一度、企画段階から立ち会ってみたい
知らない間にそこにあって、誰も疑問に思わず、でもよくよく見るとふしぎな商店街ゲート。
きっと、製作する人も方法も予算も、とりまくすべてがそれぞれの商店街によって違うのだろうと思う。
一度でいいから企画段階からゲート作りに立ち会ってみたい。まあるい照明とか時計とか、どういう段階で商店街的な要素が盛り込まれるのか。
個人的には、やっぱり最初に紹介した中央林間のゲートみたいなのを作りたいです。

2009年の秋「商店街ゲート」をながめて回った。
商店街の両端にある、人々を迎えるあれだ。
よく見るとあまり見ないような不思議な形をしているものが多い。けれど珍しいなとはあまり思わないのではないか。
私たちは日々気づかないうちにちょっとふしぎな商店街のゲートと一緒に暮らしているのだ。
今はもうなくなっているものもあるだろう10年前のゲートたちの様子をどうぞ。
※2009年11月に掲載された記事の写真画像を大きくして加筆修正のうえ再掲載しました。
小学5年生までを過ごした土地へ久しぶりに行った途中、中央林間駅の江ノ島線のホームから商店街のゲートが見えた。
中央林間駅は江ノ島線のほかに田園都市線も通っていて駅の回りに商店街はいくつかあるようだが、これはゲートにあるとおり、西口商店会のもの。
ノスタルジックでありながら、どこか未来的。独特の形をしている。
カクカクしているようで、頭のてっぺんから花がさくみたいにぱかっと灯りがついていて……「ふしぎ」という言葉しかみあたらない。
ふしぎだけれど、こういうゲートは珍しくない。どこかで見たことはある。ん? 「どこか」って、どこだろう。
というわけで、近場の町をめぐったり、デイリーポータルZ関係者から手持ちの写真を送ってもらったりして商店街のゲートを集めてみたのだ。
40近いゲートが集まった。「同じ物がひとつとしてない」とはよく言うが、集めた商店街のゲートの写真を見て、まさにそう思った。
集めたからには分類して鑑賞したいというのが情というものだ。
どういう軸でまとめたらこの自由な商店街のゲートがまとまるだろう。
考えた末、以下のようなマトリクスにまとめてみた。
なにしろ意匠があまりにも奔放でやりたい放題だ。
かなり無理やりだがどちらかというとあたりさわりのないものをコンサバ、対して近未来的だったりモニュメント風だったりチャレンジングなデザインのものをアバンギャルド軸においた。
さらに、シンプルなものをクール、商店街ならではの人の温かみのようなものをホットと分類した。
では、その分類ごとにみていきましょう。
商店街のゲートを集めて分類した結果、今回ゲートを探すきっかけになった中央林間西口商店会のゲートは「アバンギャルドでクール」という立ち位置だということが分かった。
探して歩いて見つけた中に同様に「アバンギャルド」で「クール」と分類されたものは2つあった。
かっこいい……!
どちらも、ちょっと意匠にこだわりのあるモニュメント風。挑戦的なデザインだ。
この2つは中央林間のゲートよりも建造物としてだぶと新しいように見える。こういった商店街ゲートのふしぎさは脈々と受け継がれているということが分かる。
変わった造形ではないが、クールでやや冒険したタイプのゲートは他にもあった。
新世界はAC/DC風デザイン。超クールだ。
川崎の銀柳街のゲートは町の名物らしいステンドグラスを盛り込むところまではむしろ保守的ともいえるが、柄やもくもくした形に冒険心をみた。
さて、ゲートを見ていて改めて思ったのは、こういうものが町の中心部にどーんと立っていて、そしてこの下を毎日人々がくぐるということの面白さだ。
通りに建っているので、人はくぐらざるを得ない。
そもそも人をくぐらせるためにある「ゲート」という存在そのものが「へん」なもなのか?
分からなくなりながら、続いてアバンギャルドでホットと分類されたゲートたちを見ていきたい。
へんな形でありながら(アバンギャルド)、商店街らしいあたたかみを感じさせる(ホット)。そんなゲートとは。
分類「アバンギャルド×ホット」の代表と位置づけたいのが下の写真、旗の台 東口通り。
オーソドックスな形のいかにも「ゲート」というゲートなのだが、右のところに今回言いたい、商店街ゲートならではのヘンさが端的にあらわれたデザインがなされている。
なんか伸びてる3本の爪、そしてまあるい照明。これぞという感じだ。
脇についておひさまマークが商店街の親しみをアピールしている。ここが“ホット”なポイントである。
駒込 アザレア通りもオーソドックスかとおもいきや、商店街ゲートならではのアバンギャルドがひそんでいるタイプ。
商店街ならでは、というデザイン手法がそもそもちょっとおもしろいものなのかもしれない。
この手のゲートは続々と見つかった。
一見無難にまとまっているようで照明器具がもこもこしていて、やりやがったな、という感じ。かっこいい。
そうか、ネオンか!と思わされる昭和通り。このまさに昭和なゲートを、猛スピードでベンツが走り抜けていった。
形はそれほどアバンギャルドとはいえないものの、色づかいがアグレッシブなゲートもあった。
デザイン的にはそこまでへんとは言えないのだけど、この色味で毎日街のまんなかに立ってると思うとやっぱり、やってくれるなあ、という感想だ。
ゲートに横断幕を張るケースはいくつか見受けられたが、そういった、ゲートへのプラスアルファがまた唐突で、おお、と思わされたものもあった。
近隣のお寺と神社の名前が入っている。超ホット。
こちらはゲート自体はクールなタイプなのだが、加盟店舗の名前が入ったちょうちんをつけたことで一気に印象がホットに転じた。
商店街ならではのふしぎさをかもしだす良いゲートだ。
さて、ここまでが便宜上「アバンギャルド」と分類したゲートたち。集めてみたら、妙なバラエティの豊かさだった。
さて残りはオーソドックスな「コンサバ」タイプのゲートなのだが、これがコンサバとはいえ一筋縄ではいかないものばかりなのだ。
保守的でいかにも商店街ゲートらしいゲートで、かつ商店街の温かみがあふれるもの。それを集めたのがこのページだ。
上記の抽出条件で自然と集まったゲートはどんなゲートかというと、こういうことになっていた。
そう、商店街のゲートには「メルヘン」という方向性が、確固たるジャンルとして存在している。夜に光るのも良い。
こちらも同じタイプのゲート。そして、そう。気づいたあなたよありがとう。
時計である。
メルヘン、あと、時計。商店街のゲートに忘れてはならない要素だ(時計についてはさらに後述)。
メルヘンがあるなら、ファンシーもある。
あと、商店街の「街」を「村」とするひょうきんさも忘れてはいない。
見ていくと、ファンシーにもいろいろな種類があるのだと思わされる。
ファンシーの解釈も商店会それぞれなのだ。
商店街ゲートで良いのは共通点としてあげられるのが、時計、とか、人形、とか、まあるい照明とか、「そこでつながるのか」という意外性だろう。
思わぬ意匠で横につながるのが商店街ゲートの世界だ。
こちらはゲート自体はシンプルなのだが、横断幕がホットだ。
「シモキタどうぶつえん」というのは、地域の小学生が動物を描いて街路灯に旗としてぶらさげて展示しているイベントだそう。
商店街ゲートには子どもの絵とのコラボレーションの要素があるのも忘れてはいけない。
以前自宅の近所の商店街でも近所の小学生に動物などのテーマをとくに与えずに自由に書いた絵を旗にして掲揚していた。
武田信玄のイラストの下に「あなたの好きな武将は?」と書いてある旗がパン店の前ではためいていて、私はそれが一番好きだった。
上の写真でもそうだが、フォントが超オーソドックスでも、それをなぎたおして個性を主張してくるのも商店街ゲートの特徴だと思う。
最後のに残ったのは、これが一番世の中では多いのかもしれない。コンサバでクールなタイプだ。
「普通」といっていいというゲートが集まったのだが、はっとするザ・レトロなものもあって、あ、私が求めていたのはこれだったのかもと思わされている。
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保守的でクールで、特にデザインに凝ったわけではない、シンプルなゲートに商店街の名前がかいてある。それだけのゲートもたくさんあった。
じゃあ普通でおもしろくないのかというと、ぜんぜんそんなことないのだ。
まず、古い物はフォントや雰囲気がすごい。
文句なしでかっこいい。
一見普通のゲートにみせかけておいて、よくよく見るとひとくせあったりするのも見逃せない。
そして、やはりここでも出てくるのは時計だ。
思うのは、結構この時計で習慣的に時間を確認している人がいるんじゃないか、ということだ。
道すがらにある時計というのは頼もしい。商店街のゲートに時計があしらわれているのはすごく合理的で需要に応えていると思う。
上の石川台駅前のゲートは今回集めた中でも特にシンプルだった。シンプルすぎて時計を支えるために立ってるような感じがしてくる。
商店街のゲートは、言ってしまえばなくてもいいものだ。
実際、商店街はあるけれどゲートがない場所もたくさんあった。なくてもいいから、作るのも難しいんだろう。それこそが商店街ゲートの不思議さのみなもとなのではないか。
左上、日吉は撮影時間が夕方だったからか、4つのゲートに次々とバスやらタクシーやら、普通の車やらが流れて行っていた。競争用ゲートみたいに見えた。
荻窪の北口駅前通商店街はシンプルすぎてそのせいで、またちょっと別の風情が出ている。
どう転んでも、にじみ出てしまう独自の雰囲気。それが商店街のゲートなのだ。
これが全国にあるというのは、どうもおもしろおかしい。
気づかないだけで、私たちはずっと、ふしぎな商店街ゲートと暮らしているのだ。
知らない間にそこにあって、誰も疑問に思わず、でもよくよく見るとふしぎな商店街ゲート。
きっと、製作する人も方法も予算も、とりまくすべてがそれぞれの商店街によって違うのだろうと思う。
一度でいいから企画段階からゲート作りに立ち会ってみたい。まあるい照明とか時計とか、どういう段階で商店街的な要素が盛り込まれるのか。
個人的には、やっぱり最初に紹介した中央林間のゲートみたいなのを作りたいです。
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