ピクニックではまわし飲み
多くの人がマテ茶用のマイカップとマイストローを持っているアルゼンチンの皆さん。
でも、みんなでピクニックに行くときは、カップとストローを1セットだけ持っていき、みんなでまわし飲みをするのだそうだ。
みんな自分のストローは持ってるけど、親睦を深めるときは同じストローで。確かなことは分からないけど、これもまた、この地域ならではの感覚なのかもしれない。
単に荷物を少なくしたいだけかもしれないけど。
在宅勤務がはじまった。
何でだろうか。在宅勤務って、コーヒーとか飲む量すごく増えませんか?ずっと何かを飲んでいる。
そんな我が家の飲み物のラインナップ、今まではコーヒー・カフェオレ・紅茶・ココア・麦茶だったのだが、最近そこに「マテ茶」が加わった。
そのマテ茶、飲み方がちょっと変わっていたのでご紹介します。
我が家では、去年の2月から妻が世界一周旅行に行っていた。その妻が、今年の3月末に帰ってきた。
当時妻は南米にいた。旅はもう少し続く予定だったのだが、ここ最近の情勢により、急きょ帰国することになった。
そんな突然の帰国だったので、お土産めいたものは買う暇がなかった。
そんな妻がただ1つ持ち帰ってきた海外のもの。それが、マテ茶の茶葉。アルゼンチンで買って、その後も持ち歩いて飲んでいたのだそうだ。
ある日、「マテ茶を飲んでみるか?」と聞かれたのでお願いしたところ、このセットが現れた。
ん??
てっきりコップに入ったお茶が2杯出てくると思っていたら、登場したのは金属のストローと木のカップ。実はこれ、現地の人たちがマテ茶を飲むときの道具で、妻はこれらもアルゼンチンで買っていた。
まずこの金属製のストロー。
そしてカップ。木でできていて、壺のような形をしている。
妻が買ってきたものは木製だったが、現地ではひょうたんの下半分で作られたカップもたくさん売っていたとのこと。
このカップに茶葉を入れて、ぬるめのお湯を注ぐ(お湯が熱いとストローの飲み口も熱くなってしまうので)。
茶葉の量については、「現地の人はカップの4分の3ぐらい入れるけど、初心者はスプーン3杯ぐらいがおすすめ」とアドバイスを受けた。
あまりに本場と茶葉の量が違うので、それでちゃんと味わえるのか心配だったが、いったん素直に従う。
お湯を注いだら完成だ。
ここにストローを直接さして飲む。ストローが茶こしの役割も担うのだ。
妻が旅先で見た範囲の話ではあるが、現地ではみんなこの茶葉・カップ・金属ストローの3点セットを持っていて、茶葉とお湯を注ぎたしながら1日中お茶を楽しむのだそうだ。
マテ茶という存在は知っていたが、その飲み方も、楽しみ方も、初めて聞く話ばかり。はっきりと異国を感じさせてくれて楽しい。説明を聞きながらの「へぇ~」が止まらなかった。
さて、こうして茶葉から入れたマテ茶。どんな味なのだろうか。
口に入れてしばらくは無味のお湯。でもそれを飲みこんだあたりから急に草っぽい苦味がやってくる。
日本には「喉もと過ぎれば熱さを忘れる」ということわざがあるが、南米のマテ茶の場合は、喉もとを過ぎてから忘れてたかのように苦さがきた。
これは、美味しさが分かるまでかなり修行がいりそうな味だ。
そして、「初心者は茶葉スプーン3杯がおすすめ」というアドバイスに従っておいて良かった。現地流にカップの4分の3も茶葉を入れてたら、いろいろ我慢できなかったかもしれない。
しかし妻は、この苦いマテ茶にどはまりしている。
わざわざ現地でこの茶器のセットを買い、その後の旅でも飲み続け、帰国してからも毎日、1日中飲んでいる。しかも僕が飲んだものよりもっと濃い味で。
いったいどういうきっかけで飲むようになり、どんな美味しさを感じているのだろうか。
妻がマテ茶のこの飲み方を知ったのは、アルゼンチンとチリの南部にまたがるパタゴニア地方で、トレッキングツアーに参加したときのこと。
目的地に着くと、そこでは多くの人がこの茶器でマテ茶を飲んでいた。登山をする人が言う「山頂で飲むコーヒーが美味しい」のようなものだと思う。
その姿にかっこよさを感じ、茶葉とカップとストローを買って飲みはじめた。
当然最初は苦かったのだが、飲み続けたのには理由があった。
妻:お金をかけない旅をしていたから、ご飯はホステルで自炊することが多かったんだけど、アルゼンチンで節約した食事ってなるとどうしてもパスタとステーキばっかりになっちゃってたんだよね。でも、野菜も取らなきゃなぁっていう気持ちはあって。だからその代わりとして、マテ茶をずっと飲んでたの。
なるほど、「野菜生活」の感覚だ。
僕もコンビニで食事を買ったりして、もうちょっと野菜もとった方がいいかなという気持ちになると、飲み物に野菜生活をプラスしてよしよしと思うことがよくある。
旅行中の妻にとって、マテ茶はそういう役割のものでもあったのだ。
実際マテ茶は、「飲むサラダ」とも呼ばれているそうだ。
そうして日々マテ茶を飲んでいるうちに、だんだん苦さにも慣れ、むしろその苦味をおいしく感じるようになっていったとのこと。
自分のことで考えてみると、コーヒーやビールは最初苦くてまずいと思っていたが、いつの間にかその苦さも含めて美味しいと思うようになっていた。ビールについては今では世界で一番おいしい飲み物だとさえ思っている。そういう感じなのかもしれない。
やはりマテ茶は、おいしく感じるまで修行が必要なお茶だった。
多くの人がマテ茶用のマイカップとマイストローを持っているアルゼンチンの皆さん。
でも、みんなでピクニックに行くときは、カップとストローを1セットだけ持っていき、みんなでまわし飲みをするのだそうだ。
みんな自分のストローは持ってるけど、親睦を深めるときは同じストローで。確かなことは分からないけど、これもまた、この地域ならではの感覚なのかもしれない。
単に荷物を少なくしたいだけかもしれないけど。
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