欠席していこう
今までは愚直にいろいろなことに出席してきた。しかし、欠席した者にしか知り得ない体験もきっとあるはずなのだ。これからはどんどん欠席していこう。そして、欠席したいのにできなかったときは、この鏡で欠席気分を味わっていきたい。
集合写真に欠席した人は、後日写真を撮って右上の枠に収める。そんなお馴染みな決まりがある。
みなさんは、枠の中に収められたことはあるだろうか。ちょっと切ないあの枠。あれを日常的に体験できる装置を作りたいと思った。
私は集合写真に欠席したことがない。朝が苦手なので学校には欠席がちな学生だったけれど、集合を撮るときだけは欠かさず出席した。枠に収められるのが恥ずかしくもあった。
しかし、大人になった今、欠席者になって、あの枠に収まってみたいと思うようになった。なんか、面白いじゃないですか。
ただ、枠に収められるのは入学や卒業といったオフィシャルな行事のみだ。これから先、そのような機会はなさそうである。
なので、私は日常的に欠席者になれる装置を作りたいと思った。
重要なのは、どうやって欠席者になるか。まずはじめに、「顔出しパネルにする」方法を思いついた。
しかし、私は生活の中に欠席者を溶け込ませたい。顔出しパネルは生活の中にない。ぐるぐる考えていると、「鏡」という答えが出た。
「欠席者になれる鏡」だ。欠席者のあの枠の部分が鏡になっているのである。
これを作ることで、毎朝の身だしなみを整える時間で簡単に欠席者になることができる。そして、毎日のように欠席者になれるのだ。やったー! ほら、みんなも声に出して喜びましょう。毎日、欠席者になれるぞー! やったー!
ということで、アクリル板と吹きかけたところがミラーになるスプレーを買ってきた。
アクリル板にミラースプレーを吹きかける。マスキングを徐々に狭めることで輪郭がぼけた鏡を作ることができるのだ。
したり顔で手法を説明したけれど、このサイトの編集長である林さんがこの記事で使っていた手法を完全にパクった。パクらせていただきました。
パクったつもりが、技術が足りなくてなぜか輪郭がぼけずに完全なミラーになってしまった。
昨年やっていたドラマ、グランメゾン東京で天才シェフ尾花夏樹(木村拓哉)のレシピがライバル店にリークされたとき、尾花は「真似できるものならしてみろ」と言っていた。私はそのセリフを聞き流してしまっていたが、今さら響いている。そう、やり方を真似したところで技術が必要なのである……。
しかし、私は2日かけて頑張った。今度はちゃんと輪郭をぼやかすことができた。
そして、肝心なのは写真である。フリー素材サイトを探しまくり、素敵な写真をゲットした。それを大判プリントする。
これで完成だ。
欠席者になれる鏡ができた。
デカい。デカすぎるぜ。アトリエの壁がちょうど空いていたからよかったものの、自室にこれを貼るのは無理でした。
なんだか気が引き締まってしまい、自然と前で手を組んでいた。
ただ鏡を見ているだけなのに、入社式に欠席をする新入社員の気持ちになってきたような気もする。
自分で使っている分には「欠席者だ!」という気持ちになるのだが、写真を客観的に見てみると、欠席者というよりかは巨大生物だ。
巨大生物が窓から人間の生活を羨ましそうにのぞいているように見えてしまう。なんとかならないものか。
先ほど作ったものは「デカい」という難点があった。持ち運びができる小さいも鏡を作ることで、より気軽に欠席者になれるのではないか。そして、もっと小さくすることで巨大生物感がなくなるはずだと考えた。
そう思って、100円ショップで持ち運びができる3面鏡を購入した。
先ほどの写真を鏡のサイズに合わせて編集し、プリントした。
鏡の面積が極端に小さくなったが、これでいつでもどこでも欠席者になることができるようになった。やったね。ほら、みんなも声に出して叫ぼう。いつでもどこでも欠席者になれる! やったぜ!
今度は、トリミングを間違った欠席者のいる集合写真になってしまった。
さっきはかっこつけて「もっと小さくすることで巨大生物感がなくなるはずだと考えた」とか書いちゃったけど、全く考えずに作っているのがバレる結果である。
今までは愚直にいろいろなことに出席してきた。しかし、欠席した者にしか知り得ない体験もきっとあるはずなのだ。これからはどんどん欠席していこう。そして、欠席したいのにできなかったときは、この鏡で欠席気分を味わっていきたい。
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