特集 2024年4月20日

季語ビンゴ散歩 春

四季がいずれ二季になるといわれている今だからこそ、季節の移ろいを感じたい。

そのためにはどうすればいいか、季節感があるものを見つければいいのである。

季節感を端的に表しているものってなんだろう?そう、季語だ。

身近な場所で季語を見つければいいじゃん。ついでにビンゴゲームとかもすればいいじゃん。本記事はそういう内容になっています。

社会人。体育が嫌い。大人になった今でも大抵の物事を「体育よりマシか、否か」で判断している。

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季語ビンゴ散歩とは

①5×5のマスに季語を書いたビンゴカードを持って散歩する。
②ビンゴカードに書いた季語を実際に見つけたら、該当するマスを開ける。

以上

小学校でたまにある、屋外に出てやる授業みたい。

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ビンゴカードを作る

まずは事前にリストアップした季語一覧を元に、ビンゴカードを作る。

せっかくなので小学校時代からの地元の友だちを呼んで、一緒にやることにした。

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写真は筆者の友だちの日向(ひなた)さん。小学校一年生の時からの仲。記憶力がいい。

日向:春の季語っていいね。鳥とか花とか、全体的にかわいい。

佐伯:花いっぱいなのいいよね。

日向:へー、『花粉症』って季語なんだ。わたし花粉症だから書いとこ。『春セーター』も、わたし今セーター着てるし書いちゃお~

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今回は三春と晩春の季語をピックアップした

日向:わたし小学校の時、俳句教室通ってたんだよねー

佐伯:知らなかった。そうなんだ。

日向:大人ウケを狙って書いた句がまんまと大人たちにウケちゃってモヤモヤした記憶がある。

佐伯:大人にウケる子どもらしさってあるよね。

日向:そうそう。小学校の授業で物語文を書かされた時もさー。

佐伯:練馬の子ら(練馬区の小学生による作文集)に応募するためのやつね。あったあった。

日向:自分は木の妖精のファンタジー物語を書いて先生に褒められたんだけど、クラスの男子は『ハーゲンダッツの中には『ハゲ』がある』って話を書いてて、

佐伯:どういう話???

日向:『いや、絶対そっちの方がおもしろいじゃん…!!!!!』て思って、なんか自分のことが恥ずかしくなったんだよね。


…そんな話をしつつ、ビンゴシートが完成。

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筆者作
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日向さん作
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ビンゴシートに書いた季語一覧

 

今回散策するのは石神井公園。

さっそく石神井公園(駅)から石神井公園(公園)に向かって歩いていると

佐伯:あれ桜だよね。

日向:桜だね。

佐伯:『桜』ってさっき書いたよ。公園に着く前に一個開いちゃったな。

もちろん桜は春の季語。そしてこの日はまさに桜のベストシーズン。あちこちで桜が咲き誇っていた。気温もほどほどに涼しく、これぞまさに『花冷え』。春レベルで言うと80%。かなり春の日だった。

石神井公園着。
(この道中はずっと「ケロロ軍曹のメインキャラ五人(匹)のなかで誰が一番好きかでその後の趣味が決まるよね」という話をしていた)


公園に着いた瞬間、切り裂くような鳴き声が…。


キキキキキキキキキキキキ......


佐伯:…猿?

日向:猿、みたいな鳥の鳴き声。

佐伯:まって、わたし『さえずり』書いた。

日向:私も書いてる。


春の季語としての『さえずり』は、鳥の繁殖期である春に聞こえる求愛の鳴き声のことを指しているらしい。
この時に聞こえた猿みたいな鳴き声がそれにあたるかはわからないが、とりあえず1マス開けることにした。

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池にはボートがうじゃうじゃと漂っている。

佐伯:ねー、わたし『ボートレース』も書いたんだけど、これってボートレースに入る?

ボートレースも春の季語だ。
事前に調べていた時は「ボートレースって…春か?」と思っていたが、実際春の石神井公園にはボートに乗る人がめちゃくちゃいた。


日向:うーん…レースはしてないからな~ボートレースではないかな~。

佐伯:おっしゃる通り。

日向:でもレースしてる稀有な人もいるかもね。

佐伯:注意して見てみよ。


ふたりとも石神井公園に馴染みがないので、とりあえず入口の地図を見る。

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佐伯:かわいい!

日向:でも現在地なくない?

佐伯:たしかに。そんなことある?

日向:ーあ、あった。

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赤い点の下に「現在位置」と書いてあります

佐伯:うっっっっっすいな~

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石神井公園散策開始

とりあえず園内を一周する。

佐伯:あれって残り鴨かな。

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残り鴨・晩春の季語。春になってもまだ居残っている鴨こと。

日向:んー、どうだろう…

日向:だとしたらめちゃくちゃいるよね。

佐伯:居残り勢が多すぎると趣に欠けるんだな〜。

ひとまず、花にまつわる季語にターゲットを絞り、下を見ながら歩く。

写真は日向さん

日向:おっ、

日向:蟻の巣だ。

佐伯:ほんとだ!

2人ともビンゴカードに書いていた季語『蟻穴を出づ』。
春になって暖かくなると蟻が巣から出てくるという、言われてみればたしかにそんな気がするようなしないような意味の季語。『蟻穴(アリアナ)』の響きがかっこいい。

佐伯:で、巣から…出てる?

日向:出ては…いない…。

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佐伯:入ってるね…今日寒いしね…。

日向:なんか押し込んでる。

佐伯:でも、入ってるってことは過去に出てもいるわけだから、蟻穴を出ずでいいでしょ。

判定基準はかなりガバガバである。

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現時点でこんな感じ

 

 

佐伯:花見してる人がいる。

日向:『花見』って書いたよ。

佐伯:花見の人たち、おにぎり食べてる。

日向:じゃあ『海苔』もチェックできるね〜。

ーそう、『海苔』も春の季語なのである。
なぜ春なのか…それは海苔が早春まで採取されるからなのだが、そう言われてもなんだか微妙に納得感がない。
しかし、こうして桜の木の下でおにぎりを食べている人を見ると、「春は米に海苔巻いて食うに限るよな!!!」と力強く肩をたたかれた気分になる。この風景には、理屈に勝る説得力があった。

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日向:あ!

日向:たんぽぽ。

佐伯:桜、花見、タンポポ…春すぎるかも。

日向:たんぽぽの花って最初からひしゃげたような形だから、踏まれても元と大差ないところがすごいよね。

佐伯:たしかに。

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日向:あ、メタセコイアの木。

佐伯:へー、なにそれ。よく知ってるね

日向:小学校の校庭にあったじゃん!

佐伯:知らね~~~~~(※筆者と日向さんは同じ小学校に通っていた)

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日向:メタセコイアと言えばさー、

佐伯:うん。

日向:小学校のとき、班で壁新聞をつくる授業で、同じ班の頭のいい子がメタセコイアについて調べた文を書いてて。

で、その子に、『おれ絵心ないから、日向さんが描いて』って言われて、わたしがメタセコイアの挿絵を描いたのね。

佐伯:日向さん昔から絵上手だもんね。

日向:それなのに、発表の時、クラスの子たちは『頭いいやつって絵もうまいんだな!』ってその彼のことを賞賛してたの。

佐伯:えー、日向さんが描いたのに。

日向:でも、彼はそれを否定しなかったの。その時、『あ!横取りされた』って…。言わなかったけどね。

佐伯:あーーー。

日向:そのことを今思い出した。

佐伯:苦い記憶…。

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写真の黄色い花は山吹(晩春の季語)

少し歩くと、大通りに出た。石神井公園は、敷地の途中に大通りが一本挟まっている。

日向:へー、この道に出るんだ。

佐伯:あの建物ってエン座(※)のとこじゃん!

日向:ほんとだ!エン座の建物!

佐伯:石神井公園ってエン座道(えんざみち)につながってたんだね。

(※エン座・・・練馬の有名なうどん屋。『石神井公園ふるさと文化会館』という練馬の郷土資料館の中に店を構えている。筆者の通っていた小学校では、エン座の人が学校に来てうどんを作る授業があった。そのため、同じ小学校の同級生は全員エン座を知っている。)

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⏩ 春めきあふれる散歩が続く

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