特集 2026年7月8日

明治にできた日本最古の有料トンネル(今は無料)が静岡市にある

これが!

静岡市の山のほう、宇津ノ谷峠というところにあるトンネルは、日本初の有料トンネルなのだとか。

何も知らずに迷い込んだんですが、まるでタイムスリップしたみたいでした。

行く先々で「うちの会社にはいないタイプだよね」と言われるが、本人はそんなこともないと思っている。愛知県出身。むかない安藤。(動画インタビュー)

前の記事:駅ができるはずだった場所にロータリーだけがある

> 個人サイト むかない安藤 Twitter >ライターwiki

静岡市が広すぎる

静岡市は広い。

その広さ何平方キロメートル!なんて言われても僕みたいな地理にうとい人間にはよくわからないのだけれど、海から山の果ての方までずっと静岡市なのだと聞くとそれはたしかにすごいなと思う。

そんな広大な静岡市の、今日は山の方に行ってみようと思い立ち、愛車の原付にまたがって走りまわっていたところ、こんな看板を見つけた。

IMG_1932.jpg
明治トンネル?
IMG_1936.jpg
そういえば町並みが映画村みたいだ。

急に太秦映画村みたいな場所に来てしまった。さっきまで海が見えていたのに急に時代までも超えくるなんて。これもまた静岡市の広さのなせる業なのだろうか。

原付をとめて町を歩いてみると、あたりまえだが住んでいる人たちはとくに映画の関係者ではなさそうだった。

IMG_1941.jpg
みなさん普通に生活していました。

ここは静岡市と藤枝市の市境に位置する宇津ノ谷(うつのや)と呼ばれる旧東海道の宿場町で、江戸時代には参勤交代の行列が行き来する交通の要所だったのだとか。その名残が今でもこの周辺に映画村みたいな空気を漂わせている。

タイムスリップしたみたいな集落を抜ける一本道を、登山電車のスイッチバックばりにUターンを繰り返しながら登っていくと、それはあった。

IMG_1945.jpg
Uターンを繰り返しながらずいぶんと高いところまで登っていきます。
IMG_1959.jpg
こ、これは…
IMG_1960.jpg
トンネルだ!

トンネルである。壁がレンガで作られており、風格がとにかくすごい。明らかに現代に作られたものではないだろうこれ。

これが看板に書かれていた「明治トンネル」なのだろうか。一直線なので出口の光も見えるのだけれど、水平線に揺れる船くらいの頼りなさだ。

手前に車止めが設置されているので歩行者専用なのだろう。とくにチケット売り場のようなものもないのでそのまま入っていいと判断して足を踏み入れた。いまのところあたりには僕しかいない。

IMG_1964.jpg
おじゃましま~す。
IMG_1965.jpg
明るい山道からトンネルに入ると目が慣れないのでこのくらいの暗さに感じます。
IMG_1968.jpg
ところどころにある電球は、かなり明るさを落としてあるので雰囲気抜群。

トンネルの中はひんやりとしていて暗いのだけれど、廃れていて怖い、みたいな感じはしなかった。それどころかしっかりと整備がされた暖色の空間がむしろ落ち着く。狭さや圧迫感を感じないのもありがたかった。

壁はレンガ造りだが、落ちてきそうなほどの劣化もないようだ。明治トンネルというからには明治時代に建てられたものなのだろうか。だとしたら驚異的な保存状態の良さである。

たまに首元に水がぴたりと落ちてきて飛びあがったりしながら自分の足音だけが聞こえる道をとぼとぼと進むと、ほどなくして出口の光が近づいてきた。

距離としては100メートルもないだろう(調べたら61メートルらしいです)。それなのに、明るさも湿度も温度も一歩一歩に変化があって、長い旅をしてきたみたいな気持ちになる。

IMG_1974.jpg
IMG_1975.jpg
トンネルを抜けたら明治だったらどうしよう。

出口付近、といっても、僕が入ってきた側が入口だったのか出口だったのかすらわからないのだけれど、とにかくトンネルを出たところに設置されていた案内図によると、やはりこれが明治トンネルのようだった。

IMG_1980.jpg
明治のトンネル
IMG_1977.jpg
トンネルとしてははじめての文化財登録なのだとか

明治のトンネルはその名のとおり、明治時代に掘られたトンネルで、当時は中で「く」の字に折れ曲がっていたらしい。それではきっと出口が見えないわけで、今よりずっと心細かったことだろう。

明治のトンネルは一度火災で焼失し、いまの形に修復されたのが明治36年。そのあと車が通行できるように別の場所に大正のトンネル、昭和のトンネル、平成のトンネルと順に作られていったのだとか。このあたりは山をいかにして越えるか、それが一番の課題だったのだ。

IMG_1982.jpg
とにかく山を越えたかったことがわかる。
IMG_1986.jpg
たしかにこの山を越えようと思うと一苦労だったに違いない。

明治のトンネルは日本初の有料トンネルとして利用されていたが、車社会に変わっていく過程で他のトンネルに文字通り道を譲ることになる。しかしそのおかげで保存状態が良いまま今でも保存されているのだろう。ちなみに日本初の有料トンネルだったというが、今は無料で誰でも通ることができます。

各時代に作られた他のトンネルについては、明治のトンネルの入口あたりに立体地図があるのでこれがとてもわかりやすかった。

IMG_1993.jpg
時代ごとにどこを掘り進めていったのかがわかる立体地図。宇津ノ谷集落がいかに山に囲まれているのかもよくわかる。
IMG_1995.jpg
すごいところに「静岡市」と書かれていて静岡市広すぎ問題を再確認しました。
いったん広告です

道の駅の良さ

ここからはおまけだが、明治のトンネルを出て映画のセットのような宇津ノ谷集落を抜けたところに道の駅があった。

この道の駅がまたよかった。

IMG_1891.jpg
良い佇まいの道の駅。店頭でおばちゃんが野菜を売っていたりするのもたまらない。

お店の中でおでんが食べられたりするのももちろん嬉しいのだけれど、店頭で野菜なんかを手売りしているおばちゃんが、わたし地元です!すぐそこに住んでます!というオーラを完全に放っていて最高に和む。

ちょうどお昼時だったので、「ぜんぶ手作りよ~」という和菓子とおにぎりを買わせてもらった。

IMG_1902.jpg
いいんですか?と心配にすらなる値付け。
IMG_1897.jpg
手作りのきんつば(薄皮のまんじゅうみたいな感じ)もおにぎりも、あれ、おれまだタイムスリップ先から帰ってきていなかったっけ?と疑いたくなるくらい懐かしい美味しさだった。
IMG_1898.jpg
おばちゃんが飛んでくるツバメを手で追い払っていたのもリアルな山の暮らしを垣間見た気がした。
いったん広告です

トンネルでタイムスリップ

僕は普段、静岡市の中でも海に近いところで生活をしているのだけれど、原付でちょっと走ると本気の山にぶち当たるのだ。昔の人たちもきっとこの山を見て、その向こう側にある世界に行きたいと考えたのだろう。

明治のトンネルはそんな時代にこの辺に住んでいた人たちのやりたかったことが伝わってくるようなトンネルでした。

編集部からのみどころを読む

編集部からのみどころ
スポットとしても面白いですし景色もいいし、旅情があっていい記事でした。「明るさも湿度も温度も一歩一歩に変化があって、長い旅をしてきたみたいな気持ちになる」の一文、いいですよね。想像を掻き立てられます。締めの一文も最高。(石川)

▽デイリーポータルZトップへ

記事が面白かったら、ぜひライターに感想をお送りください

デイリーポータルZ 感想・応援フォーム

katteyokatta_20250314.jpg

> デイリーポータルZのTwitterをフォローすると、あなたのタイムラインに「役には立たないけどなんかいい情報」が届きます!

→→→  ←←←

 

デイリーポータルZは、Amazonアソシエイト・プログラムに参加しています。

デイリーポータルZを

 

バックナンバー

バックナンバー

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ