。と、気軽に調べて見ることができる。

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『日本言語地図』しおからい(鹹い)

地図を見ると、長野と岐阜の県境あたりに「ショッパイ」と「カライ」の境界がありそうだな。というのがわかるが、関東地方でも千葉や神奈川あたりに「カライ」や「カレエ」というところがあるのがおもしろい。あと、北陸で一定の勢力を誇る「クドイ」もきになる。

という感じで、みていて飽きない資料だ。

大西先生によると、この調査は、その地で生まれてそこにずっと住んでいる年配の人に協力してもらい、たとえば人が座っているイラストを見てもらって、それをなんというか? と聞いていってまとめたという。

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『日本言語地図』すわる

イラストで表現できないものは、文章で問いかける形になるが、その場合はなぞなぞっぽい。

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『日本言語地図』からい(鹹い)

そうして調査した結果は、カードにまとめて整理するわけだが、全国2400地点で300種類の言葉について調査しているので、単純計算で72万枚の資料が資料室に保存されていることになる。

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地図上で分布を示すときに使われる記号の判子
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語彙調査

うっかり、興奮気味に日本言語地図の話ばかりしてしまったが、資料室に保存されているものはこれだけではない。

大規模な言語データベース「コーパス」を構築するための、語彙調査を行ったときに使う書籍なども所蔵されている。

「コーパス」とは、ある言葉が、いつどこでどんな風に使われているのか? を検索できるデータベースのことで、言語学や日本語学、辞書編纂や自然言語処理、文学、歴史学、社会学、心理学などさまざまな研究分野で使われる基礎的なデータベースだ。
ちなみに国立国語研究所のコーパスは「中納言」で、これはユーザー登録すれば私たちのような外部のものでも使うことはできる。

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中納言の検索画面

さらにすごいのは、データベースで使うために参考にした新聞、雑誌、書籍、ブログなどの原本とともに、それぞれの著作権者からとった3万件の許諾の書類を全て保存しているという。

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書籍とその許諾の書類がすべて保存されている

許諾に関しては、今は著作権法が改正されたので、ここまで厳密に許諾を取る必要はなくなったが、それまではこういった手間も含めて大変な作業だったことは想像に難くない。

ツアー参加者には、なんと『日本言語地図』の余っているものを、記念にもらった。嬉しすぎる。

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これもらえるのか! ヤバい!

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