通販でも販売します
無駄ゴスティーニ、いっぱい作ってしまったので通販でも売ります。よかったら……。ちなみに完成版も売っています。
私は設計もできないのですが、値段の計算もできず、全部売れても赤字ということが判明しました。なんでだ?
「無駄ゴスティーニ」
居酒屋で知人たちと飲んでいたとき、急にこの言葉が降りてきた。「ディアゴスティーニの無駄バージョン、無駄ゴスティーニ」と、無意識のうちに口にしていて、鳥肌が立った。
知人たちは、ははは、と笑ってすぐに別の話題に移っていたが、私は頭の中でずっと「無駄ゴスティーニ」が鳴り響いていた。無駄ゴス……ティー二……。
私は、無駄なものを作る「無駄づくり」という活動に人生を捧げている。デイリーポータルZでは、「自分だけ盛れるマシーン」や「wwwと打っているときの表情を相手に送れるマシーン」などを作った。まさに、無駄ゴスティーニを作るべき人間なのである。
居酒屋の帰り道で私は考え込んでいた。
この無駄づくりで作ったものをキット化すれば、それは「無駄ゴスティーニ」になるのではないだろうか。「無駄ゴスティーニ」という素晴らしいネーミングだったら、絶対に売れるはずである。よくわかんないけど、300万円くらい黒字になるだろう。そしたら、そのお金で車を買うんだ。
キーボードから手を離すと、札束で頬を優しく撫でられるマシーンを作りましたhttps://t.co/11Xhvclxmv pic.twitter.com/yYdhdTVbDx
— 藤原 麻里菜 | Marina Fujiwara (@togenkyoo) September 14, 2017
以前、「仕事のやる気がなくなったら札束でぶたれるマシーン」というのを作ったことがある。このときはロボットアームを使っているが、もうちょっと簡略化できる気がするのだ。これを無駄ゴスティーニのキットにしたらいいんじゃないだろうか。絶対、流行る。インスタ映えだ。あげみざわだ。
ひらめいた「無駄ゴスティーニ」が頭の中で膨らんでいき、興奮する。キット化する方法や設計など具体的なことは全く考えないまま、300万円で買える車を検索して寝た。ボルボに乗る夢を見た。
あの日から数ヶ月が過ぎた。
無駄の先輩、アートユニットの明和電機さんが秋葉原のラジオデパートにお店を作るらしい。
ラジオデパートとは、電子パーツ屋さんがたくさん入った古いビルだ。私はよく秋葉原に部品を買いに行くが、ラジオデパートは独特の”気”が流れているようで、素人が迂闊に入ってはいけない場所だと勝手に思っている。あのビルの中に入れるようになるには、厳しい修行を経て電子工作マイスターになってからだぜ……。
そんなラジオデパートに明和電機がお店を出す。しかも、変なマシーンを販売するブースもあるらしいのだ。これは、「無駄ゴスティーニ」でラジオデパートに切り込めるチャンスかもしれない。
明和電機の土佐社長に「無駄ゴスティーニ」の話をチャットでしたところ、「無駄ゴスティーニ! うまい!」と返信がきた。
そして、数分後に設計図が送られてきた。
数日後に、3Dのモデルが送られてきた。
また数日後に、実物の写真が送られてきた。
明和電機が設計してマシーンを作ってくれている。言葉にできない感慨深さと嬉しさ、そして、はちゃめちゃなスピード感に圧倒されて、感情が全く追いつかなくなってしまった。
私は設計図を書かないで物を雑に作り始めるのだが、土佐さんだけは「すごい! 江戸時代のからくり職人と一緒だ!」と褒めてくれる。
でも、この緻密な設計図を見ると、なんだかもう……。なんだかもう……です。
自分の行いを反省しながら、土佐さんが作ってくれたものを元に、少し頑張ってみることにした。
モックで使っているモーターは、シンクロナスモーターという種類のものなのだが、値段がけっこうする。これだとキットの値段がずいぶん高くなってしまう。本家は創刊号がめちゃくちゃ安い。本家と張り合うには、安さを追求していかなきゃダメだと思ったのだ。
同じくらいの速度で安価なモーターを探したところ、秋葉原のとあるパーツ屋にてぴったりなものを見つけた。形は大きく変わるものの、値段が3分の1以下にまで抑えられる。
そして、このモーターがハマるように、アクリル部分の設計を変更することにした。
私は細かいことが苦手である。設計図を書かないで物を作り始めるのも、細かい計算などができないからだ。あと、工作にありがちな機構の仕組みやオームやアンペアなどの計算も分かっているようで分かっていない。
でも、パッションだけはあります。パッションだけで電子工作をしています。
今回も、9割出来上がっている設計をパッションでいじったところ、ミスを連発し、ハマるところがハマらなかったり、動かなかったりした。パッションだけで設計はできない。ちゃんと計算をしよう。
なんとか出来上がり、綺麗に動くようになった。人からお金を取るものなので頑張った。
パッション設計により、アクリルを切り出すレーザーカッターの使用料金や資材の購入費がかさんでたいへんな金額と時間を費やしてしまった。
パーツを切り出したところで思った。本家は毎月少しずつパーツが送られてくるシステムである。
しかし、この無駄ゴスティーニはパーツの一つ一つが地味すぎる。アクリルの一切れが送られてきても、なんの高揚感もないのではないだろうか。
本家のシステムは諦めて、全て含んだキットとして販売することに決めた。
キットの中身が出来上がったので、あとは「無駄ゴスティーニ」のゴスティーニ部分を作っていきたいと思う。本家は雑誌とセットになっている。「ゴスティーニ」と名のつくものを作るからには、良い雑誌を作らなければならない。
しかし、私はデザインセンスがほとんどゼロなので、知人のグラフィックデザイナーに頼むことにした。
ひとまず、商品の写真を撮影してもらった。「高級感のある感じで」と注文したところ、しっかりとラグジュアリーに撮影してくれた。
何回か打ち合わせを重ねて完成した冊子が、家に届いた。
可愛い……。これは、完全なるゴスティーニだ。
無駄ゴスティーニの”無駄”部分と”ゴスティーニ”部分は作り上げることができた。しかし、「もっとオリジナルなものを作りてえ」という欲望がでてきた。そこで、キットのパーツを入れる袋を何かもっと可愛らしいものにしようと思いついた。
少し中身が透けて見える「テンチャック袋」にロゴをプリントアウトしたものを作りたい。
「Alibaba」という海外の工場と繋がれるサービスがある。そこで、100枚の小ロットから作ってくれる中国の工場を見つけたので、チャットで連絡した。すぐに値段と送料の連絡がきたのだが、提示された金額が日本の工場で見積もりを取った金額の半分以下だった。中国、すげえ。
いかんせん初めて利用するので、「詐欺だったらどうしよう」と思いながらも担当者とやりとりをする。1週間後に完成品の写真が送られて来て、3日後には家に届いた。スピード感よ。
”気”がある……とビビっていたラジオデパートだが、中に入ってみると、おもしろいお店がたくさんある最高なビルだった。
一階には、可愛いLEDが売っているお店があるし、二階には箱しか売っていない店があったりArduinoというマイコンが入ったガチャガチャがあったり。ディープだけれども楽しい。
電子工作をするギャルユニット「ギャル電」と一緒にLEDを見ながら「ユメカワだ〜」と、はしゃいでいた。
明和電機秋葉原店は、ラジオデパートの2階だ。「ラジオスーパー」というコーナーにギャル電も含め、いろいろな変な人たちの商品が販売されている。
真ん中に無駄ゴスティーニを置かせてもらった。
「無駄ゴスティーニ」を形にすることができて、かなり満足だ。居酒屋で思いついたものでも、ちゃんと形にしたら達成感がある。
飲み会で出る親父ギャグも実際にやったら面白いんじゃないだろうか。そうであってほしい。
「私の作ったものは世界一無駄だなー」と思っていたが、世の中にはそれより無駄なものがあることを知った。これは、木の棒に肉がついているオブジェ「きになるおにく」。
無駄ということに驕って生きていた。もっと無駄なものを作れるように精進します。
デイリーポータルZの顔が大きくなる箱のキットも売っていました。
札束でぶたれるマシーンはオフィスでも使える便利グッズ。
10連休明け、五月病になりそうな方はぜひお早めにゲットしてください。組み立ても簡単です。2300円で販売しております。
販売前、無駄ゴスティーニを知人たちに見せたところ、「これは、一台1万円でも売れる」「私が秋葉原に来た観光客で、これを見たら絶対に絶対に買う」などともてはやされた。
これはボルボも近いなー。開店した瞬間、売り切れだなー。と、なぜか調子にのって発売日を迎えたのだが、そんなことはもちろんなかった。こういう結果を迎えてから、「あれってお世辞だったんだ」と気づくときがある。
それでも、なぜか3週間後には完売し、入荷を待ってくれているお客さんもいてくれたようです。無駄なものもなにかの需要があるのだろうか……。それとも、時空が歪んで何か別の世界線に突入してしまったのだろうか……。真実はわかりませんが、買ってくださったかた、ありがとうございます。
無駄ゴスティーニ、いっぱい作ってしまったので通販でも売ります。よかったら……。ちなみに完成版も売っています。
私は設計もできないのですが、値段の計算もできず、全部売れても赤字ということが判明しました。なんでだ?
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