ふくやの「味の明太粉」
明太子といえばその考案が福岡の「ふくや」の創業者によるもの、というのは有名な話だ。
デイリーポータルZにも、かつてライターの玉置標本さんがふくやの社長さんに明太子の歴史や現在についてインタビューした情報量パンパンの記事がある。
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このすばらしい記事をご覧のあなたに思い出していただければ、それでもう本記事は役割を達したともいえる
ふくやが伝統を守りながら攻めた商品を開発していることも記事にはあり、チューブ状になった明太子の存在には驚かされた。
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その後もいろいろと工夫を重ねてこられたのだろう、2020年になって新たに打ち出されたのがこの「味の明太粉」、ということらしい。
噂に聞き、ずっと気になっていたがやっと入手した。
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明太子をなんとかせんとする気持ち、専門店としてその道をきりひらいていく力強さには感じ入るばかりだ。
舐めると、うまい
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七味唐辛子のような見た目だが、舐めると、なるほどこれは……明太子のうまみだ……。
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かけると明太子風味になるというこの調味料、構成としては明太子を漬けこむ際の調味液を粉化し、さらにうまみをよりブーストするためにガーリック等々を配合してあるという。
つまり、明太子自体が入っているわけではない……はずなのだけど、ちゃんと感じるのだ。明太子自身の存在を。
原材料の「辛子明太子漬込液」がそのあたりの鍵か。
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いつだったか、テレビでごはんのおともランキングなんてテーマの番組をやっているのを横目で見たことがある。明太子、1位だった。
明太子というのは、イメージとしてはやはり「博多のお土産」という印象が強固だろう。
だからそれが1位だというのはすごいことだと思うのだ。
他のエントリー選手は納豆に、梅干しに、漬物各種に、それにキムチなんかもあった気がする。超強豪だ。その上に立ってしまう力が明太子にはある。
そのシーズニングが手中にあるというのはかなりやばい。
いわゆる「うまいにきまってる」
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もういちどゆっくり舐めてみる。
辛いけど、辛すぎないし、ちょっと甘い。粉だけど食べ物みたいだ。
公式サイトではフライドポテトやポップコーンはもちろん、お肉や麺類にもぴったりだとあり、これなら確かにその通りだろう。
いわゆる「うまいにきまってる」だ。
当たり前なうまさはスルーして、もうちょっと気の強い食べ方ができないだろうか。
パーティーメニューの味だけを抜く
友人宅で、バターロールをスライスして作ったラスクに明太子のディップを乗せたものを食べさせてもらったことがある。
明太フランスの、バターロール版だ。これがすごくおいしかった。バターロールだからパン自体が甘いんだけど、それが妙に合った。
バターロールをわざわざラスクにして、明太子をディップにするのはパーティーでもないとやらない手間だよな、こんなおいしいもの食べさえてもらってありがたいものだなあなどと思っていたが、この粉があったら近い体験ができるんじゃないか。
つまりこういうことだ。
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ふわっふわのバターロールの中に、じょりっと明太子の味がまざる。笑った。
ここには楽しい雰囲気もなく、正しい食感もない。しかし味だけは、ある。しかも1秒でできた。
パーティーのあか抜けたあの料理の、ただ味だけが完璧に同じだ。
疑似のなかに真実がきらめいた。これは美味しくて、しかもすごく興味深い調味料だ。
サラダチキンは何にでもなれる
私はサラダチキンのことを常々疑っている。
美味しい食べ物だ。けれど売られ方というか食べられ方というか、立ち位置がちょっと普通でないように思う。
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真空パックでコンビニに陳列され、場合によってはサプリメント感覚で食べられる。
特にプレーン味は、しっかりした鶏や塩のうまみがありながらもプレーンと言われるだけに味に余白みたいなものを感じる。
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その余白力みたいなものが、何にでもなれるように思わせる。
サラダチキンでありながら、明太子にもなれてしまうのではないか。
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私いま、漬けている……?
食べてみた。食感は鶏のやわらかいいつもの繊維、そこへ明太子がどーんと主張する。
鶏の味もするけど、明太子の味とばちばちに喧嘩をするでもなく一体で、思った以上に味として受け入れている。
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サラダチキンにはハーブ味があるのをよく見かける。
フレーバー展開的に明太子味が出た状況がこれなのかもしれない。
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気づけば、断面の部分に勝手に手が追い粉をかけていた。
食べながらはっとする。私、いま、漬けている……??
自然と体がスケトウダラの卵巣を漬けるかのようにサラダチキンを漬けているじゃないか。
明太子風味の調味料があると、人は素材を漬けはじめる。体がつい、明太子に向かっていってしまう。
それほどの力があるのだ明太子には。