特集 2023年10月23日

良いもの食べてる感を出したかったら、名札を添えよう

良い肉たべたい。うまいのたべたい。今すぐたべたい。矢野顕子氏より強欲な私は、ラーメンだけでは満足できない。

しかし、良い肉は高い。悲嘆に暮れていたその時、思いも寄らぬ方向から光が差してきた。
 

1980年、東京生まれ。片手袋研究家。町中で見かける片方だけの手袋を研究し続けた結果、この世の中のことがすべて分からなくなってしまった。著書に『片手袋研究入門』(実業之日本社)。

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> 個人サイト 片手袋大全

良い肉の共通点とは?

中学生の我が子より所持金が少ないことに気付いた私は、仕方なく無料画像素材サイトで肉の盛り合わせを見ていた。

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その時、何故だか私の胸はざわつきだした。今までの人生において、こんな瞬間が何度かあった。そしてそれはいつでも、後の人生を大きく変える素敵な閃きであった。落ち着いて別の写真を見てみる。 

皆さんも、もうお分かりですね?

ああ、分かった。名札だ。部位が書き込まれた名札。良い肉にはこれが添えられていることが多い。そして私は思った。「むしろこの名札こそが、“良い肉感”を担保しているのではないか?」。 

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2割引きの肉で試してみる

スーパーの精肉コーナー。分厚くて綺麗に霜が降っているステーキ肉には目もくれず、私は豚と牛の切り落としパックをむんずと掴む。それぞれ100g188円と232円。さらにそこから2割引き。

牛肉のトレーだけは、名画の額縁のように金色に輝いていた

このお手頃な肉を皿に盛り、名札を添えてみたらどうなるのか?それも余計なごまかしはせず、はっきり「切り落とし」と書くのだ。

なぜか家に経木が大量にあったので、そこに文字を書き込む

良いぞ。完全に上手くいったとは言わないが、光の射す方へ導いてくれそうな萌芽はある。私はこの道を歩く。

変化(主観)
豚:100g  188円→250円
牛:100g  232円→400円

では改善点はどこか?そうだ。字の太さだ。もっと堂々と、太い字で高らかに切り落としであることを宣言するのだ。引き出しから筆ペンを取り出す。

もっと字が上手い人なら、さらに良い結果が出るはず

悪筆の私でも“良いもの”感が出ている。すんごいぞ、これは。晩御飯を食べていくことになった来客の前にこれを置いてご覧なさい。胡座から正座に変わるぞ。

変化(主観)
豚:100g  188円→350円
牛:100g  232円→600円

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コンビニ弁当はどうか?

肉以外にも応用できるだろうか?すぐに近所のコンビニまで走る。

名札を添えるだけで“良いもの”感が出てしまうのなら、棚に並ぶ商品はすべて宝の山。コンビニが紀ノ国屋か成城石井に思えてくる。色合いがやや茶色に偏った弁当も、数分後には星付きレストランの逸品と見紛うはずだ。 

一切の小細工がなくて、これはこれで逞しい。だがちょっと待っててくれよ

今回は直筆でなく、PCで文字を打ち出して透明フィルムに印刷し経木に張り付けてみる。 

それっぽいフォントを選ぶのが重要だ
これを経木に張り付けて、短冊状に切る
おや?

なにかが違う。なんか、悲しい。墓標みたいだ。私の記事なのだから、「“良いもの”感、出ました!」と強弁することもできる。しかし、それは違うと思った。記事をわざわざ読んでくれている皆さんには、砂粒一つほどでも良いから有益な情報をお渡ししたいのだ。

だから、はっきり言う。ここに“良いもの”感はない。むしろ、元の弁当より価値が下がった。恐らく、最低限トレーから出して皿に並べる、くらいの手間は掛けないと駄目だ。

変化(主観)
弁当:約600円→560円

⏩ カップラーメンを良いものにする

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