本は底なし沼
カラーブックスを紹介した。実はカラーブックス以外にも私が集めているシリーズがあるのだけれど、とにかくかさばる。だって、カラーブックスだけでも909冊あるわけだし。でも、そのかさばりが幸せを生み出す。本の魅力だ。抜け出せない底なし沼みたいな感じだ。
カラーブックスというものがある。保育社から出版された文庫本サイズのシリーズで、1962年から1999年の間に909点が刊行された(復刻版などは除く)。その名の通りカラーページが多く、内容も様々だ。本当に様々が過ぎるのだ。
おそらくほとんどが絶版となっているので、手に入れようと思うと古書店を漁るしかない。ただその時間も楽しい。ということで、今回はカラーブックスの一部を紹介したいと思う。
趣味で何かを集める人がいると思う。コレクションというやつだ。ミニカーを集めている人もいれば、フィギュアを集めている人、鉱物を集める人もいるだろう。私も集めているものがある。それがカラーブックスだ。
先にも書いたようにカラーブックスは1962年に記念すべき1巻「ヒマラヤ」から始まり、1999年の909巻「日本の私鉄 京阪」で幕を閉じる。あらゆるジャンルを発刊してきた37年間だった。
人にはストライクゾーンというものがある。私のストライクゾーンは縄文時代から古墳時代までと、写真が撮られ始めた時代から昭和が終わる頃までがそれになる。カラーブックスはどストライクなのだ。
1962年に創刊されたので、昭和の匂いをたっぷり吸い込んだシリーズなのだ。透明なビニールカバーがついているのがポイントで、その肌触りは世界一と言ってもいいかもしれない。ただ古書だとビニールが失われているものも多い。
名前からわかるように、カラーページが多い。古い時代のことがカラーでわかるのだ。もちろん当時は最新のことが載っていたわけだけれど、今となっては古い時代をカラーで知ることができるので貴重だ。
カラーブックスは本当にいろいろな種類が出ている。おりがみの折り方を紹介したものもあれば、中国古陶磁を紹介するもの、歯の病気を紹介したものもある。ジャンルに垣根がないのだ。なんでもある、それがカラーブックスである。
私は街が好きなので、当時の様子が分かるものが好き。その一つが東京を扱ったものだ。「東京風物詩」「東京昔と今」「新しい東京」など、当時の様子を知ることができる。「新しい東京」が出版されたのは昭和40年。今となっては新しくないけれど、それがいい。
ちなみに私は東京に住んでいるから東京を中心に集めているけれど、東京以外にも似たようなシリーズが出ている。また料理屋さんをまとめたものもあり、これも全国いろいろな場所のものが出版されている。
多くの人はどこかに出かける際はネットで美味しいお店を調べたり、本屋さんでガイドブックを買ったりすると思う。私は違う。まずカラーブックスを見る。昭和に出版されたものなので情報は古い。行ったらないことも多々ある。でも、カラーブックス中心の生活なのだ。
表紙も時代を感じることができる。おそらくだけど、上記の表紙は写真に着色している。Photoshopとかではないのだ。お皿に乗った肉も写真に写りやすいように手前に傾けている。悶えてしまう感じだ。当時の匂いを感じるのだ。大きくして額に入れて飾りたい。
温泉シリーズもたまらない。今の温泉の写真だと若い人が入っていると思う。違うの、カラーブックスは。地元の方と思われる人が入っていることが多い、裸で。胸くらいは男女問わず普通に写っている。時代を感じることができて素晴らしい。
電車を紹介するものも多々出ている。日本の私鉄シリーズは特に人気と聞く。当時の車両だけではなく、景色も知ることができる。たまらない。また刊行していた時期も長いので、たとえば小田急は昭和と平成にそれぞれ1冊ずつ出ている。
夜な夜な見ている。平成が終わり令和となった2020年に昭和の空気をたっぷりと吸い込んでいるのだ。フィルム写真のよさもある。それがカラーで載っている。古書店などでカラーブックスを見つける度に、喜びで吠えている。
カラーブックス、全部好きなのだけれど、その中でも好きなものがある。私が読んでいて悶えてしまうやつだ。だいたい全部悶えているのだけれど、こんなのもあるの! みたいな悶えや、なんかええわ、と関西人に怒られる関西弁が出る悶えまで様々。それを紹介したい。
竹とささについてまとめられた一冊。「タケ」「ササ」「バンブー」について、その種類や活用法について記してある。本文を読むと「近頃は竹に関する関心が次第に高まっている」とある。流行がわかるのもカラーブックスの良い点だ。
タイトルかわかるように日本中を空から撮りまとめられている。今だと衛星写真も無料で見ることができるし、ドローンなどもあり、自由に空から日本を見ることができるけれど、当時としてはとても貴重。「小型機での撮影ポイント」なども書いてある。限られた人にだけ役立つポイントだ。
今も本屋に行けばオシャレな家などを紹介した本や雑誌が並ぶけれど、この「小住宅」は、実家のような普通の家を中心に、時には平面図付きで紹介されている。家具が置かれた室内の写真もあり、当時と今の家の違いがよくわかる。
私が勝手に「小シリーズ」と読んでいるだけだけど、小住宅だけではなく、「小庭園(1963年)」、「小住宅の庭(1976年)」もある。大きい庭より小さい庭の方が難しい的なことが小住宅の庭には書かれているが、今と比べれば随分と広い。土地事情の変化も知ることができる。
哲学のような一冊だ。レディーに「なる」ための本ではなく、レディーで「在る」ことの意味を考える内容になっている。「郊外へ行く」「立ち喰い作法」「ミルクの詩」など、そそる見出しが並ぶ。自己啓発のような感じと言えばいいのだろうか。たまらない。
全国の有名古墳をまとめた一冊。空から撮影した写真が多いのも特長だ。そして、カラーブックスは全ページがカラーというわけではない。文章のページが白黒だったり、もちろん写真が白黒だったりもする。
古墳に限らず白黒ページはあるのだけれど、かわいい彼女がウィンクできない、のような愛おしい感じがして好きだ。上記は装飾古墳のページ。千足古墳はカラフルというわけではないので、白黒でも問題ないけど、装飾古墳が白黒という点が好きだ。
この本は全ページに渡り、私調べだと写真がない。日本の神話が文章で書かれ、表紙にあるような挿絵がカラーで描かれている。写真を中心にしたものが多いカラーブックスでは珍しい。ちなみに絵は中馬泰文さんのものだ。
今では当たり前のローヤルゼリー。栄養ドリンクにタウリンと並んでよく入っているイメージがある。当時はこのローヤルゼリーが世界的なブームになった時代だったそうだ。ミツバチの習性などが写真盛りだくさんで掲載され、アイドルの写真集のようだ。写っているのはミツバチだけど。
僕が双子の女の子と同棲してピンボールを探していた年の一冊。その思い出は嘘だけど、全国の路面電車が紹介されている。東京を走る路面電車も載っている。副題には「消えゆく市民の足」とある。そう消えゆくのだ。
そして、やはり消えてしまった。その一つである都電をまとめたのが「おもいでの都電」。同じシリーズで現役から引退までをまとめられるのが、このシリーズの歴史を物語っている。
僕が耳専門の広告モデルの女の子と羊を探していた年の一冊。その思い出はやっぱり嘘だけど、猫だらけの内容になっている。重版もかかっているので、今も昔もねこが人気だったことがわかる。ねこは今とあまり変わらないけど。もし私がネコを飼ったら「いわし」と名付けたい。
今でいう「DIY」の手順などが書かれている。最近のその手のものは木目を生かして、などというものが多いけれど(私の家の手作り本棚もそう)、当時は違う。色を塗ったものが多く、作るものも黒電話を置く電話台だったりする。DIYからも時代がわかり楽しい。
ABCからXYZまで、生活(くらし)や芸術(アート)、産業(インダストリー)に必要な色彩学をカラーで展開した内容になっている。流行色を決める「国際流行色委員会」の話や、仕事着の色についてなどを写真と共に紹介している。
全国の郷土玩具を東日本と西日本にわけて紹介している。郷土玩具も作り手がいなくなったのか、なくなっていくものも多い。たとえば、西日本編に載っている猩々は今はあまり作られていない気がする。あの頃を知ることができるのだ。
郷土玩具は上記の2冊の前にも出ている。不思議なもので、たとえばどちらかを持っていればいい気がするじゃない。同じ郷土玩具だし。でもね、全部欲しくなる魅力があるのが、カラーブックスの力。集め始めたら終わりがないのだ。
紹介し始めるとキリがないので、この辺で終わりとしたい。本当はまだまだ紹介したいものがある。「おもしろ駅図鑑」とか「珍本古書」とか「カラーコーディネートおしゃれを楽しむ」とか。本当に魅力しかないシリーズなのだ。
カラーブックスを紹介した。実はカラーブックス以外にも私が集めているシリーズがあるのだけれど、とにかくかさばる。だって、カラーブックスだけでも909冊あるわけだし。でも、そのかさばりが幸せを生み出す。本の魅力だ。抜け出せない底なし沼みたいな感じだ。
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