やりたいことの説明
「モバイルオーダーってなんなの?」という方のために、デモンストレーションからはじめよう。
ちょうど、同席してくれた編集部の古賀さんが「あんまりやったことない」とのことなので体験してもらった。
「モバイルオーダー」は、マックの公式アプリから注文ができる仕組みだ。アプリから「受け取る店舗」や「注文するメニュー」を選ぶと、指定した店舗でビッグマックやらポテトやらを用意してくれる。
で、注文したものはカウンターで受け取れたり、駐車場で受け取れたりするのだけど、その中に「テーブルまでスタッフがお届け」というのがある。
テーブルに書いてある番号を入力すると、自分の席までクルーの方が運んできてくれるのだ。
そんなの面倒くさがらずにカウンターまで行きなさいよ、という声もあるだろうけど、「荷物を置いて席を離れたくない」「小さい子どもを連れてカウンターに並ぶのは大変」みたいなときに便利だったりするんですよね。
さて、このモバイルオーダー、最初の「受け取る店舗」を選ぶとき、特に場所の制限がない。日本全国どの店舗も指定できてしまう。
ということは……遠くの店舗にいる人に向けて、バーガーやポテトを注文することもできるんじゃないだろうか。
そこで、全国に散らばるデイリーポータルZライターの力を借りた。大阪在住のスズキナオさんと、長崎在住の山本千尋さんだ。
全員が同じ日の同じ時間に、それぞれの地域のマクドナルドにスタンバイ。モバイルオーダーで相手の地域の店を指定し、注文する。
距離を飛び越えた「あちらのお客様です」をやってみよう。
1回目:井上(神奈川)→ナオ(大阪)
というわけで、ナオさんと山本さんには13時にマクドナルドに来てもらった。
井上 今日はよろしくお願いします!佐世保も大阪も晴れてますね~。
山本 めちゃくちゃ良い天気です。お客さんもそこそこ多くて、子どもがずっとじゃんけんポイポイで盛り上がってます。
ナオ 大阪もいい天気ですー。後ろからは賑やかな話し声「私コーヒー苦手やねん!おなかゆるなんねん!」とのこと。
井上 こちらは雨が降ったり晴れたりで変な天気です。店内は大人の1人客が多くて静かな感じですね。
遠く離れたマクドナルドの様子を聞くだけで、なんだか楽しい。今この瞬間に遠くで空が晴れているのが嬉しいな。
ではさっそく始めよう。最初はテストもかねて、井上(神奈川)からナオさん(大阪)に送ってみる。
井上 なにかご希望はありますか?
ナオ どうしよう。いやもう、ここはお任せでお願いします!
井上 お腹は空いてる感じですか?
ナオ 本当に自業自得とはこのことなんですが、少し二日酔い気味ではあります(笑)。でもいまマクドナルドにいたら食欲でてきました!なんでもこいです。炭酸飲みたいかもです。
井上 なるほどなるほど。では少々お待ちください……。
山本 すごい、マクドナルドヒアリング……!
うーん、何にしようかな……と、考えているそばで、長崎と大阪で会話が続く。
ナオ 今からどんな食べものが運ばれてくるかわからないなんて、海外とかでないとできなそうな体験。ドキドキです。
山本 未知の体験ですね。
ナオ はい!まさかこんな気持ちが近所で味わえるなんて。
山本 少々お待ちくださいね、の裏に小さなドラマが見える!
酔いを覚ますために突然ハッピーセットを送りつけて驚かせるという選択肢もあるけど、やっぱり最初なので無難にいこうかな……ということで決めました。
井上 注文しました!
山本 おお!
ナオ おお。いま下のフロアで作られてるわけですもんね。不思議。私なんか今、なにもしてないですからね。
井上 ははは。
ナオ ただ座ってるだけの人。
山本 同じくです。でもわくわくしてる。
井上 だまってても運ばれてきちゃう。王様だ。
ナオ はは。王様ですね。
山本 優雅な時間ですね。
ナオ こんな気持ちなのかー。
そんな王様気分を味わっていると、突然ナオさんから「やばし!」というメッセージが……!
ナオ 「201番のお客様―!」と。
山本 おっ。
井上 おお。
古賀 おおっ!
ナオ きましたよ!
ナオ ポテトと……てりやきバーガーと……スプライトだ!
井上 やった!!!
山本 やったーーっ!!
古賀 すげー。
神奈川から大阪にスプライトが届いた!
仕組み上「可能だろう」とは思っていたけど、実際に届くと達成感がすごい。別にスプライトが空を飛んだわけでもないのに……!
ナオ 嬉しいです! まさになオーダー。
山本 染みる味!
井上 よかった!
古賀 こんな嬉しいスプライトない。
ナオ 甘露なり。
山本 二日酔いにはうれしい。
ナオ ポテトうま! いつもよりうまい気がする。
山本 最高ですね。ニヤニヤしてしまう。
ナオ 神奈川からはるばる。泣ける。
井上 嬉しいなぁ。
ナオ まさに、てりやきバーガー食べたいな!と思っていたところでした。いや、なんでも嬉しかったんですが。特に!
山本 思いやりも感じますね!
ナオ はい!
こちらで頼んだものが、あちらに届く。ものすごく単純に考えれば、やってることはデリバリーだ。「頼んでもない出前を勝手に注文される」のと紙一重と言ったっていい。
でも、遠くの空の下で待つ人を想像してメニューを考えること、それが実際に届くこと、そして届いたのが伝わることが、最高にドキドキして嬉しい。なんだこれ、すごいぞ。