冷やし中華を作ります
まだまだ暑い日々が続いてますね。食欲も減退しがちなので、今日は冷やし中華でさっぱりいきたいと思います。
思い出の中華料理屋
このシンプル極まりないキュウリだけの冷やし中華。昔、近所にあった小さな中華料理屋のメニューなんです。
1980年生まれの私が成人した頃、地元のおじさんに「あそこ美味いよ」と教えてもらったその店。私はその頃ラーメン食べ歩きに夢中だったので、(こういう古い中華料理屋じゃなくて、ラーメン専門店が良いんだよな)と正直思いました。まだ“町中華”という言葉もなかった時代。昔ながらの中華料理屋の魅力を理解するには私は若過ぎました。
しかし、ラーメンを食べてみてビックリ。当時流行していたラーメンと比べると、極めてシンプル且つあっさり。なのに滋味深くしみじみと美味かったのです。
後に『京都の中華』(姜尚美、幻冬舎文庫)という名著と出会って知ったのですが、京都の中華料理は祇園など花街で食べられるため、ニンニクや油控え目、強い香辛料などは使わないという特徴があるそうです。
思えばあの店も東京のとある歓楽街の真ん中にありました。そういった立地の要請なのか、ラーメン以外のメニューも京都の中華料理と同じくすべてあっさり風味。同年代はまだ知らないであろう大人の世界に足を踏み入れた優越感も手伝い、足繫く通うようになりました。
ただキュウリだけ冷やし中華は「なんかあるな」と思いながら一度も頼むことはなく、結局2000年代半ばにその店は閉店してしまったのです。
やっと会えたね
そう。キュウリだけ冷やし中華、食べたことないんです。幾ら老舗の渋い中華料理屋の魅力に目覚めたと言っても、20代の私にはさすがにシンプル過ぎました。
そんな私も今年で45歳。そろそろロースカツがキツくなってくるような年齢です。ここ数年(あのキュウリだけ冷やし中華、今ならドンピシャかも。食べとけば良かったな)という後悔が湧いてくるようになりました。
というわけでその後悔、今から晴らします。
脂気はまったくないですが、麺のツルツルシコシコ感とキュウリのシャキシャキの対比が面白く、ちゃんと満足感があります。何より胃にもたれるようなことは絶対にない優しい味。20代の私は頼もうと思わなかったが、20代の私が食べても良さが理解できなかったであろう。そんな食べ物です。
はっきり言って「美味過ぎ!皆さん、絶対やってみて!」と大騒ぎするほどではありません。しかし「お前じゃなきゃ駄目なんだ!」という日がひと夏の間に何回かはありそう、いや、絶対にあるぞこれは。

