ちょっと聞いてよ 2022年6月17日

オムライス専門店「ポムの樹」のウェルカムドリンクはみそ汁

「ポムの樹」という名前のレストラン、よく見かけるなとは思いつつなかなか行く機会がないままでいた。

どうも関連チェーンを含めると店舗は全国33の都道府県に展開されているらしい。見かけるわけだ。一大チェーンである。

先日、昼ご飯を食べる先を探していてちょうどいいタイミングで渋谷の店舗に行き当たりはじめて入ってみた。すると思わぬ様相でみそ汁が出てきたのだ。

さらにこちらのお店、オムライス専門店としてのオムライス力の強さもすごい。

東京生まれ、神奈川、埼玉育ち、東京在住。Web制作をしたり小さなバーで主に生ビールを出したりしていたが、流れ流れてデイリーポータルZの編集部員に。趣味はEDMとFX。(動画インタビュー)

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本当にタイトルのまんまのことでして

入ったのは日曜日の昼前、11時半の開店直後だったと思う。

渋谷のスペイン坂という繁華な場所にあっておそらく日頃は平日休日問わずに混みあうだろうお店も、時間的にまだ席に余裕があるようだった。

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あるなあるなとはずっと思っていた渋谷、スペイン坂のお店

はじめてのチェーン店は勝手がよくわからずそわそわするものだけど、店員さんにほがらかに席に案内してもらい、着席するとさっと水とウェットティッシがサーブされて、どうもおおむねファミレスみたいなお店らしい。

なるほどなるほどと、タッチパネル形式のメニューからオーダーを通すと店員さんがまたすぐにやってきた。

えっ、もうできた??? 牛丼以上にはやい。

いやしかし、トレイに乗せているのは、高速道路のパーキングエリアで無料のお茶を飲むときに出てくる、ちょっと小さい紙コップだった。

「サービスのおみそ汁です。どうぞ、大変お熱いのでお気をつけください」

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おみそ汁……?

紙コップには「サービス品」とプリントされていて、本当だ、おみそ汁だ。あっつあつの、おみそ汁だ。

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ばっちり熱いのも「サービス」という感じがする!

小学生の娘と一緒だったのだけど、子どもにも出してもらえた。中をのぞくとどうも具はない。完全なおみそ汁、お味噌の汁だ。

疲れていたし、おなかも空いていたので喜んでフーフーし次第すぐに飲んだ。

食前酒のようにみそ汁を

突然のおみそ汁。「どうぞ」と出していただいたのでありがたく飲んだが、サービスとしてはよそではあまり聞き覚えがない。

みそ汁主義のチェーン店といえばそのトップランナーは松屋であることはまず間違いない(松屋はカレーライスでもなんでもみそ汁をつけてくるみそ汁有名店)。

ただ、その松屋ですらみそ汁は食事と同時提供だったはずだ。

ポムの樹は、ほとんど食前酒みたいに出してくる。

しかもこのポムの樹、オムライスの専門店だ。

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オムライスが売り

ど洋食にみそ汁というのがまた意外ではないか。

街の洋食屋のスープがみそ汁なのはよくあることかもしれない。でもタッチパネルでオーダーを運用するような近代的なチェーン店かつ、オムライスというポップな料理を主軸に据えたお店でみそ汁というところに、誤差レベルの意外性がある。

大きすぎないギャップがじわじわくる。

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思った以上のオムライス専門具合

オムライス専門店であること、それ自体にも、はじめて行ってみて大いなる見ごたえを感じた。

この店、ややオムライスに力を入れているレストランなのかな、くらいのイメージだったがまったく違うのだ。

バチバチにオムライスに本気の専門店、しかも、種類を増やす方の「専門」である。 

専門店というと、メニューを極端に少なくして1品に注力するパターンと、ある1種の料理をとことんまでバリエーション展開させる店があるだろう。ポムの樹は圧倒的後者なのだ。

とにかく、さまざまなるオムライスがある。

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いろんな料理をオムライスという土俵で、やる

この店には、カレーもハンバーグもスープもない。でも、カレーオムライスや、ハンバーグオムライス、スープオムライスなら、ある。

コロッケはないが、オムライスがついていてもいいなら出てくる。サラダにもオムライスがついてくる。

そういうことだ。

おわかりいただけただろうか。

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すべて、オムライスという概念の中にのみ存在が赦される

中華料理店に行くとよくメニューの多さに「こんだけの料理の材料どうやって管理してるんだろうねー!」なんて感嘆するものだが、それがオムライスという狭い範囲のみで行われている。

この日はとりあえず気持ちを落ち着け、定番としてよく出ているという、一番オムライスオムライスしたメニューをオーダーした。

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絵に描いたオムライスだ!

凝ったメニューの前提としてこういうど定番を期待をはずさず想像通りにふるまってくれるのも専門店の良さだ。

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中はもちろんチキンライス!

その専門性に分け入る 

後日あらためて、専門店だからこその走ってるタイプのオムライスも食べに行ってみた。 

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料理をオーダーすると、やはり熱々のみそ汁がやってきた

選んだのは「ネギ山とろろの和風スープオムライス」。 

オムライスと、まさかのとろろご飯の融合をはかったメニューだと思われる。

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きざみ海苔も、ねぎも、とろろも、だし汁もすべてがオムライスからは遠い

 「子どもが泣くぞ」という慣用句があるが、子どもの好きなオムライスと我々中高年にとってたまらないとろろご飯がくっついた。

もはや誰が泣いて誰が笑うか、それはあなた次第です的地平が、ここだ。

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何を食べているのか不明瞭だがうまい、そんなおもしろさ

食べてすぐは熱いお出汁のとろろご飯の印象なのだけど、租借するうちにプリンかというくらいやわらかくぷるぷるした卵とバターライスが味わいを発揮して口内が洋に寄りやわやわになっていく。

オムライスという料理だけを真面目に100周したからこそ到達したメニューだろう。

みそ汁は食事メニューに1杯ついてくるそうです

前回はみそ汁を差し出された際、突然のことにむしろなんの疑問も感じず「ありがとうございます!」と言うばかりだったが、今度は2回目。冷静な心もちで、お店もちょうど空いた時間帯であり、店員さんに聞いてみることにした。

それによると、みそ汁は食事を注文したお客さんに1杯ついてくるそうだ(この店にはオムライスの他に食事のメニューとしてドリアがギリギリあり、みそ汁はドリアにもつく)。

店員さんは長くお店に勤めているが、入店した際にはすでにみそ汁サービスはあり、自分が入る以前から提供されていたはずと教えてくれた。脈々と続く名物サービスらしい。

食事の前にみそ汁をふるまう。普通のやさしいサービスだ。

でも、はじめて来た者にとってはほんの、ほんの少しだけ珍しい、そういうで店ならではの独特の文化みたいなものって興奮するなあと思ったのでした。

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専門性が異常に高いのでメニューによってはサイズまで選べる

 

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