寒空の下でワラを編む
まずはワラで薦を編んでいるところを見てほしい。
作業がおもしろくて、寒空の下でコンクリートブロックを椅子にして2時間ぶっつづけで編んだ。こういう熱中の瞬間のために生きている。
やることはとても単純で、小分けにしたワラの束を紐でひたすら縛っていくだけだ。薦は様々な植物でつくることができるが、今回は稲のワラで編んだ。
本来ならワラ束の質や量を揃えて編まなければならないが、作っているのは何にも使わない薦だ。そこに責任や義務は一切なく、単純作業のミニマルな陶酔だけがある。
ふと気がつくと薦ができあがっていた。作業を見ていた親戚一同からも褒められて舞い上がる。
ワラが飛び出たケバケバを取るともっと綺麗になるのだろうが、取らない自由もある。これで完成とした。物事を雑にこなすことに興奮するのだ。主導権を握っている感じがするから。
ワラに陶酔したり興奮したりしちゃってる僕って異端ですか?(爆藁)
薦とはいったいなんなのか
そもそも薦とはなんなのか。
まず、机の下に敷く道具として神職にはおなじみだ。
祖父から聞いた別の使い方としては、農作物の苗を寒さから守るために被せていたという。昔は市販の道具が少なかったので、なんでも手作りしなければならなかったのだ。
薦づくりは主に雨の日に行うものだったらしい。
晴れの日には田畑に出て働いて、雨の日も休まずに屋根の下でできる作業をする。休みという概念がまだ発明されてない時代だ。
「昔は晴れた日に家ん中おったら笑い者じゃったきの」
祖父が当たり前のように言う。いい天気の日に家でじっとしているだけで町中のエンタメになるのだ。
余談だが、針のむしろという慣用句でおなじみの「筵(むしろ)」も薦と似たような道具のことらしい。
薦と筵の差は知ったこっちゃないが、どちらも将棋の成り駒みたいでかっこいいと思う。
薦は敷物なので正座するしかない
できあがった薦の話に戻ろう。
これ、笑ってしまうほど使い道がないのだ。
とりあえず乗って正座をしておこうか。敷物だから。
いままでに座ったどんな敷物よりも心地がいい。
ワラをふんだんに使っているおかげか、見かけよりふかふかしているのだ。気持ちよすぎて自然と寝転がった。
すこし窮屈だったが、気候が温暖な土地ならぜんぜんこれだけで生活できる。壁や屋根すら要らないかもしれない。新米におかずがいらない、みたいな話だ。
使わないときは巻いておけるのも便利だ。
敷物を身にまとう
さあ、次はどうしようか。
身にまとうとダウンくらい温かかった。
ワラの中は空洞になっているので温かい空気を含んでいるんじゃないか。クッション性もあるので急なタックルにも安心である。
あと薦をまとうとミノムシみたいなフォルムになるのも楽しいし最高。
そして、薦は脱ぐとすぐ敷物になる。
アウターとレジャーシートの2wayはいままでなかっただろう。革命だ。ユニクロかどっかが製品化してくんないかな。エコでロハスですよ。
車の凍結防止のカバーにする
最後、いいことを思いついた。
薦を車の凍結防止カバーにするのはどうだろう。冬の朝にフロントガラスがバッキバキに凍ることがあるのだ。急いでいても溶かさなければ家を出られない。遅刻のもとになるのだ。
そこで、薦の登場だ。
夜から朝にかけての凍てつく時間帯、薦をフロントガラスに被せておけば凍結防止の役に立つはずである。
サイズもピッタリで和の気風にうっとりする。
というわけで、薦が飛ばないように固定して朝を待つことにした。理想はフロントガラスだけが凍らずに他の窓が凍っている状態だ。
……というわけで翌朝!車を見にいきます。
あたり一面は霜が降りていて、車のボディもえらく冷たい。薦を被せていなかった部分のガラスは凍っている。
フロントガラスはどうだろうか。薦をどけてみよう。
フロントガラスは薦のおかげでまったく凍っていなかった!わたしの邪魔をする悪魔パーピマンを打ち倒したぞ!!
というわけで、薦はワラで作れるし、敷物になったり車の凍結防止カバーになったりして便利だった。
あとすみません。車が凍っていなかったのは最高なのですが、それはそれとして、普通に寝坊して遅刻が確定しているので失礼します。
いやー、ままならないぜ。

