特集 2023年12月25日

マイ石が作れる粘土で石積みチャレンジ

石さえ自作すればどんな不器用さんでもロックバランシングが楽しめますよ、という提唱記事です。石、作ろう。

以前に、焼くと皮革っぽくなる粘土「フィモレザー」で、革ジャンを着た赤べこならぬ“革べこ”を作る、という試みを記事化したことがある。

で、今度は新たに、乾燥すると石っぽくなる粘土が出たよ、という話を聞いた。うーん、粘土が乾くと石になるの、そんな特殊なことだろうか。石粉粘土とか普通じゃん。石っぽさの度合いが違うんだろうか。

なんか気になったので、遊んでみることにした。

1973年京都生まれ。色物文具愛好家、文具ライター。小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の人間がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文具を自慢する」という結論に辿り着き、そのまま今に至る。(動画インタビュー)

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石になる粘土は本当に石っぽかった

ということで、こちらが石になる粘土こと「フィモ エアー グラナイトエフェクト」である。

パッケージから「自然乾燥で石のように仕上がる」と謳っているので、やはり、乾いたときの石っぽさに特に自信がある製品のようだ。

ところで言っててなんだけど、石っぽさって、何をもっての評価なのか。

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「オリジナルの石が作り放題」と話題のステッドラー「フィモ エアー グラナイトエフェクト」
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未乾燥状態はほぼコンニャクの色だけど、乾くと石っぽくなる…はず。

袋をバリッと割いて取り出してみると、うーん、この時点の見た目は、濃い灰色の中に黒いツブツブがいっぱい散っていて、石というかコンニャク寄りだ。

出したばかりだから当然まだ手触りはしっとりしているんだけど、ムイッとちぎってみると、中はかなりザラザラした感じで、目の細かな砂利を練り合わせた感がある。水少なめのモルタルって雰囲気。

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割った断面はジャリジャリして、やや独特な感触がある。

これを、特に何も考えることなくただ手の中でグニグニと弄んでいると、いつのまにかこんな感じに。

あれっ!? キミ、普通に石じゃん!?

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なんとなく捏ねてて、気がつくと石ができてた。

わー、これ石ですわ。黒いツブツブのおかげで花崗岩(御影石)っぽさがすごい。

というか冷静に考えたら製品名の「グラナイト」って花崗岩の英語名だ。

最初からそう言ってるでしょうが、という話である。申し訳ない。どう石っぽいのかが気になりすぎて、製品名をちゃんと把握してなかった。

さらに乾燥(自然乾燥だとあの石で2〜3日ほど)させると、色も濃い灰色→明るい灰色と変化して花崗岩っぽさがさらに増したので、なるほどこれは石だ!と納得した次第である。

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じゃあ石になる粘土で何を石にすると楽しいのか?

石だという部分に文句は無くなったんだけど、じゃあこれで何をつくると楽しいだろうか。

身の回りの生活用品を片っ端からこれでコーティングしたら原始時代っぽくなるのでは…とか、帽子を作ったらリアル石ころ帽子(ドラえもん)ができそう…とか考えてみたんだけど、なにか微妙にピンとこない。

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墓石も石材を削り出すのは大変だけど、手で捏ねて作れるならだいぶ気軽だな。

今年の春に愛猫が亡くなったので、墓石でも作るか…とも思ったんだけど、それも記事としてはちょいウェット過ぎる気が(あと未だに考えただけで泣きそうになるし)。

マイ定礎とかオリジナル記念碑なんかも考えてみたけど、なかなか難しいな、石でなにかするの。

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いちおう作るだけは作った。なんか微妙にゆがんで、愛嬌のある墓石。

じゃあ結局どうするのが楽しいのかと考えて辿り着いた結論が、これだ。

この粘土、いかにも自然石っぽい石を作るのがやっぱり超楽しいのだ。

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捏ねる前に絵の具をちょいと足してやると、色の変化も付けられる。
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「石っぽさとは」みたいなことを考えながら形作っていくのが、わりと楽しい。

ただ捏ねて丸めるだけでなく、上流から流されてどうカドが落ちてこうなったか、など河原に転がってる花崗岩をイメージしつつ作ると、いかにもそれっぽい。

逆にそんな理屈をこねず、ただ無心に石っぽく丸めるのを楽しむのも悪くない。

できあがった石を見て「あー、こんな石、ありそー」というだけで満足できるし。「石っぽい石作る選手権」とか主催したいぐらいの楽しさである。

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どうよこの石っぽさ。これなら河原とかに落ちてても見分けが付かないのではないか。(気になることがあっても一旦見過ごしてください)

さらに白や黒の絵の具を適量混ぜて捏ねてやると、ちょっと斑れい岩(黒御影石)っぽくなったり、バリエーションも作れるぞ。

ということで、しばらく黙々と石を量産し続けてしまった次第である。

粘土の無駄遣いと突っ込まれるかもだが、いやあなたも楽しいからやってみるべきだ。

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自作の石で「ロックバランシング」に挑む!

さて、ここで舞台はいきなり屋外へ移る。

やって来たのは埼玉県飯能市の飯能河原。夏場は川遊びやバーベキューでウェイウェイ盛り上がることで知られている、入間川の川っぺりである。

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とはいえ今は12月下旬なのに加えて強めの寒波が来てるので、とても静か。
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石を積む→賽の河原という連想から、「さいのかわら」と「はんのうかわら」で韻を踏んでみた。飯能を選んだ理由はただそれだけ。

なんで寒々しい中に河原まで来たのかというと、えー、自宅で石を量産している途中でふと「あ、これでロックバランシングできるのでは?」と思いついちゃったのだ。

ロックバランシングというのは、河原に転がってる石を複雑怪奇な超バランスで積み上げる、という遊びである。

どう複雑怪奇でどう超バランスかという辺りは、各々で「ロックバランシング」や「石花」で画像検索してもらいたい。思わず「おお、超バランス」って言っちゃうから。こんなの、接着剤無しでどうやってるんだマジで。

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なにをどうやればこんな積み方ができるんだ、と驚くしかない。できたら楽しいんだろうなぁ。やってみたい。

僕は一般人の0.3倍ぐらいの器用さを誇るタイプなので、こういうのがとにかく苦手で。どれだけ頑張っても、こんなすごいのはできる気がしない。でもかっこいいので、憧れだけはある。

なので来世に工業用ロボットとして生を受けたら改めてトライするつもりではいるが、とにかく現世では無理確定である。

たぶんだけど、普通に3〜4個を積み上げるだけでも容易く崩すはずだ。

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試しにやってみたら本当に4個目で崩しちゃって、自己分析の正しさに震える(もうちょいできるつもりだった)。

しかし、ガチの自然石では無理だとしても、自作の石ならどうだろうか。もちろん、多少のズル程度は辞さない覚悟だってある。

そこまでやれば、ロックバランシングほどエクストリームなのは無理でも、ただ積み上げるぐらいはできるんじゃないか。できたい。やらせてほしい。自分できます!

ということで、まずは「さもその辺に転がってる石を使いましたよ」というテイで、持参したマイ石を河原に並べてみた。どうだろう、ほぼ区別が付かないのではないだろうか。石を積み上げる器用さは無くても、石っぽい石を作るぐらいはできるのだ。

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実際には河原の石は土汚れでやや茶色っぽくなっていたが、それ以外はほぼ同化しているといって過言ではない。はず。

あとはこれを鼻歌交じりにヒョイヒョイと積み上げていくだけである。

ほらヒョイヒョイと。サクサクと。さぁどうだ。

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はい積んでいきますよー。
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ほいほい、簡単だな。
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平べったい石だけでなく、コロンと丸い石も混ぜてみますよ。それでもまだ楽勝だけど。
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おっと、風がでてきて一瞬ヒヤッとしたけど、でも大丈夫だぜ。
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我ながら見事なバランス感!所用時間はここまでわずか1分足らず。

ただシンプルに垂直積みしただけとはいえ、随所に微妙なバランスが含まれているのは、見て分かるはず。

持参したマイ石さえ使えばこれぐらいは目をつぶっててもできるのだ。

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だって磁石入ってるからね。

そう、石に強めのネオジム磁石を仕込んであるので、あとはただ石同士を近づけるだけで、文字通り吸い付くようにカチッカチッと勢いよく積めるし、崩れにくくなっているという仕組みである。

これなら手先の器用さがちょっと遠慮がちな人でも、テクニックや練習抜きで簡単に積むことができる。

つまり、磁石仕込みマイ石の導入によって石積み遊びのゲームバランスを大きく崩した、というわけだ(上手いこと言った感)。

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マイ石による石積み、磁石のズル無しバージョンも

いや分かるよ。これがズルだというのは分かってる。

さすがに磁石は多少のズルってレベルじゃないだろ!と言われたら、僕にだって「えー、そうかなー。そこは個人の感覚では?」と言いつつもシブシブ引っ込めるぐらいの度量はあるつもりだ。

であれば、マイ石Ver.2を出すしかない。今度は磁石もなにも内蔵してないから、文句の付けようもあるまいて。

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自然石と並ぶと、「これで積めるだろ」という作為が露骨すぎて我ながら困惑した。

ほんのちょっと形が不自然?いや、大自然が生み出すものだし、これぐらいありえるのでは?

しかもこれらは大自然の奇跡というか、驚くべきことに、なんとたまたま、偶然にして、積み上げ…というか組み立てやすい形状の石なのである。

いや、大自然じゃなくて僕の作為の元に作ったマイ石なんだけど。

とはいえこれなら磁石以上にサクサクスパスパと積んでいくことが可能だ。

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あからさまに土台っぽい形状の石に、ちょうどハマりそうな凸部のある石をセット。
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なにそれレゴ?と言われても弁解できない組み合わせの石。これなら多少の風が吹いても平気なはず。
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完全にセットで作ったよねそれ、という噛み合わせの良い石を重ねて…
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最後はトロフィー感たっぷりの珍しい石を上に乗せる。というか挿す穴があるのでそこに挿すんだけど。
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やったぜ十段積み。そして、近くで飛び跳ねても崩れることのない安定感よ。

最後は、これまた大自然の驚異こと“見ようによってはピースサインみたいに見える石”をトップに飾って、マイ石積み再びの完成である。やったー。

ぶっちゃけ、積めた!という喜びよりも「積める形に作った石が無事に機能した喜び」の方がデカいんだけど、それはそれで良しということで。

この技術を突き詰めていけば、いずれはより「ロックバランシング」に近い形に積めるマイ石を作ることもできそうだし。石を積む努力より、石を作る技術を磨くのが自分なりの最適解だ。


実は今回の撮影中にうっかりマイ石を1つ紛失しちゃったんだけど、都合悪いことにそれがたまたま磁石が取れちゃってたヤツで。
目印が無かったため、寒さにかじかむ指であちこち石を拾っては戻しを繰り返し。探し出すのに30分ぐらいかかってしまった(無事に見つかりました)。
つまりはそれだけちゃんと石っぽくできてたということなんだけど、うーん、Ver.2とか好き放題したんだし、そもそもそこまで自然石に寄せなくても良かったんじゃねぇか、と震えながら自省していた次第である。

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ちなみにこの粘土は耐水性が無いので、川に落ちたら最後は溶け崩れてたと思う。見つかって良かった。

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