現地で作ろうぜ!
冬だからこその野菜ジュースを作った。甘く美味しい野菜ジュースになったと思う。産地で買ったのも美味しさに一役買っていると思う。問題は寒いことだ。とても寒いことだ。0度。冬の野菜ジュース作りの唯一の問題だと思う。
野菜というものがある。肉ではない。魚ではない。野菜だ。人参やほうれん草、カボチャなど野菜は数多く存在する。毎日、野菜を食べることで健康になるのだ。居酒屋に行ったらシーザーサラダを頼む、そういうことだ。
と言いつつも、野菜をあまり食べないという人も多いだろう。そこで登場するのが野菜ジュース。スーパーなどに行くとズラリと並んでいる。しかし、せっかくなので、最高の野菜ジュースを己の手で創り出したいと思う。
子供は特にだと思うけれど、野菜が苦手という人も多いのではないだろうか。しかし、野菜は食べなければならない。健康のためにも野菜なのだ。もちろんバランスよく食べることが大切だけれど、そのためにも野菜を食べなければならない。
野菜不足を解消する一つの方法が野菜ジュースだ。売っている野菜ジュースは基本的にどれも美味しい。しかし、自分で作る野菜ジュースはもっと美味しいのではないだろうか。現地に行き、野菜を吟味して、最高の野菜ジュースを作るのだ。美味しいに決まっている。
野菜にはそれぞれ旬があるけれど、冬野菜もまた美味しい。雪や寒さを上手く使うことで、甘さが増した野菜があるのだ。それを狙い、岩手県にやってきた。結局は甘い方がいいのだ。野菜ジュースだけど甘いのがいい。それを求めた結果の岩手県だった。
野菜ジュースを作ると言ったけれど、先に書いたように、甘さを求めている。とても求めている。夏のアリほど求めているし、寂しい夜の暖かい食卓ほど甘さを求めている。ということで、まずは江刺市のリンゴを買い求めることにした。
江刺はリンゴの名産地。「江刺りんご」というブランドもある。これは特定の品種をさしたものではなく、この地域で育てたリンゴのこと。あと野菜ジュースを作ると言ってリンゴを買っている。リンゴは果物だけど、甘さを求めるからセーフとした。
この地域のサンふじは収穫をギリギリまで送らせて蜜入りを重視した完熟リンゴらしい。素晴らしいじゃない。絶対に甘いじゃない。他にも奥州ロマンや藤原ロマンなどいろいろな品種があって選ぶのが楽しかった。
次は野菜だ。緑黄色野菜が体にいいと聞く。そして、甘さを求めている。そこで選んだのが「南部一郎かぼちゃ」だ。カボチャだけれど丸くなく、細長い形をしている。一関市の本寺地区で作られているカボチャだ。
彼は甘いのだ。糖度が15度以上になるものもある。一般的なミカンやイチゴより高い数字だ。甘みが強く、生食もできる。野菜ジュースに向いたカボチャと言える。収穫後に風通しのよい場所に置くことで糖度が上がるそうだ。
野菜だけれど甘いが今回の野菜ジュースのポイント。次はネギだ。一関には甘いネギがあるのだ。それが「曲がりネギ」。スーパーに並んだ野菜たちを見て欲しい。ほぼすべてまっすぐだ。キュウリも人参もネギだってまっすぐ。でも、曲がりネギは違うのだ。
名前の通り曲がっている。曲がっていない野菜が全盛の時代に、このネギは曲がっているのだ。それはなぜか、曲げることでネギが甘くなるからだ。わざと育っているネギを掘り起こし傾斜のある畝に植え直す。ネギにストレスを与えることで甘くなるのだ。
冬という寒い気候を使うことで、御馴染みの野菜が甘さを増すことがある。甘さを私は求めている。そのためには御馴染みの野菜では足りない。甘さを増して欲しいのだ。
岩手のあちこちの直売所で売っていた「寒じめほうれん草」。寒じめほうれん草とは、収穫が近い時期にわざと寒さに当てたものだ。ほうれん草の給水能力が低下して甘さが増す。普通のほうれん草と違い葉っぱが分厚くシワシワなのが特徴だ。
冬が生み出す甘みはほうれん草だけではない。人参もまたそうなのだ。雪下にんじんというものがあり、人参をわざと雪に埋めることで、人参が熟成され、人参のあの臭みが減り、甘みを生み出す。甘いのだ。最高ではないか。
甘さを引き立てる時に、わざと辛いものを入れる場合がある。スイカに塩のように、甘さを引き立てるためには辛さもまた必要なのだ。野菜たちに多少の辛さでピリつきを与えるのだ。
遠野の暮坪地区で栽培されている「暮坪かぶ」。カブだけれど細長く、長さは20cmほど。ちなみに暮坪地区ではない場所で作られるこの品種は、「遠野かぶ」として売られている。究極の薬味とも呼ばれ、400年以上暮坪地区で栽培されてきた歴史あるカブだ。
原種に近いカブらしく、収量が多くなく貴重とのこと。辛味が強く、薬味や漬物に利用されている。辛味が強いという点に私は注目したわけだ。ちなみに蕎麦に乗せて食べると辛味は強かったけれど、くせになる感じで美味しかった。
江刺りんご、南部一郎かぼちゃ、曲がりネギ、寒じめほうれん草、雪下にんじん、暮坪かぶを購入していよいよ、野菜ジュースの材料は揃った。あと、江刺はトマトも有名だったので、トマトジュースも買った。
岩手らしく北上川が見える場所で作る。甘い野菜たちを切ってミキサーに入れていく。普通の野菜ジュースではない。冬の甘さを生かした、しかも地産地消の野菜たち。必ずや美味しい野菜ジュースになるだろう。
美しい色ではないか。ミキサーに入れた瞬間に美味しさに自信を持てる。虹色の美しき野菜ジュースになるのではないだろうか。だって、カラフルなんだもん。美味しく美しい野菜ジュースになるはずだ。
混ぜたら美しき色は消えた。濃い緑。とても緑。新緑美しい緑ではなく、おばけ出るんじゃないか、という森の緑だ。でも、色はいいではないか。問題は味だ。味が美味しければ全て解決なのだ。
美味しかった。正直に言えば、特別美味しい、この野菜ジュース以外は考えられないということはないのだけれど、甘みも充分に感じるし、誰かに味を聞かれた際に「美味しい」と答えることのできるレベルだ。やはり冬野菜は甘いのだ。若干、ネギ臭かったので、ネギの入れすぎには注意して今後は生きていきたいと思います。
冬だからこその野菜ジュースを作った。甘く美味しい野菜ジュースになったと思う。産地で買ったのも美味しさに一役買っていると思う。問題は寒いことだ。とても寒いことだ。0度。冬の野菜ジュース作りの唯一の問題だと思う。
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