年中あるよ!
キンモクセイも、ギンモクセイも、ドウモクセイも実は一年中見ることができる。ドウモクセイは自分で作るのでいつでも見ることができるけれど、キンモクセイもギンモクセイも常緑樹なので一年中あるのだ。花の時期だけではない。一年中が見頃なのだ。
キンモクセイという樹木がある。秋になるとオレンジ色の花が咲き、とても特徴的ないい香りを放つ。消臭剤にもキンモクセイの香りはあるし、ハンドクリームにもキンモクセイの香りがある。ちなみに漢字で書くと「金木犀」だ。
金があれば銀もあるのかな、と思ってしまうが、キチンと存在する。ギンモクセイというものもあるのだ。漢字で書けば「銀木犀」。金と銀だ。では、ドウモクセイもあるのだろうか。
キンモクセイはモクセイ科の常緑樹だ。野球のバッドを作る際の材となるアオダモもモクセイ科だし、料理で使うオリーブオイルのオリーブもモクセイ科。ジャスミンもモクセイ科である。我々の周りはモクセイ科だらけなのだ。
アオダモはトネリコ属となり、オリーブはオリーブ属。ジャスミンはソケイ属で、香料として使用されるものの総称としてジャスミンと呼ばれる。マツリカがよくジャスミンティーに使われている。他にもキソケイやオウバイなどがソケイ属となる。
キンモクセイはモクセイ科モクセイ属となる。分類には詳しくないのだけれど、モクセイの王道ということでいいのではないだろうか。モクセイ科のモクセイ属だから。とりあえず秋になると花が咲き、この香りで「秋が来たんだな」と思ってしまう。秋を告げる樹木なのだ。
キンモクセイを見ることは難しくない。常緑樹だし、そもそも樹木なので、年中あるのだけれど、秋になると香りのおかげでよく目につく。公園にあることもあれば、住宅街にあることもあるし、一昔前はトイレに行くとキンモクセイを思い起こさせた。
キンモクセイは在来種ではなく、江戸時代に日本にやってきたのではないかと考えられている。キンモクセイには雌雄があり、この時に日本にやってきたのが雄株だけで、株分けで日本全国に広がった。
いま日本にあるキンモクセイは全て「雄株」ということ。それを聞いてから公園などでキンモクセイが一列に並んでいると「男子校の体育の時間みたいだな」と思う。花は綺麗で、いい香りもする。オレンジ色の美しい花を咲かせるのだ。
オレンジというのはだいたいにおいて美しい。オレンジ色以上の色はないと思っている。それとは関係なく、私は常にオレンジ色の服を着ている。偶然だ。偶然美しい色の服を着てしまう私。そういうことなのだ。
花が散って地面がオレンジ色になるのも好きだ。美しいじゃない。とても美しいじゃない。オレンジ色ってなんて綺麗なんだろう。香りもいいし、美しい。キンモクセイをよく見かける理由が分かる気がする。
秋になるとキンモクセイばかり注目されるが、「ギンモクセイ」というものもある。キンモクセイの最初の「キ」に「ちょんちょん(濁点)」を打つだけで別の樹木になるのだ。それがギンモクセイなのだ。
実はキンモクセイはギンモクセイの変種だ。ギンモクセイがあって、キンモクセイなのだ。それなのにキンモクセイばかりに注目が集まるのはかわいそうな気がしていた。そもそも単に「モクセイ」と言った場合は「ギンモクセイ」を指す。
香りもギンモクセイはキンモクセイと比べると弱い。ちなみにキンモクセイの花言葉は「謙虚」なのだけれど、いや違うだろ、香りから考えれば謙虚なのはギンモクセイだろ、と思ってしまう。花の色だって、ギンモクセイは白で、むしろ謙虚だろと。
ギンモクセイの花言葉は「初恋」らしい。それは分かる気がする。初々しい雰囲気がある。キンモクセイと同じく中国から日本にやってきたとされる樹木だ。やっぱり雄株だけがやってきたので、日本にあるギンモクセイは基本的には雄ということになる。
キンモクセイほど、ギンモクセイは見かけないけれど、公園などに出かけると意外と植えてある。その隣にキンモクセイが植えられていたりもする。どちらも雄株なので、男子校対抗運動会の一場面みたいだな、と思う。
先ほどから金木犀とは書かずに、頑なにキンモクセイと書いてきた。銀木犀とは書かず、ギンモクセイと書いてきた。パッと見たら、どっちだ、となるけれど、頑なに私はカタカナを選んだ。全てはドウモクセイのためだ。
キンモクセイやギンモクセイだけではなく、ウスギモクセイなどもある。ウスギモクセイもまたギンモクセイの変種。また生垣などにはヒイラギモクセイが使われていることも多い。ギンモクセイとヒイラギの雑種がヒイラギモクセイ。こちらも雄株だけが存在する。
問題はキンモクセイもギンモクセイもあるけれど、「ドウモクセイ」がないことだ。いくら図鑑を調べてもドウモクセイはないのだ。金と銀は花の色に由来する名前。オレンジ色を金とし、白色を銀とする。確かに銅色の花を咲かせるモクセイ属はないのだ。
ないなら作り出せばいいのだ。キンモクセイだってなかったのだ。ギンモクセイの変種として生まれた。そこは自然に生まれたのだろうけれど、ドウモクセイは自然ではできないので、私の手で作り出そうと思う。
ドウモクセイを作る方法は銅板をヘラで凹ませることから始まる。そこにモクセイを描くのだ。さすればそれは銅板で出来ているので、ドウモクセイとなる。さすがに植物の改良等でドウモクセイを作るのは知識がなさすぎて無理だから。
いぶし液を銅板に塗ると銅板が黒く変色する。急に銅板に味が出てくる。そこを耐水ペーパーで削る。ただただ黒いだけではダメなのだ。味をより作り出さなければならない。そのために黒くなったところを、いい感じに削る。全てはセンスだ。
秋の夜空を見ていた。とても綺麗な月が見えた。秋の月は綺麗なのだ。天体望遠鏡があれば、土星だって、木星だって、金星だって見えるだろう。そんな秋の夜長に私はドウモクセイを作っていたのだ。
最初はキンモクセイやギンモクセイの話をしていた。しかし、物語はやがて「宇宙(そら)へ」となったのだ。植物から「宇宙(そら)」を感じて欲しいのだ。そのようなことを踏まえて作ったドウモクセイです。
「ドウモクセイ」ってもう書いてあるからドウモクセイなのだ。銅板に木星を描いてドウモクセイ。非常にわかりやすい。最初は植物のモクセイの花を描こうとしたけれど、もっと宇宙(そら)を感じて欲しくて、木星にした。決してモクセイの花が難しかったからではない。
これでキンモクセイ、ギンモクセイ、ドウモクセイが揃ったわけだ。金木犀のように漢字で書かなかったのは、ドウモクセイを「銅木星」と書かないといけなくなるから。でも、いいではないか。これで金銀銅が揃ったのだ。
キンモクセイも、ギンモクセイも、ドウモクセイも実は一年中見ることができる。ドウモクセイは自分で作るのでいつでも見ることができるけれど、キンモクセイもギンモクセイも常緑樹なので一年中あるのだ。花の時期だけではない。一年中が見頃なのだ。
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