岡山への道
ミックスジュースが好きだ。大阪に行った際には必ず飲むようにしている。りんごジュースではないのだ。ピーチジュースではないのだ。牛乳ではないのだ。全部入っているのだ。それがミックスジュースである。
この話をなにかのついでに編集部の安藤さんにしたのだ。
岡山でミックスジュースを作ることにした。岡山は果物王国とも言われ、瀬戸内型気候で温暖。晴れの国と言われるほど日照時間が長い。年間降水量1mm未満の日数は全国1位(1981-2010年の平均値)。美味しい果物が育つ素晴らしい環境なのだ。
新宿駅から岡山駅を目指す、青春18きっぷで。新幹線で行けば約3時間半でついてしまう。ただし、青春18きっぷでは13時間ほどかかる。乗り換えも多い。日本は小さいと思っていたけれど、全然大きい。岡山に着いたら夜で、私は浜に打ち上げられた魚ほどグッタリしていた。
桃を手にいれる
まずは桃を手にいれる。岡山といえば「桃太郎」。岡山で作るミックスジュースから桃を外すことはできないのだ。そのためにまず岡山県総社市に行った。総社市には「鬼ノ城」があって、桃太郎っぽいかな、と思って選んだ。
岡山の桃と言えば「白桃」が有名なのだけれど、私が行った時期はちょうど「黄金桃」の季節だったので、旬のものを選んだ。黄金桃は長野県が有名だけれど、岡山の黄金桃は滑らからしい。いいじゃない。
物産館で驚いたのだけれど、桃に限らず果物すべてが安かった。この桃も4つで1000円だ。しかも、食べるとそれは1個250円の味ではない。めちゃくちゃ美味しかった。美味しすぎて驚いたのだ。甘いし、滑らかだし。育った場所でその桃を食べるというのもいい。
安いぞ、シャインマスカット
次はマスカットだ。マスカットを食べてみたかったのだ。岡山では瀬戸ジャイアンツが有名だけれど、今回は「シャインマスカット」をチョイスした。理由は安かったから。シャインマスカットって高いイメージだけれど、めちゃくちゃ安かったのだ。
シャインマスカットが650円。安い。めちゃくちゃ安い。一回食べてみたかったのだけれど、東京ではめちゃくちゃ高いから、食べる機会は訪れていなかった。それがですよ、岡山に来たら叶った。岡山は夢が叶う街なのかもしれない。
種はなく、皮ごと食べることができる。私は皮をむいて、種を出してという作業が好きではない。常にそのまま食べられればと思っていた。有名なのかもしれないけれど、私は食べたことのない高嶺の花だったので、知らなかった。そして、食べるともちろん美味しかった。
貴重だぞ、オーロラブラック
次もぶどうだ。岡山はぶどうの生産で有名なのだ。岡山でミックスジュースを作るので、やはりぶどうがメインとなる。真庭市の物産館を訪れた。そこで手にいれるは「オーロラブラック」。岡山で生まれたぶどうだ。
もっと安いのもあったけれど、大粒なのを選んだ。これでも十分安いんだけどね。甘みが強く、生産量もあまり多くない品種だ。そして、何より、皮をむかずに食べることができる。種もない。甘くて食べやすい。最高ではないか。
次世代の黒ぶどうらしい。高いからという理由で大きいぶどうを食べないでいたけれど、知らない間に次世代になっていた。食べてみると本当に美味しい。甘いし、酸味もベスト。岡山で果物を食べると驚いてばかりだ。人は美味しすぎると驚くのだと知った。
たまごかけごはん食べ放題
次は卵だ。ミックスジュースには卵なのだ。大阪で飲んだミックスジュースには卵が入っていた。果物の甘みを引き出し、滑らかなる味を生み出してくれる。卵が重要なのである。そこで岡山県の美咲町を訪れた。
美咲町は岸田吟香の出身地。彼は新聞記者であり、実業家であり、「たまごかけごはん」を最初に食べた日本人なのだ。美咲町には西日本最大級の養鶏所があり、日本棚田百選にも選ばれた棚田もあり、岸田吟香の出身地なので、たまごかけごはんを推している。
「食堂かめっち。」でたまごかけごはんが食べ放題なのだ。美咲町の卵を満足行くまで食べることができる。食べて決めようではないか。この町の卵が私のミックスジュースに入れるべき卵なのか。
美味しかった。本当に美味しかった。しかも、調味料も醤油だけではなく、ネギ、しそ、海苔とあり、味を変えることもできる。この卵が美味しい証拠として、私は3回もお代わりをして、計4杯のたまごかけごはんを食べた。最高だ。
牛乳をゲットせよ!
最後は牛乳だ。岡山は「ジャージー牛飼養頭数」が日本2位と盛んなのだ。中でも蒜山(ひるぜん)が有名。ここで育てられるジャージー牛製品は全国で売られている。つまり、美味しい牛乳が手に入るのだ。
ジャージー牛、茶色い。緑、美しい。ソフトクリーム、美味しいと最高である。このソフトクリームで使われている牛乳を買った。濃いのだ。濃い味こそ正義で生きているので、完璧な牛乳と言える。私のミックスジュースに最高に合うだろう。
ミックスジュースを作る
これで全てが揃った。黄金桃、シャインマスカット、オーロラブラック、美咲の卵、蒜山の牛乳と岡山だらけのラインナップだ。間違いなく最高のミックスジュースができるだろう。蒜山で作って行こうと思う。
充電式のミキサーを買ったので、これに揃えたものを切って入れていく。ワクワクだ。どんな味になるのだろう。生まれて初めて自分でミックスジュースを作るのだ。しかも、食材は最高。もう味は約束されているのではないだろうか。
贅沢なミックスジュースだ。もしこれらの食材を東京で揃えたらすごい値段になるだろう。青春18きっぷで岡山まで来た甲斐があった。ミキサーの蓋をあけた段階で美味しいと確信した。飲む前に「美味しい!」と言ったほどだ。
色はもっと美しくなるかと思ったけれど、そうでもなかった。ただ味は最高だ。私の表現力の問題で、え? と思うかもしれないけれど、高い、とても高いケーキの味がするのだ。店名がフランス語のケーキ屋のケーキ。つまり、それは美味しいということ。高いケーキが口の中に広がるのだ。美味しすぎて驚いた。
旅はミックスジュースに限る
生産地を見て、ものを買って、ミックスジュースを作る。最高の行為なのではないだろうか。この環境で育ったのか、と知って食べるものはさらに美味しく感じるし、さらに安いのだ。はまりそうだ。ミキサーを持って今後も旅に出ようと思う。できれば次は鈍行ではない移動方法で。本当に美味しかった。