機内食を手に入れるべく、羽田空港へ!
この日はたまたま3連休の初日で、空港は大混雑していた。
みんなこれから旅に出かけたり、帰省したりするのだ。
楽しそうでキラキラしている。
私もキラキラしている。
だってこれから機内食を食べるから!
空港独特の開けた空間、にぎわい、アナウンス。
実際に自分が旅せずとも、空港にいるだけでワクワクする。
ここで機内食を買って、展望デッキで飛行機が飛ぶのを見ながら食べたらとても素敵なんじゃないか? 帰りはお土産でも買っちゃおうかな!
プチトリップ体験だ!
あれ?
その場で食べられるんじゃなかったの…?
店内を見渡しても、コンビニではないので電子レンジの姿はない。
先ほどまでのウキウキ気分に突如暗雲がたちこめてきた。
機内食の自販機がある!
まだ可能性はある!
空港内に機内食の自販機があるとも聞いているのだ。
そっちはきっとホカホカの機内食が出てくるだろう。
どうしよう…
展望デッキでの優雅な食事姿を思い描いて空港まで来たのに…。
ここまできたのに家に持って帰って食べるのは悲しすぎる。
そうだ、真夏だし日光で溶かすか?
いったい何時間かかるのだろう。
いちおう加熱処理はしてあるようだが、さらに加熱する必要があるようだ。
あちこちに加熱前提で説明が書かれている。
そりゃそうだ、企業としては温めて美味しい状態を味わってほしいだろうから。
消費者としてもできれば美味しい状態で食べたい。日光で溶かすとか言っちゃダメ。
となると、私は今どうしたらいいのだろう。
そうだ!
知り合いの家で温めさせてもらおう。
そう思い品川に住む友人に電話をした。
その友人のマンションには最上階にゲストルームがあるので、そこで優雅に食べるのも素敵かもしれないと思ったのだ。
が、友人はちょうど出かけるところだったようで、こちらの事情を伝えることもなくすぐに電話を切った。
冒頭の楽しそうな私を思い出してほしい。
まさかたった20分後にこのような表情になるなんて想像していなかった。
空港へ向かう電車はとても混んでいたのに、反対方向の電車はとても空いていた。
これから旅を楽しもうとキラキラしている人はもうおらず、電車は現実へと向かっていく。
私はこの機内食をどう温めるのか。
考えろ、考えるのだ…!
考えた結果、初めて平和島駅に降り立った。
なぜここに来たかはあとで伝えるとして、私は電車で移動している間に頭を切り替えることにした。
せっかく機内食を手にしているのだから、いつまでも暗い顔をしている場合ではない。