特集 2021年6月14日

果汁100%ジュースと発泡酒で作る「なんちゃってクラフトビール」がお手軽うまい

以前、生のパイナップル果汁に発泡酒を加えてみたところ、驚くほどきめ細かい泡の、ものすごい美味しい飲みものが意図せずできてしまいました。

では、果汁100%のパイナップルジュースならどうなのか? その他のフルーツジュースなら?

気になるあれこれを検証します。

1978年東京生まれ。酒場ライター。著書に『酒場っ子』『つつまし酒』『天国酒場』など。ライター・スズキナオとのユニット「酒の穴」としても活動中。

前の記事:冒涜のグルメ 〜モスの菜摘をバンズで挟む・他〜


果汁×発泡酒の衝撃!

 

以前、別のメディアで、「フレッシュフルーツの果汁を搾り、そこにいろいろなお酒を加えてみる」という企画をやったことがあります。

たくさんの発見があって有意義な検証だったのですが、なかでも特に感動したのが「パイナップル果汁×発泡酒」!

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そのために買った搾り機でパイナップルを搾り
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グラスに注いで
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そこに発泡酒を注ぐと

ご覧くださいこの美しいグラデーション! 実際に飲んでみると、最初はほんのり、終わりに向けて華やかに香るフレッシュなパインのフレーバーが、たった一杯の発泡酒のなかにドラマチックなストーリーを生み出していました。

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さらに特筆すべきは、この泡!

通常、発泡酒の泡ってビールに比べると若干荒めで、早めに消えてしまうイメージがあるけど、理由はさっぱりわからないながら、パイン果汁を加えたことによりいつもよりだんぜんきめ細かく、力強く、さらに時間が経ってもぜんぜん消えないので、飲み終わりまでしっかりと炭酸を閉じこめる役割を果たしてくれます。

僕、最近、たま〜に1本数百円から高くて1000円くらいする缶のクラフトビールを買い、週末の贅沢に飲んでみるなんてことをやっていて、それぞれに個性があるクラフトビールだから、そりゃあどうしても好き嫌いは出てくる。だけど、このパイン果汁発泡酒が500mlで1缶1000円だったとしても、「こんなに美味しいなら文句はない!」と判断したことでしょう。

まさに、お酒の楽しみの新たなる鉱脈を発見した気分。

その時は、発泡酒以外にもいろんなお酒で試していた関係で、それ以上は掘り下げられなかったんですが、いずれ発泡酒にしぼり、あれこれ試してみたいと思ってたんですよね。

特に気になるのが、新鮮な果汁でないとダメなのか? パイナップルジュースでは同じ結果にはならないのか? もし、コンビニなどで気軽に買える果汁100%のジュースで同様の結果が得られるなら、こんなにお手軽なことはないじゃないですか。

今回は、そのあたりをあらためて掘り下げてみようと思います。

科学的な意見も参考に

今回の検証を始めるにあたり、せっかくデイリーポータルZに書くのですから、同サイトのライターでありながら理科の先生でもある頼れる存在、加藤まさゆきさんに、この件に関してコメントをいただきました。

すると加藤さんいわく

これは泡が出てるのではなく、消えていない、のではないかと思います
生ジュースの中の、泡を保護する成分によるものかなと見えます。

果物に入っているとなると、だいたいはタンパク質とか多糖類などだとは思いますが……。
ペットボトルを振ると、普通のジュースでも水に比べて泡立ちますが、生ジュースだとそれらのタンパク質なども加熱や時間経過で変性・分解されてしまわずにもそのまま入っているので泡立ちがいいのかなと、ぼんやり想像しています。

なるほど! いきなり目からウロコ。

単純に、すごい泡が出たぞ〜! と喜んでいた僕ですが、そうではなく、逆に「泡が消えない」からこういう状態になるんじゃないかという推察。さすがでございます。

担当編集の古賀さんからは

牛乳、のむヨーグルト、豆乳といった乳系にもタンパク質は入っているわけですが……。
多糖類がポイントなのかなー。

とのコメントも。となればやはり、100%ジュースにだって可能性はあるんじゃないの? いよいよなるほど……! これは検証していくしかないですね!

 「パイナップルジュース」

何はともあれ気になる果汁100%のパイナップルジュースを

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果汁の時と同様にセッティング

ちなみに、今回使う発泡酒はすべて、家で個人的にいちばん飲んでいる「本麒麟」とします。

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発泡酒を注ぐと、まずはきめ細かい泡がぶわーっとたち

落ち着いたのをまってさらに慎重に注いでゆくと……

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あ、いい泡!

生果汁の時のホイップかってくらい力強い泡と比べると若干ゆるめのような気もしますが、それでも発泡酒でここまで状態のいい泡はなかなか見られませんよね。

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グラデーションも完璧

味のほうも、そりゃあ生果汁の時のほうが華やかだった気がしないではないですが、ぜんっぜんうまい! あきらかに、ただの発泡酒が高級感のあるクラフトビールっぽいものに変化しています。

「オレンジジュース」

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次はオレンジいってみましょう
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お〜、いいぞ!

やっぱり、加藤さんの言うとおり、タンパク質または多糖類の影響で、発泡酒の泡質は確実に変化するようです。

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オレンジジュース×ビール

で、これまた超〜うまい!

クラフトビールの世界には「Hazy(ヘイジー)」というジャンルがありまして、直訳すると「霞んだ」とか「濁った」という意味だそう。

たとえば原料のモルトに含まれるデンプンやたんぱく質、ホップがふんだんに含まれる「Hazy IPA」というビールは、その名のとおり濁った見た目が特徴で、さらに、モルトやホップしか使っていないにも関わらず、まるで柑橘果汁を加えたかのように、驚くほどフルーティーな味わいだったりします。個人的にこのタイプが大好きでして。

で、何が言いたいかというと、このオレンジ発泡酒、

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かなりの“擬似ヘイジー”度!

加えて、オレンジのフレーバーも強引に足されているわけで、まさに「なんちゃってHazy IPA」ですよこれ!

だって見てください

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こちらの写真

以前とあるお店で飲んだ、大好きな「VERTERE(バテレ)」というメーカーのHazy IPAタイプの生なんですが、見た目、そっくりじゃないすか?

まぁ、さすがにメーカーが本気で作ったものにはかなわないけど、家で日常的に飲むには最高だと思います。

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「りんごジュース」

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透明なタイプ
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これまた、ちょっとだけ荒いけど良い泡
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シンプルに、りんご風味のビール

もう、若干の質の違いはあれど、泡がたっぷりと出て消えにくくなるのはどのフルーツジュースでも間違いなさそう。

透明タイプのリンゴジュースなので、見た目的に大きな変化はありませんでしたが、ずばり「アップルビール」っていう感じで美味しいですね。

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逆にアルコールの成分によるゆらめきが楽しめる

「ぶどうジュース」

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赤ぶどうと白ぶどうのミックス
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泡がぶどう色!
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いいグラデーション

これは、泡の見た目がちょっと駄菓子っぽいこともあり、どこか子供っぽいというか、ジュース風味が勝っちゃってるかな。基本的にこのシリーズ、発泡酒の苦味がぐっと抑えられてすごく飲みやすくなるんですが、これはもう、完全に苦味がどっかいっちゃってる感じ。

ジュースによって量を調整する必要もあるのかもしれませんね。だからこそおもしろいな、この世界。

「ミックスジュース」

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お次はちょっといいマンゴージュース!

と思いきや、その下の「と黄にんじん」の文字を見落としていました。さらに裏面を見ると、

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思いのほかいろいろ入ってる

まぁ、ミックスジュースということで、これもこれでありだ。

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そしていい泡、いい色

味の方はこれもばっちり! ゴージャスなフルーティーさと絶妙に残った苦味のバランスが良く、すごくいいお酒を飲んでる気分。

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ほのかな果肉感も良いアクセント

「カフェオレ」

さてこのあたりで、フルーツジュースは何を入れても失敗がなく、それぞれにおもしろい結果になることがわかってきました。今後もあれこれ楽しんでいくとして、まだ気になることがありますよね。それは冒頭の加藤さんのコメントを受けての古賀さんからの振り。

「牛乳、のむヨーグルト、豆乳といった乳系にもタンパク質は入っているわけですが……」

試しておきますか!

用意したのは、

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「カフェオレ」

つまりコーヒー牛乳。すんません、僕、牛乳がちと苦手でして……。

えぇ、「その逃げはどうなんだ! 貴様にはジャーナリズム精神がないのか!」と言いたい気持ちはわかります。が、すんません、自分に無理をしてまで多くのデータが欲しいわけではなく、あくまで僕が個人的に楽しんでるだけであり、それがデイリーポータルZというサイトだとも(勝手に)思っているので、何卒ご了承ください。もし気になる方は、自分でやってみてくださいね!

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泡の勢いあまってちょっとこぼれた
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「カフェオレビール」

うお〜、これまた泡がすごい。フルーツジュースよりもモッコモコだ! たんぱく質も糖分も100%ジュースより多そうだから、こういう結果になるのかな?

で、肝心の味のほうなんですけども、驚くべきことに、これがめっちゃうまい! 黒ビールともまた違うコーヒー由来のコクがあり、まろやかで、苦味はどっかいっちゃって、まぁ「ビールらしさ」というようなものはすっかりなくなってしまっているんですが、新しいカクテルというか、新しいお酒スイーツというか、そういう飲み物としてむちゃくちゃうまい。

騙されたと思って一度、試してみてくださいよ。

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いつか流行る!
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「のむヨーグルト」

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注いだ時点で若干不穏な雰囲気が……

この今までにないとろとろ感、スカッと爽快な発泡酒に合うんでしょうか……?

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嫌な予感が的中

なんか理由は不明だけど、泡質があきらかに荒い!

グラデーションもよくわからないことになっているし、実際、飲めないほどまずいってことはありませんが、ビールの苦味とヨーグルトの乳臭さがどちらもほんのりと強調され、わざわざやらなくてもいい味。

一気に飲み干しました。

「豆乳」

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最後は豆乳です

好んで飲んでいる、キッコーマンの調製豆乳特濃。

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注ぐといったん「全泡」みたいな状態になり
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続いて真ん中で分離
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それでもいい位置まで発泡酒を注いでみました
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泡が、今回のなかではいちばんモッコモコでぜんぜん消えない!

味のほうはですね、まろやかなビールって感じで嫌ではないんですが、同系統のカフェオレの衝撃には及ばないかなぁ。


※2021/06/15 12:40 追記
本記事公開後、「そもそもそういうカクテルはすでにある」というご指摘をいくつかいただきました(例:ビール+パイナップルジュース=パインビア)。
今回の記事はあくまで「思いつきで発泡酒に果汁を足してみたらクラフトビールっぽくなった!」という発見をもとに書いたものですが、今後情報を発信する際は、より注意深くチェックをするようにいたします。何卒ご了承ください。(パリッコ)


と、気になってたことをまとめて試せて大満足の結果となった今回。

とりあえず、フルーツジュースはなんでも発泡酒に混ぜてよさそうだし、これからも個人的にあれこれ楽しんでいこうと思います。使う量がほんの少しなんで、生のフルーツを搾るよりだんぜんお手頃で、気軽に試せますしね。

ところで、僭越ながら7/2、僕の新しいエッセイ集『ノスタルジーはスーパーマーケットの2階にある』が出版されます。

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パリッコ著『ノスタルジーはスーパーマーケットの2階にある』

出版社による詳細ページ

内容は、僕が特に自由気まま、好き勝手に書かせてもらっている当サイト、つまりデイリーポータルZや、QJWebというサイトなんかで発表した記事を厳選し、大幅に加筆修正したものになっています。

だいたい全編通して「思いついても誰もやらないようなことを徹底的にやってみる」というような内容。冒頭でご紹介した「フルーツ✕発泡酒」の記事も掲載されています。

コロナ禍で僕の大好きな夜の街での飲み歩き他、多くの娯楽が自由に楽しめない昨今、それでも、日常の範囲内でだって、まだまだ小さな幸せやちょっとした冒険は探せるはずだ! なんていうと大げさですが、まぁ、そんなような本になっていると思いますので、もしもご興味ある方はチェックしてみてくださいませ。

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