まずは一つ謝らなければならないことがある。「木の芽」なんてつつましいタイトルを付けてしまったが、実際に我が家にある葉山椒はこれだ。
これは実を付けない、葉を鑑賞するための山椒なのだが、こうなってしまったのには理由がある。
去年の冬、うっかり1度水切れさせてしまったため、なるべく負荷をかけないよう剪定せずにいたのだ。山椒は意外にも繊細な植物で、冬以外の成長期に剪定をすると、ストレスから生育を止めてしまう。
山椒は湿潤な土を好むわりに根腐れに弱く、植え替えなんてしようものならたちまち「もう嫌で〜す」とばかりに枯れてしまうこともある。なかなか我儘な植物だ。
もう好きに伸びなさい、今年は剪定はしないからねと放置した結果がこの有様。
このトゲのおかげで、伸び放題の山椒の横を通るとかなりの確率で痛い目に遭う。とはいえベランダに出すとたちまちアゲハチョウの子らに食べられてしまう(防虫ネットをかけてみたことがあるが、そのストレスで生育を止めてしまった)。いったいなんのためのトゲなのか。
流石に周囲の植物を傷つけかねないほど伸びてきたので、今回は1枝だけ刈り取って、葉っぱを料理に使おうと思う。
以前こーだいさんの記事で、ジェノベーゼにしておいしい野草のトップは山椒とあったが、実際山椒の葉はそのまま食べてもおいしい。
そもそもミカン科だし、柑橘の仲間といえば仲間なので、きっとお菓子にしてもイケるはずだ。
清潔なハサミで根元から刈り取る。これだけ伸びた枝だから、1本くらいなくなっても大したストレスにならないのではないかと楽観している。人間は「腕一本くらいなくなっても気付かない」わけにはいかないから、そのあたりは植物の懐の深さだ。
今回作ってみるのはパウンドケーキ。
レシピは若山曜子さんの『レモンのお菓子』に掲載されているレシピを参考にした。山椒を柑橘として捉えるならば、きっとレモンのお菓子とは好相性なはずだ。
書籍が売れてほしいので詳細なレシピの掲載は控えるが、やっていることとしてはレモンパウンドケーキに刻んだ山椒の葉を加えているだけなので、各自お気に入りのレシピを参照していただければ幸いである。
しっかりと酸味があるふかふかのパウンドケーキに、山椒の葉の野趣ある風味が加わって大人の味だ。想像通り、レモンと山椒の相性は抜群にいい。
特にピリッとした辛味があったり、舌が痺れるような感じがあったりするわけでもなく、ただただ複雑な山椒の風味が加わったなあという印象。パウンドケーキ自体をかなり酸っぱくてもおいしく食べられそうなバランスである。
山椒の葉は、レシピを検索してみると佃煮やふりかけが多くヒットする。もちろんそれもおいしいのだが、香辛料としてとても豊かな風味があるため、今回のようにお菓子づくりに使うのもとてもおすすめ。きっと葉を乾燥させたら、また違う風味が出てくることだろう。
ご自宅に茂った山椒がある方は、ぜひ一度お試しいただきたい。