川沿いのセルフサービスフレンチという物珍しさから訪れてみた「トキオプラージュ・ルナティック」は、想像をはるかに超えた名店でした。
これから様々な季節にこのお店に通えるかと思うと、楽しみでしょうがない。
あ、そうそう、最後にどんなものかよくわからずに頼んだデザート、
もまた、信じられないくらい美味しかったですよ。
二子玉川駅から歩いて10分ほどの多摩川沿いに、食券制でセルフサービス方式のフランス料理屋があるという噂を耳にしました。
フレンチとしては珍しいそういう方式なので、美味しいのにとってもリーズナブルなんだとか。
それに加え、お店の建物自体がまた、すご~く変わっているんだそう。
僕、そういうタイプお店に目がないもので、さっそく行ってみました。
※この記事はデイリーポータルZの運営元であるイッツコムのサービスエリアの魅力を紹介する記事です。
二子玉川といえば、お洒落道を極めし人々が集い、そんな彼らが闊歩する舞台となる先鋭的な街並みが広がり、改札を降りるだけでその空気に圧倒されてしまう街、というイメージ。
が、実は駅前エリアを一歩抜けると、
が広がる、割と牧歌的で、隙のある街だったりもします。
っていうか、デイリーポータルZの編集部があるくらいだし。
今日目指すお店も、多摩川沿いののんびりエリアにあるらしく、
をてくてくと10分ほど歩きます。
すると、上の写真、左前方に謎の建築物が写り込んでるの、わかります?
道をぐるりと回り込み、その前まで行ってみると、
日常の隣に急遽現れる異空間。
僕が「天国酒場」と勝手に呼んでいるタイプのお店が全国にいくつかあるのですが、ここもまさにそれだ。
一見周囲を威圧するような存在感でありながら、どこかいなたい看板が愛おしく、それが二子玉川という街に存在していることが必然にも感じます。
店名は「トキオプラージュ・ルナティック」。
約15年前、現オーナーが「より多くの人に、日常的にフランス料理を食べてもらいたい!」という想いのもとオープン。
そのサービス精神が、料理の値段やセルフサービスというシステムだけに止まらず、お店のシチュエーションや店舗づくりにもふんだんに発揮された結果、この奇跡のような空間が生み出されたというわけ。
メインフロアとなる1階室内の他に、テラス席が1~3階まで。
同じ建物の2階と4階は系列店と思われる「BBQ & カキ小屋 ゲッコ」というお店になっています。
また1階の奥には「フランス雑貨 ジュヌビエーヴ・レチ」というお店もあり、
いかにも掘り出し物が眠っていそうな雰囲気。
さて、ではいよいよ「トキオプラージュ・ルナティック」に入ってみることにしましょう。
看板によると、具体的には、
になっているようです。
入り口を入ってすぐの場所に、
メニューは券売機の横の壁にずらり。
はは、どれもこれも、番号を振られて写真とともに壁に貼り出されるタイプの料理じゃない!
特筆すべきは、平日のランチタイムに50番台のメニューを頼むと、パンとコーヒーor紅茶が付いてくるという事実。
つまり、「ロブスターのロースト」「ブイヤベース」「鮮魚のパン粉焼き」「牛フィレのステーキフォアグラのせ」「仔羊の香草バター焼き」「牛タンの煮込み ビーツソース」の6種類に関しては、すべて1389円、「牛ハラミのステーキ ディアブルソース」にいたっては926円(ともに税抜き)で、しっかりとフレンチのランチを楽しめてしまうというわけですよ!? すごすぎない?
あ~迷う。
強烈に食べてみたいものから、5回目くらいの来店でやっと頼んで「わ、ここのマストメニュー、これだったんだ!」って盛り上がりそうな予感のするものまで、眺めているだけでワインが1本空いてしまいそうなラインナップです。
迷いに迷った末にメニューを決め、まずは時間のかからないドリンクを、食券と引き換えに受け取ります。
ここから優雅なランチ飲みがスタートするわけですが、一体どういうことでしょう、この眺め。
もし僕が突然「ニコタマなう」というコメントともにこの写真をSNSにアップしようものなら、「あいつは二子玉川に魂を売った」と罵られ、友達全員に絶交されてしまうに違いない優雅さです。
この日の自分の能天気な格好とあいまって、どこの国で撮影されたのかまったくわからない写真になってしまいましたが、とにかく幸せなことだけは確か。
で、ですよ。
待つこと数分、ついに注文した「牛フィレのステーキフォアグラのせ」が完成したとのアナウンス。
それをカウンターへ自分で取りにいき、席まで持って帰ってきたわけですが、
もはや要素が多すぎて頭がクラクラしてきましたが、どこからどう見ても超~本格的なフレンチの一品が、目の前に存在しています。
せっかくの機会だからと思い切って追加してみたトッピング用のキャビア。
よく考えると、こんなふうに正面から向き合ったことがなかったなと、ほんの少しだけそのまま味見してみると、濃厚でクセのない魚卵、といった感想でした。
これが、固そうな見た目に反し、あったかくてふかふかで超~美味しい!
ご威光がすごいこの肉塊を
いや~……ははは、言葉がありません。
これが本当、リーズナブルなぶんそれなりの味、とかじゃあぜんぜんないんですよ。
肉は赤身なのにふわりと嚙み切れる柔らかさで、旨味たっぷり。
そこにとろける濃厚さのフォアグラと、信じがたき美味しさのソースが絡まる。
正直、その組み合わせの時点で最高すぎてキャビアの存在感まではよくわからなかったんですが、とにかく自分が普段食べているものとは次元の違う美味しさ!
この店がもしこんな素敵なシチュエーションではなく、単なる地下の密室で、料理の値段が倍だったとしても、喜んで通ってしまいますよ、このクオリティ。
ありがとう……。
ところで、このお店を取材したいと編集部に提案したときに聞いたのですが、実はこちら、ウェブマスターの林さんも好きで、よく通っているんだそう。
なんというか、さすがですね。
その林さんによると「『あさりのワイン蒸し』の汁が、水筒に入れて持って帰りたいくらいうまい」とのこと。
今日は取材ですからね、もちろんいただきましょう。
と、うっかり頼んだ「黒生ビール」(538円)
ただワインで蒸しただけじゃこうはならないと思うので、バターをたっぷりと使って、その他僕の想像のつかないような何かも加えて仕上げてあるのでしょう。
とろりと濃厚な貝の旨味汁が、ぷりぷりのアサリに絡みまくり、確かに衝撃的な美味しさ!
で、またパンが付いてきたので、
うまい、うますぎるよ。
パンでぬぐいきれなかったぶんの汁、水筒に入れて持って帰りたい!
単にどうしても食べてみたかった一品。
生ウニに加え、ここにもキャビアが乗ってます。
「ウニみ」が飽和状態のムースをパンに絡めて食べると、もうどうにでもしてくれ! という気分になってくる、官能的な美味。
ていうかそろそろ贅沢のしすぎで罰が当たるんじゃないかって気分になってきました……。
トキオプラージュ・ルナティックの入り組んだ店内は、見所が満載。
ここからはお店の方のご好意で撮影させてもらった、各フロアの様子をご紹介します。
こんなところでフレンチ食べたらもう、失神しちゃうんじゃないかしら。
どうやら団体でバーベキューをした形跡がありますね。
うらやましいな……。
川沿いのセルフサービスフレンチという物珍しさから訪れてみた「トキオプラージュ・ルナティック」は、想像をはるかに超えた名店でした。
これから様々な季節にこのお店に通えるかと思うと、楽しみでしょうがない。
あ、そうそう、最後にどんなものかよくわからずに頼んだデザート、
もまた、信じられないくらい美味しかったですよ。
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