特集 2022年10月5日

軽井沢、京都、鎌倉…“景観規制チェーン店”はみんなちがっておもしろい

観光地でみかける、景観規制に合わせて見慣れぬ姿となったチェーン店。

京都が一番有名だろうけど、軽井沢だって負けてないのだ。

シックな色が妙にかっこいいローソンや、シンプルで湯豆腐のようなツルハドラッグなど、見慣れぬ姿がおもしろい。

 

今回、京都在住ライターまこまこまこっちゃんさんの助けを借りつつ、軽井沢・京都・鎌倉の景観規制チェーン店を見比べてみた。

自治体のルールに合わせて、全部微妙に違うんです。

そして超たいへんそう。

平成元年生まれ。令和から原始まで、古いものと新しいものが好き。

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ハイソでステキな軽井沢はチェーン店までひと味違う

こないだ軽井沢に行ってきた。

お金持ちのためのking of 避暑地というパブリックイメージのある軽井沢だが、庶民が行ってもふつうに楽しかったのである。

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一軒家風レストランで食べるモーニングや、
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森林浴と清流、
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入れないけど雰囲気は味わえる別荘街、
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古い洋館と穏やかな湖面など、

思い描いていた通りのハイソでステキな場所であり、軽井沢は軽井沢らしさにあふれていた。

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警察署までこんな高原リゾートな雰囲気なのだ

軽井沢、いいところだなあとしみじみ思ったのだが、当サイトDPZでは長い歴史の中でほとんど取り上げられてこなかったようだ。

ニッチなものを取り上げることに定評のある当サイトDPZだから、王道な軽井沢は盲点だったのだ。

何だかそれも勿体ない気がする。

DPZ的ブルーオーシャン、軽井沢。

そんな軽井沢で特に気に入ったのはチェーン店だ。

湯豆腐のようなツルハドラッグに戸惑う

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東京でもよく見かけるドラッグストアのツルハドラッグだ

軽井沢も避暑地である前に、人口2万人が住む町である。ロードサイドのチェーン店もそれなりにあるのだが、なんだか様子が違う。

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ツルハドラッグといえばこのキムチチゲみたいな派手さが馴染みの姿だ
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夜になると光るのか…と思いきや光らない。ただ、白いのだ。精進料理である

さすが軽井沢。これはいわゆる景観規制の結果で、派手派手な屋外広告を制限しているのだろうと思った。

上についてる小さな4つの照明も、広々としたロードサイドにはちょっと心もとない。

軽井沢には、こんなチェーン店が沢山あった。

妙にシックな色合いのローソンがかっこいい

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同じ通りにあったローソン。ネイビーの色合いがかっこいい…!

見慣れたコンビニだからこそ新鮮さがある。

筆者は普段紺色の服ばかり着る紺色大好き人間なのだが、この絶妙な色具合はかなりツボだ。

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こちらは一般的なローソン。スカイブルーにピンク、あらためてみるとデフォルトは結構派手な色をしている

景観規制といえば京都のモノトーンのコンビニなんかが有名だけど、軽井沢にも色味のルールがあるのだろう。

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個人的には全部この色でいいんじゃないかと思う

では、他のコンビニはどうだろうか。

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セブンはこの地味~な色合いである

レンガ調の外見もトレードマークなのでぱっと見でわかるけど、車で通ってみつけるのは厳しいかもしれない。

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ポストの方が目立つかも
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と思えば、店舗は地味色なのに看板は見慣れた色のものがあったりしておもしろい。多少落ち着いた色なのかもしれないが…
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これは一般的な東京のセブンイレブン。あらためてみるとバランスのいい配色だ
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ファミマは色合いはもちろん、屋根の勾配が宿場町風である

京町屋風のコンビニみたいな感じで、軽井沢にも伝統建築をイメージした外見の店舗もあるようだ。

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地元の八百屋兼スーパーとハイブリッドされている
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一般的なファミマってこんなにポップなんだなあ

ちなみに、軽井沢のコンビニは条例により夜11時までの営業になっているそうだ。ネオンや点滅照明も禁止されており、ぐっすり眠れる町なのだ。

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他にも沢山ある、行儀のよいチェーン店たち

軽井沢のチェーン店と東京の一般的な店を見比べよう。

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森に住んでそうなクロネコ親子
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ファストフードの王様、マックもお洒落な上に色が薄い。また、屋根にゆるやかな勾配がつけられている
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日焼けして退色したのではなく、こういうデザインなのだ
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勾配屋根といえばアポロステーションも珍しい
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高級リゾートホテル・星のやの向かいのエネオスもこげ茶色だ
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同じ軽井沢でもロードサイドには見慣れた色味のエネオスもある。ただ、一般的なものに比べると白い部分が多い。エリアによって規制が違うのだろうか
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地味of地味なココカラファイン
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みんな大好きカインズは元の色が落ち着いてるので変化なし。ただ、看板の大きさは小さい

他にも様々なチェーン店があった。

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個人的にはド派手なはずのニコニコレンタカーが衝撃だった

わりと同じようなこげ茶色をしている。個人的に軽井沢ブラウンと呼びたい。

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交番、郵便局、つるとんたん、セコムなど、建物自体が軽井沢らしさにあふれるものも多い
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アパートにも片流れ屋根っぽいデザインがされている

これらのチェーン店や建物の姿から、なんとなく軽井沢らしさが見えてこないだろうか。

どんな建物でもちゃんとらしさがあるのは、さすがである。

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景観規制のラスボス、京都はもっとやばい

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平安神宮前のセブンイレブン。ラインがすげー細い(※京都の写真はすべてまこまこまこっちゃんさん撮影)

ここまで軽井沢を見てきたけど、景観規制といえば京都だ。

京都の方はどうなのか興味がわいてきたので、京都在住DPZライターのまこまこまこっちゃんさんにお願いをして、写真を撮ってきてもらった。

そしてたいへん嬉しい偶然だったのだが、まこっちゃんさんはなんと交通広告や屋外広告物を扱う広告代理店に1年勤めていたことがあるそうだ!

写真だけでなく、景観規制と屋外広告の関係性についていろんなヒントをもらった。

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京都のコンビニは軽井沢に比べてなんだか白いぞ。こういうとこにルールの違いがあらわれている

まず、看板や店舗の意匠に対する規制は大きく分けて「景観条例」と「屋外広告物条例」の2つがある場合が多いそうだ。

さらに都道府県や市町村、地域によって基準が違うため、作る側からするとたいへんらしい。

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町並み保存地区であるローソン祇園花見小路店は黒い

これらのルールは市町村のHPで誰でもみることができる(京都市はここ、軽井沢町はここ)。

特に京都市は屋外広告規制のエリアだけで21地区+町並み保存地区があり、それぞれデザイン、色、大きさ、高さなど細かく基準が定められている。超たいへんだ!

一方の軽井沢は4地域なので、京都のやばさがよくわかる。

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ファミリーマート祇園店も格子風の外見と、小さなのれんが京都っぽさをそれとなくアピールしている

提案したデザインは大きさや設置場所・設置方法なども含めて市町村に届け出をして、NGだった場合は作り直しだそうだ。

まこっちゃんさんは奈良勤務だったそうだが、一度設置できた看板でも、厳しい市町村では景観課が定期的に巡回していたり、大きさ・高さが申請通りかどうか実測して確かめたりしているところもあったという。

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マクドナルド東山三条店の場合、窓の中のMマークが一番目立っている。商魂たくましいな~と思ったら、これも「特定屋内広告物」として規制に沿っているらしい

たしかに窓ガラスの中に目立つものをおくこともできるもんな~。

軽井沢にはまだこの特定屋内広告物という規制はないようだ。さすが京都、抜け目ない。

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今回写真を撮ってもらった中でのイチオシは祇園にある佐川急便。景観にあわせた優れたデザインで市長賞をとっている
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凝っているな~

「ロゴや暖簾もこの店舗オリジナルのものを用意しているみたいですごいですよね! コンビニとか飲食に比べると通行人に訴求しなくていい、みたいな自由度もありそうですが、気合いれてる感じはしますよね。」とまこっちゃんさんのコメントをもらった。

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やり取りする中で、先述したセブンイレブンの前にある平安神宮の鳥居、めちゃくちゃデーンと構えているけどもし広告だとすると規制色なんじゃ…という話も出た

堂々とした鳥居と慎ましいセブンイレブン、一度は生で見たい取り合わせだ。

軽井沢、京都、さらに鎌倉…景観規制と自己アピールのはざまで頑張るコンビニの姿が愛おしい

そういえば、鎌倉のコンビニも軽井沢や京都とは微妙に違う見た目をしてる。

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色も面積もちょっと落ち着いたローソン
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明るめブラウンなセブン
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白いセブンもある。フランチャイズによるのか
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シックなグリーンのファミマ

わあ…全国チェーンってたいへんだ。

すべて自治体のルールに合わせて少しずつデザインを変えているのだろう。

全部下限に合わせればラクだろうけど、そこは商売なので少しでも目立つように、規制のギリギリを攻めているのだろう。

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それぞれの規制の特徴をざっくりまとめてみた。特にコンビニの場合は色の彩度が関わってくる

軽井沢は色面積の規制はないが、色の明るさの規制がある。

京都は色面積の規制はあるが、色の明るさの指定はない。

鎌倉はそこまで細かくないが、京都に近い内容だ。

うん、ややこしい。が、この規制の結果が、それぞれのコンビニの姿なのだ。

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暗い色の軽井沢、白の多い京都や鎌倉。規制の違いがあらわれている
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どれが一番視認性がよいのだろうか。コンビニにとっては死活問題だ
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京都でも規制の厳しい地区では、京都らしい外見の代わりに入口部分で精一杯アピールしてる

もちろん同じ地域・同じチェーンでも、店によって微妙に異なる外見をしているものもある。京都らしく凝ったものもあれば、シンプルに白くなっているものもある。

コンビニの場合フランチャイズと直営の違いなど様々あるだろうし、見た目によって売上に影響がでるなら、景観規制も死活問題につながるのだろう。

規制の中でギリギリを狙い、たくましく生き抜くチェーン店の努力が垣間見える。

そんなことを勝手に想像してたら、なんだか愛おしく感じてしまった。


いわゆる景観規制自体は、全国の都道府県市町村、どこにでもあるものだ。

自治体それぞれの取り組みでやっており、国が一律で定める法律はないそうだ。

京都や軽井沢などの特別な街のイメージがある場所でなくても、地域によってさまざまな基準があるのだろう。

住んでる町と隣町では違うのだろうか。

街歩きの楽しみがひとつ増えた。

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軽井沢は駅までかっこよかった

 

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