特集 2023年11月21日

マスクケースコレクション

マスクケースという民具。

少し前、新型コロナウィルスの警戒体制がマックスだったころ、ウィルスの侵入を水際でくいとめるマスクは外出時の必需品だった。そうなると飲食店などでマスクをいったん外した時にこれをどこに置いたらいいんじゃ、じか置きは嫌なんじゃ、といったゆゆしき問題が生じ、軽快かつ衛生的にマスクを収納できるマスクケースが活躍した。

新型コロナが産んだ民芸としてオリジナルのマスクを集めていた私は、このマスクケースもコロナの記憶を残していくものに違いないと集めていた。

集めていたのだから見てみよう。今ではオリジナルマスク以上に見かけなくなったマスクケース達を。

1975年神奈川県生まれ。毒ライター。
普段は会社勤めをして生計をたてている。 有毒生物や街歩きが好き。つまり商店街とかが有毒生物で埋め尽くされれば一番ユートピア度が高いのではないだろうか。
最近バレンチノ収集を始めました。(動画インタビュー)

前の記事:開催!オホーツク「痛いカニサミット」

> 個人サイト バレンチノ・エスノグラフィー

あの喫茶店

数ある喫茶チェーンの中で唯一無二の存在感をほこるサラリーマンのオアシス、銀座ルノアールでマスクケースが配られていた。

何回か行ってその度にゲットしたのだがデザインが少し違っている。

2つ折の紙製で、開いてその間にマスクを挟んで使うのだが、開くところにグレーのラインが入っているのと入っていないのがある。ラインがあると開く側が直感的にわかりやすい。短い間にバージョンアップしたのだろうか。さすがのホスピタリティである。 

「Mask case」の書体も太く見やすくなっていますな。

チャイニーズ・レストラント

麹町の高級中華「登竜」のマスクケースは紙製だというのに上質感にあふれていた。

チャイニーズ・レストラント。

普段レストランと言っているが英字表記「Restaurant」を見るとレストラントと言う人は私だけではないだろう。トは抑えめにさりげなく言うとかっこいいらしいい(なにが)

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組織が顕在化

コロナとの戦いは集団戦である。お店単体を超えた絆が、マスクを利用しながら楽しむニューノーマルな外食をケースでアシストする。エンドユーザーである我々にはふだん馴染みのない組織名が明るみに出てくるのも興味深い。

東京都飲食業生活衛生同業組合
東京都喫茶飲食生活衛生同業組合
とても教育指導的。でもそういう時だったのだ。
全国麺類生活衛生同業組合連合会。どこでブレスを入れたらいいかわからない。

ご当地マスクケースもあつい

 新型コロナでいろいろ新しいスタイルを模索することとなった観光業もご当地のPRにつながるマスクケースを繰り出している。

情報量ゆたかな埼玉県越生町

ハイキングの町として知られ、風光明媚な自然散策が楽しめる越生町に散策に行ったら散策の魅力がふんだんに盛り込まれているマスクケースがあった。

梅林にツツジ、そして抗菌。
裏面にも観光情報が。太田道灌ゆかりのまちだったのか。

鮭の聖地

サケなどの取材でがんがん訪れている北海道標津町、地元の飲食店にはもはや自宅近所の居酒屋とかより多く行ってる気がしなくもないがそのひとつ、「ファミリーレストランいし橋」でご当地マスケ(マスクケース)をゲットした。

文化庁主催の日本遺産に認定された地域の歴史文化のストーリー『「鮭の聖地」の物語~根室海峡一万年の道程~』 サイトへアクセスできる。これを見ているみなさんはこちらからどうぞ

躍動するサケをデザインしたのは最近の標津取材でお世話になっている野付半島のカフェ・ギャラリー「ポンノウシテラス」のオーナー、和田徳子さんである。
精細に描き込まれた模様はよく見ると、北方古代文化から近代の内陸交通の発展〜現代にいたるまで、当地の1万年におよぶ営みをサケが遡上しながら語る壮大な絵物語となっていて、見つめているとなんだか泣けてしまう。すごい。

原画を見せてもらった。下から上へ、サケ達が標津の1万年の時の流れを溯上していく。

マスクとコーデ

西表島から水牛で渡る南国由布島ではマスクと共にマスクケースも売られていた。マスクとケースをコーディネートするというおしゃれ上級者のふるまいが可能になるのだ。

うんちまみれだけど。
ボタン付きでかなりしっかりした仕様なのもおかしい。
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練馬でだいこん丸ゲット

観光地だけでなく、私が暮らす東京都練馬区でもご当地マスクケースが配布されていた。

体幹が強そうな練馬消防署のマスコット「だいこん丸」。モチーフは練馬だいこん。

2020年9月の夜、練馬消防署の入り口のガラスに「クイズに答えてマスクケースをGET!」とうたうポスターが貼られているのを見つけた。

写り込みで見にくくてすいませんが。

練馬消防署のマスクケース、めちゃめちゃほしい。しかも簡単な、というかもう答えがそこに書いてあるクイズに答えればいいやつだ。しかし時刻は20時、「クイズの答えを受付に伝えてね」とあるがこの時間では厳しいかとショーケースに飾られたトランペットを見つめる少年のように立ちすくんでいたら、ドアの向こうを通りかかった夜勤の消防士さんと目が合った。

ドアを開けた彼に「マスクケースですかね?」と聞かれ、勢いよく「はい!」と答えると少し照れくさそうに「えっと、では、一応ですね、クイズの答えを...」と回答を促した。

やっぱり「答えここに書いてあるしな...」と思っているのかなと思いつつも答えると「はい、正解ですね......」とケースをくれた。

お仕事中、自明クイズをやっていただきありがとうございました。
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医療キャラといえばやはりこの人 

以前の記事で宝塚の手塚治虫記念館で手に入れたブラックジャックのサージカルマスクを紹介したが、同じくマスクケースも売っていた。

かっこいい。これはマスク以外でも使いたくなるやつですな。

オフィシャルでなくともそこに確かなキャラの存在を感じるものがある。

やはり出ていた鬼滅系。

手作り感がたまらない布製

マスクほどではないが、マスクケースも道の駅やコミュニティカフェで地元のアーティストが作ったいい感じのマスクケースが売られていた。

ペコちゃん、かわいい。犬がおるな。

これを見てペコちゃんと連動した舌を持つ犬の存在をはじめて知った。名前はなんだろう、ペコ犬とかだったりして、と調べてみたらなんと「ドッグ」、そんなに外してないどころかもっとプリミティブだった。 学びがある、買ってよかった。

マスクをはさんでポチッとボタンを止める仕組み。裏地もかわいい。
埼玉で見つけた布ケース。表地と裏地の組み合わせのセンスがすばらしい。
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ケースなのかホルダーなのか

これ自体は何と呼ばれているのか。もちろん大半は「マスクケース」だが市場に多く出てくるといろいろ多様性も出てきていた。

これはケース、多数派ですね。
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先ほど紹介した標津のは「ホルダー」

ケース・ホルダーはわかる。ここからスケールが大きくなる。

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INN(宿)

宿と来たか。こうなると「一時的なマスクの保管にご使用ください」というコピーにもほのかな詩情がにじんでくる。この紙はマスクがしばし身を休め、また主人の口を覆うのか、一緒に廃棄されるのか、次の運命を受け入れるためのかりそめの場なのだ。

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シェルター!

なんか一気にサバイバル感が立ち上がってきたがよく考えれば納得でしかない。私たちはなぜマスクをするのか、生きるためではなかったか。

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「マスクケースです。」紳士。

使い方説明があつい

特に紙製マスクケースでは、「これが何なのか、何に使うのか、どう使うのか」といった説明が手厚い。

やはり衛生面の注意書きが懇切丁寧。
図版も丁寧。

今でこそシンプルな構造の紙マスクケースなんて直感で使えるだろう、説明が過剰じゃないかと思ってしまうが、マスクケースに馴染みがない時にこんな二つ折りの紙を渡されても何が何やらという感じだったかもしれない。衛生面での不安も懸念されただろう。この丁寧さを振り返るとまさにあの時、新しい道具が世に出て我々の新しい生活の一部になろうとしていたんだと実感できるのだ。

3ステップで紹介。

 丁寧はエスカレートする。4段階にわたって使い方を教え込むものもあった。

「ケースをマスクにあてつかむように外す」「マスクを折りたたむように挟んで保管する」自分のフォームがしっかり固まりそうなコーチング。

ここまでするのはさすがにやりすぎじゃないのかと思いきや、私が集めた中で一番用いられていたのがこの型だった。

ちょっとうまそうなケバブか何かにも見えてきた。
たてヴァージョンも!(文章はやや簡潔になっているが)

 

丁寧に用途や使い方を解説されたところで、マスクケースはもう巷で見かけなくなってしまっが、マスクケースの存在をこうして記録し、またいつか人類がマスクを一時的に置かねばならなくなった時、「ケースをマスクにあて、つかむように外すのじゃ」と指導的助言を繰り出したい。

マスクもまだ集めている。「おもしろマスク」と自ら言ってハードル上げまくってる清々しいマスクがあった。
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