特集 2022年4月6日

紋別に流氷を見に行ってきた

ことしの2月、2年ぶりにドイツから北海道の実家に帰った。 

2月の北海道は冬真っ只中。せっかくだから冬にしかできないことをしようと、両親の提案で流氷を見に紋別に行くことにした。

36年間、流氷とは特に縁の無い人生を歩んできたが、一度見たらあれよあれよと流氷の魅力にハマってしまった。

1986年東京生まれ。ベルリン在住のイラストレーター兼日英翻訳者。サウジアラビアに住んでいたことがある。好きなものは米と言語。

前の記事:カナダのおやつ「メープルタフィー」を北海道の雪で作ってみた

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そもそも流氷ってなんだ

「流氷」とは、一般的に海水が凍ってできた、移動する氷のことを言う。

北海道で見られる流氷は、シベリアからサハリンの東側を通り、海流に乗って南下してくるもので、北半球で見られる最も南の流氷である。

陸や島などに囲まれているオホーツク海では、太平洋からの温かい海水が入ってきにくいほか、シベリアからの寒い風によって海水の温度が下がり、凍りやすくなる環境であるそう。

また、アムール川からの淡水が海水と混ざることによってさらに凍りやすくなるため、流氷が出来やすい場所なのである。

子供の頃厚岸に住んでいた父によると、昔は太平洋側にも流氷が来ることが頻繁にあったそうで、流氷に乗って遊んでいたらしいが、最近ではほとんどオホーツク海側にしか接岸しなくなったそうだ。

それもそのはず、地球温暖化の影響でオホーツク海の流氷は年々減っているらしい。日本での流氷の観測は1892年から行われているそうだが、現在の流氷の量は100年前と比べて半分近くまで減ってしまったそうだ。 

流氷はなかなか見れない

恰も流氷に詳しいように書いているが、これは帰ってきてから流氷について読み漁って分かったことで、今回紋別に行く前の流氷の知識はゼロであった。 

ただ唯一知っていたことは、流氷はなかなか見れないものである、ということだった。 

紋別で流氷が見れるのは1月下旬から3月ごろなのだが、海流や風などによって流氷が移動するため、シーズン中であっても確実に見れるものではないそうだ。 

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例えば、こちらは2022年2月4日と5日の流氷の動きを表す図。ピンク色のところが流氷なのだが、2月4日には網走に接岸していた流氷が、5日にはすっかりなくなっている。物凄いスピードで移動しているようだ。(海氷情報センターから引用)

流氷好きの北海道在住の両親でさえも、ここ数年で一度しか見れていないそう。 

ちなみに、その時は朝テレビで「今、根室に流氷が来てる」と言っていたので、片道4時間かけて見に行ったら見れたらしい。

根室での滞在時間は30分だったそう。

また、2010年に北村ヂンさんが「もんべつ流氷まつり」に行った際も、流氷シーズン真っ只中であったにもかかわらず、流氷を見ることができなかったそう。 

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でも氷柱抱きつき大会は楽しそうでした。

とにかく、流氷とはタイミングが合わないと見れない、希少なものらしい。そんなものを、果たして見ることができるんだろうか。 

見れました 

実家での滞在日数が限られているため、紋別へ行く日は1か月ほど前から決めていた。あとはその日に流氷が見れることを祈るだけである。

実家から車で5時間ほどかけて紋別に到着。北海道は何でも遠い。

紋別に到着後、日没まで少し時間があったので、紋別市街から西の方にある流氷スポットに行ってみることにした。

オムサロ・ネイチャー・ビューハウスが目印。ここに流氷が良く見える場所がある。
その名も「流氷岬」。名前だけは頼もしい。

果たして流氷は来ているんだろうか。期待に胸を膨らませながら海岸へ向かうと……

ん?なんだこれ?
丸い氷の塊が海にもゴロゴロ、
海岸にもゴロゴロ転がっている。

物凄い量の氷の塊が海に浮かび、浜に打ち上げられていた。なんか想像していたのと違うが、これも流氷なのだろうか?

想像していた流氷。

実はこれは波にもまれて削られて出来た氷の塊の群れで、立派な流氷である。

確かに海岸の砂が盛り上がるぐらい波が激しかった。

こんな風に波にもまれて丸くなっていくのか。水平線も白く光っているので、ずっと沖の方にも流氷があるんだろう。

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浜に打ち上げられた氷球が盛り上がっていて、不思議な風景が出来上がっている。

ネイチャービューハウスの売店の方に聞くと、一昨日は流氷は見えなかったが、昨日の強風で海岸まで流れてきたのでは、と言っていた。超ラッキーである。

海氷速報を調べてみると、前の日(左)と比べて当日(右)は紋別付近の流氷の密度が上がっているのが分かる。(色が濃いほど密度が高い)(海氷情報センターから引用)

紋別に到着した途端に流氷を見れてしまったが、今回のハイライトである砕氷船「ガリンコ号」に乗るのは明日なのだ。

明日の朝まで流氷は紋別にとどまってくれるだろうか。寝る時も流氷が心配だった。

生まれて初めて体験した「流氷がいなくなってしまう」心配。
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北極のような異世界 

果たして流氷は紋別にとどまってくれたのだろうか。次の日の朝、ドキドキしながらガリンコ号の乗り場へ向かった。 

ガリンコ号の乗り場でもあるオホーツク海洋交流館。
今日乗るのはガリンコ号2。船の前方にあるドリルで氷を砕きながら進む。氷があれば、の話だが。
いよいよガリンコ号に乗船。
と乗ってみたものの、海岸付近には流氷は見当たらず。

寝てる間にどこかへ流れていってしまったのか。期待がしぼむ中、ガリンコ号は沖に向かって出港した。

が、沖に出て少しすると水平線が白く光っているのが見えてきた。あれ、もしかして流氷じゃないか?

水平線をなぞる白い線。流氷だ!

そして海岸から離れるにつれ、氷の塊が徐々に現れてきた。

流氷、いたーーーっ!
流氷が集まってる場所とそうでない場所の境界線がくっきり見える。
そして進めば進むほど、大きな板状の流氷が現れてくる。
角が削られてお盆のような形になった流氷のことを「はす葉氷」というそうだ。大皿サイズの小さいものから数メートルのものまで、大きさも様々。
進むにつれ、続々とどでかい流氷たちも見えてきた。
これなんか昔住んでたアパートよりデカそうだ。
見渡す限り氷の世界。永遠と眺めていられる。

こういう動画を1時間ぐらい見ていたい。

進めど進めど氷の景色が続くので、脳がトランス状態に入る。

ずっと流氷だけを眺めていると「もしかして私たちは北極まで来てしまったのでは」とも思えてきた。流氷ハイ状態だ。 

たまに後ろを振り返って「そうだ、ここは紋別だった」と思い出す。

それにしても昨日と今日と流氷が見れてなんと運が良かったのだろう。ホクホクした気分でガリンコ号の船員の方と話をしていると、彼がこう言った。

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流氷を追いかけて、いざ網走へ

網走方面に流氷が移動しているという情報を得て流氷欲が掻き立てられた私たちは、紋別の観光はやめてすぐに網走へ向かうことにした。 

今回はアザラシランドは断念した。ごめん!また来るから!

紋別から網走方面に2時間ほど車を走らせ、網走から少し東の方にある北浜駅に向かった。

冬季限定の観光列車「流氷物語号」が停車する北浜駅。

「オホーツク海に一番近い駅」としても知られる北浜駅には、オホーツク海を見渡せる小さな展望台があるのだ。そこから流氷が見られるかもしれない。

早速、駅の脇にある木製の展望台に登ってみるが、

海が
見当たらない。

分厚い流氷が海を覆った上に雪が降ったため、見渡す限り真っ白で、どこから海なのか。

しかも急に降り出した雪で空まで白く、海と陸どころか、空と陸の区別さえもつかない。 

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念のため記念撮影をしてみるが、何を撮ってるんだかわからない。

ただただ真っ白な世界だけが広がる中、思い切って海岸まで降りてみることにした。 

踏切を渡って浜辺へ向かう。
should be sea2.jpg
本来ならここから見えるはずの海が見当たらない。

海岸に降りてみると、目の前に広がっているのは海ではなく、氷と雪の世界だった。流氷がびっしりと海岸に密着し、見渡す限り白い景色が続いていた。 

黒い砂が見えているところは確実に陸なのだが、それ以降は何が何だかわからない。(急に流氷が崩れることがあるので、絶対流氷には乗らないでください!)

後で調べて見たところ、このように分厚い氷が浜と密着して、氷が陸の延長のようになっている状態のことを「氷野」と呼ぶそうだ。

北浜で見た流氷はその名の通り、まさに氷の大平原そのものだった。

氷の世界がただただ広がっているが
本来なら全部海である。

氷野を見つめていると、氷河時代ってこんなんだったのかな、大陸ってつながってたんだなと、都会では考えたこともないような思いが掻き立てられた。 

こんな非日常を体験できて、網走まで足を伸ばした甲斐があった。 

この日の流氷情報。密度の高い海氷が接岸していて、北海道からサハリンまで歩いていけそうな勢いだ。(海氷情報センターから引用)

それにしても、流氷の多様な姿とその動きの速さには驚いた。

短い間でこんなにも変化する流氷を見れて、もう一生分の流氷運を使い切ってしまったような気がする。 

いや、やっぱりまた流氷を見たいから、全部使い切ってないといいな。

帰りの十勝平野の風景も幻想的だった。

流氷、最高

なかなか見ることのできないと言われていた流氷だが、一度目にすると魅了されてしまう、そんな中毒性があった。

ドイツに戻り、ラトビア人の友人に流氷の話をすると「バルト海でも流氷見れるよ!」と言っていた。そうか、ヨーロッパにも流氷の見れる場所があるんだ。またまた流氷欲が掻き立てられた。

流氷ハイを求めて、また冬に寒いところに行きたくなりそうだ。

紋別で流氷の次に最高だったカニの爪。
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