特集 2021年2月8日

型抜きをズルせずマスターした!

型抜き、それは、板に描かれた溝にそってうまく形を切り出す遊びである。縁日で昔挑戦した人も多いのではないかと思う。私もその一人だが、残念ながらいままでで一度も成功したことがない。そんな中、不幸にも居酒屋で型抜きと再会してしまった私は、再び闘志を燃やすのであった。

編集部より:
この記事は全5回の連載企画「型抜きをズルせずマスターしたい!」をまとめたものです。より詳しく読みたい方は
連載1回目のこちらからぜひご覧ください!

1992年三重生まれ、会社員。ゆるくまじめに過ごしています。ものすごく暇なときにへんな曲とへんなゲームを作ります。

前の記事:型抜きをズルせずマスターしたい!~悟りの境地~

> 個人サイト ほりげー

悪夢の始まりは居酒屋だった

型抜きという遊びがある。板に描かれた型の溝にそって画びょうを用いてうまく形を切り出す遊びだ。途中で型が割れてしまうとゲームオーバー。子供でも遊べるが、楽しそうに見えて非常に緊張感のある遊びだ。

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こういうやつです。

何で急に型抜きについて語りだしたかというと、先日、居酒屋で型抜きに再会してしまったからである。

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居酒屋にて突然の再会を果たした。生きとったんかワレ。成功すると食事代の割引などがあるようだ。(新型コロナウイルスに十分配慮した居酒屋に行きました。)

型抜きとの突然の再会によみがえる、ほり少年の思い出。そういえば学校の文化祭や祭りの縁日で型抜きに挑戦したことはあれど、成功したことは一度もない。ここは大人になったいま、リベンジしておく必要があるのではないか。型抜き一つクリアできない大人が今後えらそうなことを言っても何一つ説得力がない。

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100円で1回挑戦できる。勝負は一度きり。
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やります。
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かなり順調。子供の時より確実に成長している。
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あっ。

型抜きの緊張感は失敗を経験したことがある人にしかわからない。急に終わるのこれ。本当に。さっきまで全然そんな感じじゃなかったのに急に!突然すぎて悔しさが来る前にあっけにとられる。

この感じ久しぶりだ。だんだん悔しくなってきた。あまりに悔しがっていたら店員さんに「これ難しいですよね~。」と言われた。店員さんの情報によると

  • 毎日多くの人が挑戦しているが2週に1回ぐらいしか成功者が出ない
  • この前、3回連続で成功した人がいた

とのことだ。3回連続で成功した人がいたってことは、運ゲーではなくて実力なのだ。あぁこうなってくると極めたい。絶対にクリアしたい。

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型抜きをマスターしたい

居酒屋の型抜きに挑戦し失敗した私は、型抜きをマスターすることを決意した。そのために、Amazonで200枚の型抜きを購入したのであった。

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200枚の型抜き。

左側が「易しいタイプ」で右側が「難しいタイプ」。価格は1枚あたり約9円である。居酒屋で挑戦したときは1枚100円だったので約1/10の値段だ。その代わり成功しても何の景品もない。

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1枚ずつ取り出してみた。易しいタイプでさえクビレがあってそんなに易しく思えない。しかし右の難しいタイプを見て納得。これはさすがに無理でしょ。

いよいよここから修行が始まる。

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今まで通りノーマルに攻める

当分は「易しいタイプ」の手前から順番に練習しようと思う。200枚のうち記念すべき最初の一枚はこちら。

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これは……。けん玉?型抜きって絶妙に分かりにくい形をしていることがある。

まずは今まで通りノーマルに攻める。まずは安全そうな下から慎重に。

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えっ……。

いつ死ぬかわからないので頻繁に途中経過を撮影しようと思っていたのだが、2刺し目でズバッと割れた。右下に針を刺しただけなのに右側の溝が全部割れてくびれ部分が割れた。むずい。

まずい。居酒屋でやったときよりも圧倒的に下手だ。1回100円と1回9円では心理的な重みが違うのかもしれない。確かに、居酒屋でやったときほどの緊張感がなかった。これはメンタルのスポーツだ。

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教訓を生かそう

そういえば、「型抜き」については当サイトで過去に乙幡さんが挑戦している。当時はルーターと呼ばれる工具を使ってズルをして攻略しようとしているので、今回はズルなしで成功することを目標にしている。しかし、驚くべきことに当時乙幡さんは工具を使うというズルをしたにも関わらず、一度も成功せずに終わっている

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型抜きに一度も成功することなくふて寝する当時の乙幡さん。

乙幡さんが挑戦していた型抜きはどうやら「難しいタイプ」のようだが、それにしてもこれは大変なことである。手芸を得意とする乙幡さんと比べ私ははるかに不器用なうえに、ズルをせず正攻法で挑もうとしている。冷静に考えて、私が型抜きに成功するはずがないのである。

こうなったら質と量で挑むしかない。とくに質だ。型抜き一枚一枚、常に成長の糧としたい。そこで、記録を付けることにした。

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「どの一枚も無駄にしない。」そんな思いからすべての試行をエクセルに記録することにした。

青色は意図通りに割れた箇所、赤色は意図せず割れた箇所である。コメントには敗因と教訓を含めることにした。

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余白を外側から削って行く作戦。

ここからはいろいろな作戦を試す。まずは「余白を外側から削って行く作戦」である。

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続いてはこいつ。居酒屋で遭遇したものと同じだ。

全ては居酒屋でこのシャンプーボトルに敗戦したのが事の発端だった。対戦よろしくお願いします。

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途中経過。いきなり溝を掘るのではなく、外側からじわじわ攻めているのが分かりますでしょうか?

直感だが、「余白を外側から削って行く作戦」はかなり有効だと感じた。かなり制御が効く気がする。

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あっ……。

しかし結局、失敗してしまった。その理由が悲しい。型の上にたまった粉を手で払ったときに負荷がかかってしまったのだ。このような惨劇を二度と繰り返さないため、今後、粉がたまった際は息を吹きかけることにした。

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このシャンプーボトルはフーフーメソッド(息を吹きかけることで粉を取り除く方法)発案のための尊い犠牲となったのだ。
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インターネットの力を借ります。

いっこうに成功する気配がない。探偵ナイトスクープなら探偵が匙を投げて専門家が登場するタイミングだ。しかし探偵ナイトスクープではないのでここはインターネットの力を借りる。

多くの攻略サイトが見つかったが、特に、「これだけ知っていれば戦える!型抜き攻略法」という記事の「指で割る」という方法に注目。大まかな部分は指で割って余白を取り除く。

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飛行機の右下の部分、画びょうを使わず指で行けた。

指で割る作戦は、使いどころによってはかなり有効だ。画びょうほどの精度は出ないが、大幅な時間の短縮になる。そうすると、後半まで集中力を持続させることができるのでかなり強い。なぜなら型抜きはメンタルのスポーツなのだから……。

いいぞ!インターネットの力!

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どうして……。
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悲しみのあまり折れた部分の幅をノギスで測定するなどした。6.34mmと表示された。
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茶色は指で割った箇所。凹みをどう攻めるかという新たな課題に直面。手前から少しずつ削って行ったほうが良さそうだ。

敗因は凹みの対処方法である。何となく浮かんだ解決策と合わせて図で説明させてください。

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型側が凹んでいるような箇所は、凹みの手前側(余白側)から少しずつ削って行くとよい。

今までは凹みの奥側の溝に画びょうを刺していたが、「余白を外側から削る」はどうやら正しいようなので手前側から削って行ったほうが良さそうだ。しかしまだ現時点では仮説にすぎない。

濡らすのはズルじゃないことにします。

引き続き、インターネットで得た知見を試してみる。続いて注目するのは、「濡らす」という技だ。こちらの記事に載っていた。

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おさかな。

明らかな余白を指で取り除いたのち、ウェットティッシュで濡らします。

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ウェットティッシュのおふとんに入るおさかな。

こうすることで、型が湿り、制御が効きやすくなる。これはズルなのか微妙なところだが、今回はあくまでも「居酒屋で型抜きに成功する」を最終目標としているため、濡らすのはアリとさせていただきたい。居酒屋にはおしぼりがあるので、それを使って濡らすのは不自然な行為ではない。(屋台で型抜きをやる場合は濡らすのNGの店もあるそうなので、各自ルールに従ってください。)

これまでのノウハウを総動員する。余白を削り、凹みは手前から削る。そして何よりも気持ちが大事。落ち着いて……。

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うおおおおお!(魚だけに)

突然の成功だった。人生初の型抜き成功だ。やった~。

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忘れないうちに攻略方法を書き留める。削る順番も大事な気がしたので順番も書いた。

ついに初めての成功である。まだ「型抜きマスター」には程遠い。ポケモンでいえば最初のポケモンをゲットした段階である。しかし、やるたびにノウハウが蓄積されていく。学習初期特有の急な成長だ。

修行の終わりを定める。

突然だが、修行の終わりを定めることにした。「易しいタイプ」に入っている13種類の型をすべて成功したら修行終わりとしよう。現実的だが容易ではない、ちょうどいい目標だ。

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「難しいタイプをクリアせずに型抜きマスターを名乗っていいのか?」という声が聞こえてきそうですが、見てくださいこれ。難しいタイプは非人道的だ。これをクリアしたら型抜きマスターじゃなくて型抜きドクターだと思います。

というわけで当面の目標は「易しいタイプ」13種類のコンプリートである。現在成功したのは1種類。残り12種類の成功を目指します。

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こま失敗。かかし失敗。

しかし、あせると人は失敗する。何度も言うが、型抜きはメンタルのスポーツなのだ。おさかな一枚成功しただけで内心舞い上がっている自分がいる。しかも研究の余地はまだたくさんある。

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攻める順番や手で割る部分の見極めなど、課題は山積みである。

左右対称を保ちながら。

攻める順番だが、できるだけ左右対称を保ちながら攻めるといい気がしてきた。 そのほうがくびれ部分にかかる負荷が左右で均一になり、くびれで割れるのを防げると思う。

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左右対称を意識したらひょうたんは一発で成功。やった~!
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できるだけ左右対称を保つように、右と左を交互に行ったり来たり。手数は16に及んだ。

これで 2/13コンプリート。いいぞいいぞ。

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帆掛け船成功。これで3/13。

試したのは、くびれ付近の左右の三角形の凹みをあえて最初に攻略するというもの。今までくびれ付近は最後に攻略していたが、最後の最後で失敗していた。これは私の考えた「もろさ後半上昇理論に基づくものだ。後半はもろくなりやすい。図で説明するとこうなる。

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型本体に負荷が蓄積する後半はもろさの上昇率が大きくなる(例えば1.5倍になる)という仮説。そのため、ただでさえもろくなりやすいくびれ付近の切削を、もろさ上昇1.5倍ゾーン内で行うと、もろさポイントが一気に上昇して割れてしまう。

材料工学に全く触れたことのない素人が提唱していることなので冗談半分で聞いてほしいが、この「もろさ後半上昇理論が正しいのならば、序盤にくびれ付近を対処したほうがよさそうだ。事実、それで帆掛け船を攻略することができた。

でも序盤にくびれ付近を切削してしまうとその後くびれが細いままずっとさらされてしまうので、一長一短か。

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シャンプーボトル成功。これで4/13。

シャンプーボトルのコツは、「ちょい残し」。左側の画像からわかるように、3か所のちょい残しをしている。特に左下の小さい三角形を残すのがポイントだ。これによって割れやすい箇所をギリギリまで補強しながら作業を進められる。

ちなみに最後の細かい作業は画びょうの角度を90度に近づけると良さそうだ。力のかかる領域が狭くなり、細かい作業ができる。

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けん玉とハンマーも成功。これで6/13。

けん玉とハンマーはこれまでのノウハウを使えばいけた。特に、「できるだけ左右対称に」が大事だ。

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こまも成功。7/13。折り返しだ。

こまに至っては今までのノウハウを全部無視したやり方で成功した。コマの軸の部分は鈍角なので、パキっと気持ちよく一気に削り取ることができる。成功率をあげるためには、あらかじめ溝をなぞって掘りを深くしておくとよい。

また、「どこを指で押さえるべきか問題」もこのあたりで浮上し、砕こうとしている余白を押さえるとうまくいくことが分かった。こまの画像で言うと、左下の余白を砕くときは、左下の余白そのものを指で押さえながら砕く。画びょうのそばを押さえるので若干窮屈ではあるが、型本体に余計な負荷がかからず成功率が高い。

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パフェ(閉じた傘のような気もしています。)成功。8/13。

パフェ。最も簡単な左上をあえて最後まで残すことで、難関な右上を削る際の強度を保ち、成功へと導いた。ここでも「もろさ後半上昇理論を利用している。

というわけで、13種類中8種類成功だ。

残るは5種類。

いよいよ残りは5種類。かかし、ひこうき、うさぎ、かさ、チューリップ。ただし、これまでの修行で頻繁に記録を取っていたこともあり、ノウハウがかなり蓄積されてきている。

型抜きノウハウ(ここまで得られたもの) 

  • 「溝を掘る」のではなく、「余白を削る」
  • 特に凹みは手前から少しずつ削る
  • 粉を手で払うな。フーフーメソッド。
  • 最初は大まかな余白を指で割ると時短になる
  • ウェットティッシュで濡らすと制御しやすい
  • 広く砕きたいときは画びょうを斜めにする
  • 細かく砕きたいときは画びょうを90度に立てる
  • 左右対称を保ちながら少しずつ余白を砕く
  • くびれ付近の凹みをあえて最初に攻略する(「もろさ後半上昇理論」)
  • もろい箇所は「ちょい残し」で補強する
  • あらかじめ溝をなぞって深くしておく
  • 指で押さえる場所は砕こうとしている余白の部分
  • とにかく気持ち。型抜きはメンタルのスポーツ。

 

かかし。首が鬼門。

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かかし。明らかな難所が首元にある。

 まずは首回り以外を処理する。これは前回説明した「もろさ後半上昇理論」とは逆行するが、首があまりにも細いため、先に首周りを対処してしまうと後半他の箇所を削っているときに割れてしまう。

その後、首の左右の溝を何度もなぞることで深くすると……。 

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やった~!かかし、クリア。

コツは、首回りをなぞって溝を深くすること。型抜きノウハウには「『溝を掘る』のではなく、『余白を削る』」と書いたが、これだけ細いと溝を掘る方が有効のようだ。

これであとは4種類。しかし、箱に入っていたこれらの型はすべて使い切ってしまったので、再度購入した。

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Amazonで「易しいタイプ」の2箱目を購入。今月の型抜きの売り上げが上昇しているとしたら、原因は私だ。

水はどれほど有効か?ひこうき。

以前、おさかなは水でウェットティッシュで濡らすことで成功した。しかし、水で濡らすのは諸刃の剣。濡らすと柔らかくなるので削りやすくなるが、その分、型本体も割れやすくなってしまう。そのため、最近は濡らさずにやっていたのであった。

しかし、ここでとんでもない作戦を思いつく。

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ひこうき型に紙を切って乗せ、霧吹きでシュッ。

こうすることで、紙の乗っていない部分だけ水がかかり、柔らかくなる。ズルいかズルくないかでいうと、いよいよズルい気がする。居酒屋に霧吹きはない。もういい、ズルでもいいから成功させてください。(長くなるのでカットしましたが実はすでに何度もひこうきで失敗していて心が折れかけているのです。)

霧吹き作戦でひこうきに挑む。

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出来た!!!出来たよ母さん!!!!

霧吹き作戦大成功!やっぱりちょっとズルいぞ。しかも紙を切るのが割と面倒だ。

うさぎは耳元が難しすぎる。

うさぎの難所は耳元である。鋭角に入り込んでおり、どうしても耳元で割れてしまう。これまで何度も苦しめられてきた。

ちなみにここからはカッティングマットの上で作業をしている。木製のテーブルの上で型抜きをすると針の穴が無数にできてしまうので。

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このままだと型抜きだけでなく夫婦仲にもヒビ割れの可能性が。

うちはもう手遅れですが、他の人は最初からカッティングマットの使用を強く推奨する。

さて、うさぎ。

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いちばんセンシティブな耳元はちょい残しで、先に右側の口元を攻略しよう。
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やった~!ついにうさぎを攻略したぞ!!!

というわけでうさぎもクリア。型抜きノウハウの「もろい箇所は『ちょい残し』で補強する」がうまくいった。

かさで悟りを開いた。

いよいよ残すところあと2種類だ。かさとチューリップ。そして、うさぎをクリアした後、2箱目に入っていたかさとチューリップは全部失敗したので、3箱目に突入している。

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3箱目。チューリップは8枚、かさも8枚。

型ガチャ成功。どちらも8枚入っていた。じつは、型の枚数はけっこうバラツキがある。いつからか、箱を開封して目当ての型を探すことを型ガチャと呼ぶようになっていた。

さて、かさといえばひらがなの「し」のような柄の部分。ここが細いので毎回折れてしまう。そして私の心も折れる。

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油断していると全然関係ないところが割れることもある。これまでにもう20枚近く失敗しているんじゃないか。

「引退」の2文字が脳裏をよぎる。

何度も何度も失敗しているうちに、「次こそは絶対成功させてやるぞ」という気持ちが次第に薄れていっている自分に気づく。というか、おこがましくないだろうか?「成功させてやる」って。ここで、はっとした。

型を抜いてやるんじゃない。型を抜かせていただいているんだ。

そうだ。私に欠けていたのは謙虚さだ。「型抜きはメンタルのスポーツ」とあれだけ言っておきながら、全然メンタルをコントロールできていなかったのではないか。失敗するたびに悔しいという気持ちがあったし、何とかすれば必ず成功できると思っていた。

しかし、型抜きをコントロールできると思っていること自体が傲慢なのだ。 型の一枚一枚に個体差があり、割れ方も違う。コントロールできるわけがない。型抜き、それは他力本願の世界。型抜きの前に人間は皆無力なのだ。

とはいっても、型抜きマスターを目指す私はどうすればよいのだろうか。もう答えは出ている。一枚一枚、丁寧に型を抜かせていただく、ただそれだけだ。次の一枚では失敗するかもしれないが、いつかは成功するはずだ。あくまでも型抜きとの向き合い方が大事なのであって、結果はただの副産物である。

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かさの余白を削らせていただいております。
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かさを抜かせていただきました。ありがとうございます。ありがとうございます。

謎に宗教っぽさを出していたら普通にかさが成功した。やった~。

最後はチューリップ。

これで13種類中12種類成功。あとはチューリップのみ。ちなみに3箱目のチューリップは全滅したので4箱目になります。謙虚さとは。

ただ、本当にチューリップは難しい。13種類で一番難しいのではないだろうか。花の形も細い茎もすべてがやっかいだ。

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4箱目。型ガチャではチューリップ8個。いいぞ。

ここである決断をした。この8枚でチューリップを成功できなかったら、あきらめよう。キリがない。

成功したら型抜きマスターの修行を終え、居酒屋でのリベンジマッチにのぞむ。失敗したら居酒屋にも行かず、ここで終わり。

残機は8枚。この8枚でダメなら私は型抜きマスターになれない。緊張感がある。 

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まずは鈍角な部分の余白を削った。ここまではいける。(ただし油断するとこの段階で失敗することもあるので注意。)

ちなみに、右上の画像は残機表示である。いまは1枚目に挑戦していて、まだ残り7枚が控えているので残機7となっている。緊張感を持たせる演出だ。 

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ここでとっておきの作戦。裏返して溝をなぞる。これも読者コメントでいただいていたもの。使いどころがわからなかったが、今だと思う。
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気持ちを高めるため、バンド チューリップの「心の旅」を聞きながら溝をなぞる。余白を削るのではなく、溝をなぞり続けると、いつか取れるはずだ。

心の旅のBPMはちょうどいい。一拍ごとに溝の一部を針で一往復する。心の旅をリピートして5周目に差し掛かったその時……!

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できた~~~~~~~!!!!!!!!!!!

こうして、私は13種類すべての型を(ズルせず?)成功させたのであった。型抜きマスターといってもよい。

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いつまでも見ていたい写真。

長い長い戦いが終わった。これまで、何度失敗して、破片を食べたことか。(型抜きは食べられます。) 疲れたなぁ。

そういえば、型抜きを食べる話について補足すると、失敗しても破片は食べない方がいいです。普通に美味しいので。どういうことかというと、「失敗する→食べる→美味しい→快感」という報酬系が脳に出来上がってしまい、無意識のうちに「失敗しても美味しいからいいや」と思うようになり、型抜きに集中できないのである。

型抜きノウハウの蓄積がすごい。

こんなにも一つのことに向き合ったのはいつぶりだろうか。忘れないうちに、型ごとの攻略法と、型抜きノウハウを整理しておく。

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これが型抜き修行の成果である。

こうしてみると、誰でも簡単にできそうな気がしてくる。でも現実は甘くないです。

ノウハウも更新しておく。

型抜きノウハウ (太字は更新箇所)

  • 基本は余白を削る。
  • 特に凹みは手前から少しずつ削る
  • 最初は大まかな余白を指で割ると時短になる
  • 広く砕きたいときは画びょうを斜めにする
  • 細かく砕きたいときは画びょうを90度に立てる
  • ウェットティッシュで濡らすと制御しやすい
  • 粉を手で払うな。フーフーメソッド。
  • 指で押さえる場所は砕こうとしている余白の部分
  • 左右対称を保ちながら少しずつ余白を砕く
  • くびれ付近の凹みをあえて最初に攻略する(「もろさ後半上昇理論」)
  • 慎重さが求められる場面では、溝をなぞる
  • 裏側から溝をなぞるのも有効
  • もろい箇所は「ちょい残し」で補強する
  • とにかく気持ち。型抜きはメンタルのスポーツ。
  • 「型を抜いてやる」ではなく、「型を抜かせていただいている」という謙虚な気持ち

居酒屋でリベンジした。

最後に、居酒屋でのリベンジマッチ。勝負は一発。さあどうなる。(新型コロナウイルスに十分配慮した居酒屋に行きました。)

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居酒屋の型抜きは包み紙に包まれている。
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え、これは……鳥?

知らない型が出てきた。せっかく13種類の型をコンプリートし、型ごとの攻略法までまとめたのに意味がない。

実は、ハシモトの公式サイトのカタヌキの型一覧には、「紙に包んだ業務用カタヌキの型は非公開です」と書かれており、嫌な予感はしていた。やはり、業務用の型には13種類以外の型もあるようだ。

いきなりプロの洗礼を受けたが、でも大丈夫。ここまでのノウハウをもってすれば必ず成功できるはず。作戦通り居酒屋のおしぼりで型の周りを湿らせてから始める。

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まずは外側からじわじわと。ここまで来ればあとは3か所をくりぬくだけ。溝を何度もなぞって取れやすくする作戦で行く。
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あっ。

負けました。リベンジマッチ、敗退です。型抜きはそんなに甘くない。いいわけをすると、

  • 知らない型だった
  • 練習用の型よりも硬い素材な気がした。制御しづらかった
  • 居酒屋の照明がダウンライトで、自分の手の影がじゃまだった

と愚痴は止まりませんが、負けは負けです。対戦ありがとうございました。


型抜き道は奥が深い

こんなに練習しても、まだ居酒屋で勝てなかった。型抜き道は奥が深い。すでに多くの学びを得たが、まだまだ道半ばなのだろう。連載はこれで終わりですが引き続き型抜きを極めようと思います。ありがとうございました。

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型抜きを極めたら難しいタイプのひょうたんもクリアできるのか?
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