バンズを抜いたハンバーガーを、あえてバンズで挟んでみたい……。
そんな興味本位から始まった今回の企画ですが、序盤からひたすらに、菜摘のアレンジ食材としてのポテンシャルを思い知る結果となりました。
ここで終わりではなく、次は「菜摘アレンジ選手権」なんかやってみてもいいかもしれないな!
って、あらためて、開発者の方に対する冒涜ですよね、これ。まことに面目ありません……。
バンズを抜いてその代わりにたっぷりの野菜を入れてくれてある、モスバーガーの「菜摘」シリーズに、あえて炭水化物を足してしまったらどうなるでしょうか。
飲食店が創意工夫をこらして提供してくれる料理の、そのせっかくの意図に反した、だけど思いついたらどうしてもやってみたくてたまらない、日常のなかの小さな冒険、「冒涜のグルメ」、やってみたいと思います。
突然ですが、この世には「冒涜のグルメ」とでも言うべきジャンルが存在すると思うんですよね。
初めてそれを意識したのは、神田にある、創業なんと明治38年の老舗酒場「みますや」。その歴史ある名物のひとつが、牛肉と玉ねぎを牛鍋風に煮込んだ「牛煮込」なんですが、実はみますやには意外にも、ごはんものとして「カレーライス」なんてメニューもあるんです。
そこでふと、「この牛煮込み、カレーにかけたら、カレー牛じゃん」と思った。そんな牛丼屋みたいな食べかた、老舗酒場に対する冒涜だろうか……でもやってみたい! と強烈な欲望にかられて両方を注文しようとするも、みますやのカレーは、日替わりの品などとのかねあいで、余裕のあるときにしか作られないちょっとレアなメニュー。けっきょくその日も、それから何度か行ったタイミングでもカレーにはありつけず、つまりまだ「みますやのカレー牛」を実現できたことはないのですが。
ともあれそんなふうに、ちょっと下品と思えたり、せっかくのお店の意図や威厳を台無しにもしかねない、だけどどうしても試してみたい食べかた。それが僕のなかでの「冒涜のグルメ」というわけで、何も犯罪を犯しているわけじゃありません。自己責任の範囲で、こそこそと楽しませてもらうぶんには問題ないですよね? 「いや、ある」って人もいるんだろうけどさ。まぁ「ない寄り」ということで、今回は話をすすめさせてくださいね。
で、今回の本題。ハンバーガーチェーンの「モスバーガー」に、「菜摘(なつみ)」というシリーズがあるのをご存知でしょうか?
これ、バンズの代わりに具をたっぷりの野菜で挟んだ、かなり斬新なメニュー。ラインナップは「モス野菜」「テリヤキチキン」「フィッシュ」「ロースカツ」「海老カツ」「チキン」「ソイモス野菜」の7種類で、たとえば
ならば、
という構成になっています。もはやこれはハンバーガーなのか? という疑念はいなめないものの、糖質制限をしている人なんかにとってはありがたいメニュー。
ただ、あるとき思ってしまったんですよね。
「この菜摘、バンズで挟んでみてぇ……」
と。あきらかに、この革新的メニューの開発担当、ひいてはモスバーガーへの冒涜に違いない。けれども、あえてバンズを排除した菜摘に、あえてバンズを加えることにより生み出される、いわば「モスヤサイマシマシバーガー」。それがどんな味なのか、一度興味を持ったからには試さずにはいられなくなってしまったんです。
さらっとやってるように見えるかもしれませんが、あまりに大量の野菜が使われた菜摘。バンズの上にとりあえずのせ、あふれたレタスを積んでも積んでもこぼれ落ちてきます。まるで賽の河原で延々と石を積んでいる人のような気持ちになりつつも、なんとかおさえこみ、そーっと上のバンズをのせた状態がこちら。
当然このままでは食べようがないので、撮影が済んだらいったん包み紙に戻しましょう。
万が一まねをしてみようという方がいた場合、最初から包み紙のまま、両サイドにバンズをはめこむ方式が楽ちんだと思います。
さて、ではではこいつを……
っと、大口でいただきます。
モグモグモグ、うおー、これは、予想以上にいいぞ!
野菜が多いから薄味になるんじゃないかとも心配してたけどそんなことはなく、オーロラソースのしっかりとした味つけと、トマトのジューシー感、それからパティの存在感もしっかりと感じることができます。
そこに、葉っぱのままと細切り、2種類のレタスの圧倒的なシャキシャキ! まさにヤサイマシマシ状態。これがとっても幸せ!
モス野菜の菜摘が380円で、Lチキバンズが72円。合わせて452円で、まるで1000円越えの高級バーガーを食べたような満足感。
菜摘バーガー、かな〜り、“あり”なんじゃないでしょうか?
と、菜摘のハンバーガーの具としてのポテンシャルに気づいたところで、もはや「冒涜のグルメ」がどうでもよくなり、さらなる好奇心が湧いてきました。
待てよ、よく考えたら、菜摘の構成はシンプルに、具と野菜。であれば、馬鹿正直にハンバーガーにするだけじゃなく、もっといろいろなアレンジで楽しんでしまってもいいんじゃないだろうか?
というわけでここからは、「菜摘×炭水化物」の可能性をさらに探っていきましょう!
いわゆる「フィレオフィッシュ」の具ですね。
この四角いフォルム、“あれ”にぴったりかもしれない。
アツアツをがぶりと噛みしめると、サクサクのパン、シャキシャキレタス、これかまたサクサクのフィッシュカツの三重奏が超快感。
それらがホクホクとした白身魚の旨味、マヨネーズの力強さ、さらにチーズのコクとあいまって、絶品にもほどがあります!
もはや菜摘ってメニュー名、「ホットサンドの具」シリーズに改名してもいいんじゃないの? ってレベル。いや〜、これは満足度の高い一食だなぁ。
もはや今回の実験、失敗する要素を感じなくなってきました。
菜摘はそのまま食べるだけではなく、アレンジ食材としてのポテンシャルを多分に秘めている。ここからはその可能性を、ただただ探り、楽しんでいきましょう。
お手軽に、小麦粉で作られた市販品「フラワートルティーヤ」を買ってきました。まずこのトルティーヤ自体の懐が広いので、対応力の高い菜摘との組み合わせは間違いないでしょうね。
ちょうど家に買ったばかりの、甘味があって辛さは控えめな唐辛子「レッドチェリーペッパーの酢漬け」なんていう小洒落たものがありました。こいつを刻んで、菜摘と一緒にトルティーヤに巻いてみることにしよう。
しかしこうやって広げると、あらためて菜摘の野菜の量に驚かされますね。
食べるときはぐいぐいと力をこめ、ブリトー的な感じに丸めてかぶりつくのがいいでしょう。これまた、野菜の過剰なシャキシャキ、テリヤキチキンの濃厚さ、レッドチェリーペッパーほのかな辛味と爽やかな酸味があいまって、最高にうまい!
さっきは「ホットサンドの具」に改名してもいいと言ったけど、「トルティーヤの具」でも違和感なしです。
どんどん行きましょう。お次は、
カツにたっぷりのソースが染み込ませてあるしっとりタイプ。
これを通常のカツ丼のように卵とじにしてしまうと持ち味が失われそうなので、
で、完成! モスの菜摘「ロースカツ」の、ソースカツ丼。
こ〜れ〜が〜、また!
今回も追いソースでも足さないと味が足りないかな? と思いきや、まったくそんなことはなく、よくソースの染み込んだカツひとつで、どんぶり一杯じゅうぶんにまかなえます。
いわゆる肉が柔らかいタイプではなく、若干みっしりとした食感なのも良くて、小さめにかじっては野菜、玉子、ごはんと合わせてかっこむのがたまらない。
全体の熱で徐々にしんなりとしていくレタスがまたいいんですよねぇ。
細かめの衣をまとわせて揚げたチキンカツ&オーロラソースという組み合わせですね。こいつは、カツを上にのせたサラダうどんにアレンジするなんてどうでしょう?
もうこの時点でうまいんですけどね。
ベースのうどんの美味しさが間違いなく、そこにたっぷりの野菜、サクサクのチキンカツ。こんなもん、うまいに決まってるわけですが、嬉しいのはこのチキン、たっぷりのレタスに加え、細切りのキャベツが入ってるんですよね。
ここに今までの菜摘になかった食感と味わいがあって、こってりめのソースが徐々にうどんぜんたいに混ざって味をまろやかに変化させてくれ、サラダうどんにして大正解!
バンズを抜いたハンバーガーを、あえてバンズで挟んでみたい……。
そんな興味本位から始まった今回の企画ですが、序盤からひたすらに、菜摘のアレンジ食材としてのポテンシャルを思い知る結果となりました。
ここで終わりではなく、次は「菜摘アレンジ選手権」なんかやってみてもいいかもしれないな!
って、あらためて、開発者の方に対する冒涜ですよね、これ。まことに面目ありません……。
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