最後はご存知「小学五年生」(小学館)だ。昭和39年2月発行だから、先の2冊より少々時代が下る。下るのに、何と今度は「100年後の世界」と来た!
昭和39年、つまり1964年の100年後だから2064年!これは現代に生きる私たちにも想像のつかないような、53年後の世界である。さあそれはいったいどんな世界?!
いきなりの冒険小説であった。ナメクジを塩で退治しようとしてタイムスリップし、100年後の世界に来てしまった正夫。しかしなぜか未来でも、宇宙から飛来した巨大ナメクジに人類が苦しめられている!そんなとき、正夫は持っていた「塩」を投げつけ、人類は救われる…あらすじを書いてみたが、これはいったいどんな話か。
それでもところどころにミニコラムが挟まれ、各界の識者による「ワンポイント未来図」が語られるわけである。
小説を読み終えると、やっと未来パノラマ図が現れた。でもこれ「ぼくらが考えた」未来図、と書いてあるじゃないか。
できれば識者による予測の集合体が見たかったが、欄外の説明を読んでうっかり満足してしまったので、仕方がない。
この「小学五年生」は娯楽色が強かったが、それはそれで実におおらかな未来像を見たという気がする。「おおらかな未来像」?そういえば最近そういう想像、してないかもな。
とりあえず3冊の未来図を紹介してみた。どれにも共通するのは、悲惨な戦争を経たのちにやってくる未来は確実に輝いている、という信念だ。予測という以上に、そこには今よりもっと世の中をよくしようという意志が織り込まれていたに違いない。
ただその反動で「便利・合理的」を目指すあまり、技術方面に重点が置かれて、人としての豊かさというものにはあまり触れられていないのは、仕方のないことだろう。というか少年誌だし当たり前ですわね。
まあ、本文ではいろいろと茶化したりしたけど、昔ワクワクしながらパノラマを目で追った感覚が甦って楽しかった。未来とは楽しくありたいものだ。