特集 2019年10月13日

私たちはふしぎな商店街ゲートと暮らしている(デジタルリマスター)

2009年の秋「商店街ゲート」をながめて回った。

商店街の両端にある、人々を迎えるあれだ。

よく見るとあまり見ないような不思議な形をしているものが多い。けれど珍しいなとはあまり思わないのではないか。

私たちは日々気づかないうちにちょっとふしぎな商店街のゲートと一緒に暮らしているのだ。

今はもうなくなっているものもあるだろう10年前のゲートたちの様子をどうぞ。

2009年11月に掲載された記事の写真画像を大きくして加筆修正のうえ再掲載しました。

1979年東京生まれ、神奈川、埼玉育ち、東京在住。Web制作をしたり小さなバーで主に生ビールを出したりしていたが、流れ流れてデイリーポータルZの編集部員に。趣味はEDMとFX。(動画インタビュー)

前の記事:この商品はかっこいい名前の製法で作っていますという売り方

> 個人サイト まばたきをする体 Twitter @eatmorecakes

中央林間の商店街ゲートがふしぎ

小学5年生までを過ごした土地へ久しぶりに行った途中、中央林間駅の江ノ島線のホームから商店街のゲートが見えた。

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中央林間駅は江ノ島線のほかに田園都市線も通っていて駅の回りに商店街はいくつかあるようだが、これはゲートにあるとおり、西口商店会のもの。

ノスタルジックでありながら、どこか未来的。独特の形をしている。

カクカクしているようで、頭のてっぺんから花がさくみたいにぱかっと灯りがついていて……「ふしぎ」という言葉しかみあたらない。

ふしぎだけれど、こういうゲートは珍しくない。どこかで見たことはある。ん? 「どこか」って、どこだろう。

というわけで、近場の町をめぐったり、デイリーポータルZ関係者から手持ちの写真を送ってもらったりして商店街のゲートを集めてみたのだ。

同じ物のひとつとしたなさ

40近いゲートが集まった。「同じ物がひとつとしてない」とはよく言うが、集めた商店街のゲートの写真を見て、まさにそう思った。

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モニュメントみたいなことになってるゲートから
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エレクトロな昭和まで

うまく分類できないか

集めたからには分類して鑑賞したいというのが情というものだ。

どういう軸でまとめたらこの自由な商店街のゲートがまとまるだろう。

考えた末、以下のようなマトリクスにまとめてみた。

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なにしろ意匠があまりにも奔放でやりたい放題だ。

かなり無理やりだがどちらかというとあたりさわりのないものをコンサバ、対して近未来的だったりモニュメント風だったりチャレンジングなデザインのものをアバンギャルド軸においた。

さらに、シンプルなものをクール、商店街ならではの人の温かみのようなものをホットと分類した。

では、その分類ごとにみていきましょう。

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ふしぎな形とクールなたたずまい

商店街のゲートを集めて分類した結果、今回ゲートを探すきっかけになった中央林間西口商店会のゲートは「アバンギャルドでクール」という立ち位置だということが分かった。

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しつこいですが、中央林間西口商店会

探して歩いて見つけた中に同様に「アバンギャルド」で「クール」と分類されたものは2つあった。

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旗の台 稲荷通り
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武蔵小杉 こすぎ南壱番街

かっこいい……!

どちらも、ちょっと意匠にこだわりのあるモニュメント風。挑戦的なデザインだ。

この2つは中央林間のゲートよりも建造物としてだぶと新しいように見える。こういった商店街ゲートのふしぎさは脈々と受け継がれているということが分かる。

変わった造形ではないが、クールでやや冒険したタイプのゲートは他にもあった。

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川崎 銀柳街(ライター榎並さん提供)
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大阪 新世界(ライター 大北さん提供)

新世界はAC/DC風デザイン。超クールだ。

川崎の銀柳街のゲートは町の名物らしいステンドグラスを盛り込むところまではむしろ保守的ともいえるが、柄やもくもくした形に冒険心をみた。

そもそも「ゲート」ってなんだろう

さて、ゲートを見ていて改めて思ったのは、こういうものが町の中心部にどーんと立っていて、そしてこの下を毎日人々がくぐるということの面白さだ。

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下北沢 下北沢東会(ライター榎並さん提供)
照明の上に付けられた鏡っぽい半球が気になる

通りに建っているので、人はくぐらざるを得ない。

そもそも人をくぐらせるためにある「ゲート」という存在そのものが「へん」なもなのか?

分からなくなりながら、続いてアバンギャルドでホットと分類されたゲートたちを見ていきたい。

へんな形でありながら(アバンギャルド)、商店街らしいあたたかみを感じさせる(ホット)。そんなゲートとは。

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あたたかみの中にのぞく意外性

分類「アバンギャルド×ホット」の代表と位置づけたいのが下の写真、旗の台 東口通り。

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旗の台 東口通

 

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温かみはあるが、変わっている

オーソドックスな形のいかにも「ゲート」というゲートなのだが、右のところに今回言いたい、商店街ゲートならではのヘンさが端的にあらわれたデザインがなされている。

なんか伸びてる3本の爪、そしてまあるい照明。これぞという感じだ。

脇についておひさまマークが商店街の親しみをアピールしている。ここが“ホット”なポイントである。

駒込 アザレア通りもオーソドックスかとおもいきや、商店街ゲートならではのアバンギャルドがひそんでいるタイプ。

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駒込 アザレア通り(ライター三土さん提供)
ほっそい棒でなんかぶらさがっている不安

商店街ならでは、というデザイン手法がそもそもちょっとおもしろいものなのかもしれない。

この手のゲートは続々と見つかった。

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新丸子 東栄会

一見無難にまとまっているようで照明器具がもこもこしていて、やりやがったな、という感じ。かっこいい。 

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荏原中延 昭和通り

そうか、ネオンか!と思わされる昭和通り。このまさに昭和なゲートを、猛スピードでベンツが走り抜けていった。

色づかいのアグレッシブ

形はそれほどアバンギャルドとはいえないものの、色づかいがアグレッシブなゲートもあった。

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長原 ながはら商店街
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椎名町 サンロード(ライター 加藤正行さん提供)

デザイン的にはそこまでへんとは言えないのだけど、この色味で毎日街のまんなかに立ってると思うとやっぱり、やってくれるなあ、という感想だ。

ゲート、プラスアルファのふしぎ

ゲートに横断幕を張るケースはいくつか見受けられたが、そういった、ゲートへのプラスアルファがまた唐突で、おお、と思わされたものもあった。

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新丸子 八幡町共進会
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もう1本の柱には「こころのふるさと 日枝神社」と

近隣のお寺と神社の名前が入っている。超ホット。

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照明をちゃんと見たら花の形になってた。商店街らしさ!

 

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西小山 ニコニコ通り

こちらはゲート自体はクールなタイプなのだが、加盟店舗の名前が入ったちょうちんをつけたことで一気に印象がホットに転じた。

商店街ならではのふしぎさをかもしだす良いゲートだ。

 

さて、ここまでが便宜上「アバンギャルド」と分類したゲートたち。集めてみたら、妙なバラエティの豊かさだった。

さて残りはオーソドックスな「コンサバ」タイプのゲートなのだが、これがコンサバとはいえ一筋縄ではいかないものばかりなのだ。

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「メルヘン」という確固たるジャンル

保守的でいかにも商店街ゲートらしいゲートで、かつ商店街の温かみがあふれるもの。それを集めたのがこのページだ。

上記の抽出条件で自然と集まったゲートはどんなゲートかというと、こういうことになっていた。

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元住吉 モトスミ・ブレーメン通り商店街
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ブレーメンの音楽隊の、あの動物たちが

そう、商店街のゲートには「メルヘン」という方向性が、確固たるジャンルとして存在している。夜に光るのも良い。

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洗足池 ファミリーロード
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こちらは男の子ふたり

こちらも同じタイプのゲート。そして、そう。気づいたあなたよありがとう。

時計である。

メルヘン、あと、時計。商店街のゲートに忘れてはならない要素だ(時計についてはさらに後述)。

当然ファンシーもひょうきんもある

メルヘンがあるなら、ファンシーもある。

あと、商店街の「街」を「村」とするひょうきんさも忘れてはいない。

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荏原中延 サンモールえばら
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成増 なりますスキップ村(ライター 大山さん提供)

見ていくと、ファンシーにもいろいろな種類があるのだと思わされる。

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駒込 しもふり銀座(ライター三土さん提供)
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練馬 たぬき小路(ライター小野さん提供)

 

ファンシーの解釈も商店会それぞれなのだ。

街のうねりと個性

 

商店街ゲートで良いのは共通点としてあげられるのが、時計、とか、人形、とか、まあるい照明とか、「そこでつながるのか」という意外性だろう。

思わぬ意匠で横につながるのが商店街ゲートの世界だ。

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元住吉 モトスミ・オズ通り
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Oの部分にはオズの魔法使いのメンバーが
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戸越銀座 とごしぎんざ商店街
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石川台 希望ヶ丘商店街
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下北沢 一番街(ライター 榎並さん提供)

こちらはゲート自体はシンプルなのだが、横断幕がホットだ。

「シモキタどうぶつえん」というのは、地域の小学生が動物を描いて街路灯に旗としてぶらさげて展示しているイベントだそう。

商店街ゲートには子どもの絵とのコラボレーションの要素があるのも忘れてはいけない。

以前自宅の近所の商店街でも近所の小学生に動物などのテーマをとくに与えずに自由に書いた絵を旗にして掲揚していた。

武田信玄のイラストの下に「あなたの好きな武将は?」と書いてある旗がパン店の前ではためいていて、私はそれが一番好きだった。

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赤羽 1番街(エアギタリスト 宮城さん提供)

上の写真でもそうだが、フォントが超オーソドックスでも、それをなぎたおして個性を主張してくるのも商店街ゲートの特徴だと思う。

ザ・レトロは次のジャンル

最後のに残ったのは、これが一番世の中では多いのかもしれない。コンサバでクールなタイプだ。

「普通」といっていいというゲートが集まったのだが、はっとするザ・レトロなものもあって、あ、私が求めていたのはこれだったのかもと思わされている。

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大原 北町商店会(ライター 玉置さん提供)
かつては街にふつうのコーラの看板があった

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ふつうのゲートのはずなんだけど

保守的でクールで、特にデザインに凝ったわけではない、シンプルなゲートに商店街の名前がかいてある。それだけのゲートもたくさんあった。

じゃあ普通でおもしろくないのかというと、ぜんぜんそんなことないのだ。

まず、古い物はフォントや雰囲気がすごい。

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東門前 昭和マーケット(ライター小野さん提供)

文句なしでかっこいい。

厚みでアピール

一見普通のゲートにみせかけておいて、よくよく見るとひとくせあったりするのも見逃せない。

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奥沢 奥沢商店街
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下に入ると、なんか輪っかになってる
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菊名 菊名ウエストモール(西口商店街)
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こちらh衝撃の薄さ。「薄い」という評価軸が現れるとは

なくてもいい、だから不思議になる

そして、やはりここでも出てくるのは時計だ。

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熊野前 はっぴーもーる熊野前(ライター木村さん提供)
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石川台 石川台駅前商店街

思うのは、結構この時計で習慣的に時間を確認している人がいるんじゃないか、ということだ。

道すがらにある時計というのは頼もしい。商店街のゲートに時計があしらわれているのはすごく合理的で需要に応えていると思う。

上の石川台駅前のゲートは今回集めた中でも特にシンプルだった。シンプルすぎて時計を支えるために立ってるような感じがしてくる。

商店街のゲートは、言ってしまえばなくてもいいものだ。

実際、商店街はあるけれどゲートがない場所もたくさんあった。なくてもいいから、作るのも難しいんだろう。それこそが商店街ゲートの不思議さのみなもとなのではないか。

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日吉 駅前から4本の商店街が始まっていて、同じデザインで色違いのゲートが4つ立っていた
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新大工街 新大工商店街(ライター T・斎藤さん提供)

 左上、日吉は撮影時間が夕方だったからか、4つのゲートに次々とバスやらタクシーやら、普通の車やらが流れて行っていた。競争用ゲートみたいに見えた。

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長崎 アルコア中通り商店街(ライター T・斎藤さん提供)
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荻窪 荻窪北口駅前通商店街(書かなくてもいいでしたかね)(ライター 榎並さん提供)
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赤羽 赤羽中央街(エアギタリスト 宮城さん提供)

荻窪の北口駅前通商店街はシンプルすぎてそのせいで、またちょっと別の風情が出ている。

どう転んでも、にじみ出てしまう独自の雰囲気。それが商店街のゲートなのだ。

これが全国にあるというのは、どうもおもしろおかしい。

気づかないだけで、私たちはずっと、ふしぎな商店街ゲートと暮らしているのだ。


一度、企画段階から立ち会ってみたい

知らない間にそこにあって、誰も疑問に思わず、でもよくよく見るとふしぎな商店街ゲート。

きっと、製作する人も方法も予算も、とりまくすべてがそれぞれの商店街によって違うのだろうと思う。

一度でいいから企画段階からゲート作りに立ち会ってみたい。まあるい照明とか時計とか、どういう段階で商店街的な要素が盛り込まれるのか。

個人的には、やっぱり最初に紹介した中央林間のゲートみたいなのを作りたいです。

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ゲートが個性的すぎたので、撮影中は反動で全国どこでも同じのマクドナルドを食べた

 

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